序文
鍼灸は我が国の貴重な文化遺産であり、それは中華民族の数千年に及ぶ疾病との戦いをまとめたものであり、祖国伝統医学宝庫の一粒のダイヤモンドである。頭穴療法(様々な頭鍼を含む)はこの伝統医学を源泉とし、進化発展して新しい学科の特徴を備えた治療法となった。特にこの数十年来、神経科、内科、鼻耳咽喉眼科、婦人科および伝染病などの方面で優れた効果を上げている。鍼麻酔でも成功している。加えて経済的、簡便、安全、おこないやすい特長があり、国内で普及して広まっただけでなく、国際医学の領域でも高く信頼され、歓迎されている。
頭穴療法の医術は、診察治療のなかで絶えず進歩し、改善されていった。しかしその理論や使用される辨証、選穴、刺鍼法、操作法及び道具が違うため、多くの技術と学術を特色とする流派が出来上がり、それが鍼灸医学の広まりと高揚、および未来の展望に新しい風采を加えることになった。
本書は百花斉放、百家騒鳴を原則として、異なった学術観点に態度を保留し、臨床で検証されたり研究されるきっかけとなりたい。それぞれの学術流派の間で、学術論争し、高め合い、長所を取って短所を補い、最終的に統合することが必要である。
本書は著者の長年にわたる臨床と研究及び教育を通して、頭穴に関する中西医の基礎知識を全面的に紹介し、いろいろな頭穴(頭鍼)療法の内容と最近の治療、そして基礎研究の状況を解説し、また現在の頭穴(頭鍼を含む)内容が多い著作であり、鍼灸臨床、研究および教育のよき参考資料となるように作った。しかし我々のレベルにも限りがあり、経験不足のため、誤りや欠点が生まれる恐れがあり、読者のご批判をあおぎたい。
著者

序論

頭穴療法(いろいろな頭鍼を含む)は鍼法、灸法およびその他の物理的方法を使って、脳(大脳、小脳、脳幹を含む)の体表および近隣の経穴(あるいは刺激区)を刺激し、いろいろな疾患を治療する方法の一つである。こうした方法は古来からあったが、この数十年で非常に速く発達した。それは微鍼系統の一つである。
頭部の経穴で、いろいろな疾患を治療できるが、『内経』でも『素問・骨空論』に「頭痛、身重、悪寒は風府で治療する」、『霊枢・五乱』篇には「頭の気が乱れると厥逆し、頭が重くなって目まいがして倒れそうになり・・・天柱を取る」などの記載がある。晋朝の『鍼灸甲乙経』には頭部の経穴を使った疾病治療がさらに多く記載され、ほぼ五十余りとなり、身体の経穴を組み合わせたものになるとさらに多くなる。治療範囲も広がって、「青盲、遠くが見えにくい者は承光が主治する」、「喉が腫れて喋れないものは天柱が主治する」、「上歯が虫歯で、腫れたら目窓が主治する」、「耳鳴りは百会・・・主治する」、「はっきり見えない、目が赤く痛むものは天柱が主治する」など顔と五官の疾患も治療できる。さらに「身体の硬直、背骨の引きつり、反折、ヒキツケ、癲癇、頭重は五処が主治する」、「癲癇、羸痩は脳空が主治する」と精神、神経系統の疾患も治療し、「頭痛身熱、鼻詰まり、喘息の呼吸困難、落ち着かなく汗が出るものは曲差が主治する」、「寒熱骨病は玉枕が主治する」、「小便が橙色なら完骨が主治する」など、全身性の疾患も治療する。また「足の知覚麻痺は風府を刺す」、「癰疽は竅陰が主治する」などと肢体及び外科の治療もできる。後世では各家の記載がさらに増え、『銅人?穴』には、曲差は「心中の煩満」、承光は「嘔吐心煩」を治療すると記載されている。『席弘賦』は「風府、風池を尋ねれば、傷寒百病は一時にして消える」とある。『鍼灸大成』には「風の鍼風は、まず風府、百会」などなど、頭部の経穴で全身の各種疾患を治療できることを表している。しかし時代が推移しても歴史的制約のため、20世紀の60年代に至るまで頭部の経穴に大きな進展がなかった。この百年間に出版された本には、頭部の経穴だけを使って疾病を治療した記載は少ない。1927年に創刊された『鍼灸雑誌』もおなじで、百会、風府、神庭、上星、風池、率谷など頭部の経穴と、体幹の経穴を組み合わせて治療した報告はあっても、頭部の経穴だけを使って治療した症例は稀である。1958年の『上海鍼灸雑誌』に日本の代田文誌先生が、百会と前頂に刺鍼して、督脈と任脈上の足底部の痛みを治療した観察を発表されたが、頭部の経穴を重視して応用しているものの、大きな進展を促すことにはならなかった。さまざまな鍼灸書籍や中医学院の教材、また各地の雑誌でも頭部の経穴を使った治療例は、やはり極めて少なかった。
1971年、山西省の『頭鍼療法』が世に問われ、5年経たないうちに全国20余りの省市で、その応用が推し進められた。その適応症は絶えず広げられ、神経科、内科、眼科、婦人科及び伝染病の分野で比較的優れた効果があり、さらに鍼麻酔にも応用され始めた。はっきりした統計ではないが、有効率は69〜97%であり、臨床治癒した者は24〜30%に達する。1989年までの十数年間に、世界の医学界の注目を集め、それで治療できる病気は50種余り、発表された論文は400余りとなり、研究範囲とレベルは大きく飛躍した。これと前後して方氏の頭皮鍼と朱氏の顱鍼も相次いで世に問われ、それによれば全身性の各種疾患が治療できる。
頭穴療法は現在、二つに分かれている。一つは大脳と神経系統の生理と解剖を理論的基礎とし、頭部の「刺激区」や「穴区」、「穴位」に治療点を求め、疾病を治療するものである。
例えば焦氏の「頭鍼」は大脳皮質の働きと、それと対応する部分の頭皮とは関係があるとし、その対応する頭皮上に刺鍼すれば、その直下にある大脳皮質の機能を調整することができると考えているので、刺鍼部位は大脳の機能が投影される部分によって定められ、命名されている。例えば中心前回に相当する部分の頭皮は運動区と呼ばれ、運動の機能障害を主治し、中心後回に相当する部分の頭皮は感覚区と呼ばれ、知覚障害を主治するというように、全部で16ケ所の刺激区がある。
方氏の「頭皮鍼」は大脳の生理や解剖に基づいて、頭部を7つの穴区と21の穴位に分けた。7つの穴区とは、一つの伏象(総運動中枢)、二つの伏臓(総知覚中枢)、二つの倒象(運動中枢)と二つの倒臓(知覚中枢)である。伏象は、前頭骨、頭頂骨、後頭骨の境界線に沿う部分とその両側に、全身の各部と対応するたくさんの刺激点が規則正しく分布している。この刺激点をつなぎ合わせると、一個の人体の縮図が冠状縫合、矢状縫合、人字縫合の上に出現する。伏臓穴区は、前額の両側に、内から外を向いた半身の人体内臓と、皮膚の縮図が現れる。倒象と倒臓は、中心前回と中心後回の位置にある。21個の穴位は皮質中枢の頭皮部分にあり、中枢の働きによって思維、記憶、説話、書写、運平、信号、聴覚、嗅覚、視覚、平衡、呼循などと命名されている。
朱氏の「顱鍼」は、頭部には全身が投影されており、それは矢状縫合が中心であると考えた。しかし「頭皮鍼」の「伏象」とは逆に、その人体投影図は、頭を後ろに、お尻を前に、顔を後ろに向け、手足の位置も全く逆で、上肢を人字縫合の上に伏せ、下肢を矢状縫合から左右に投げ出し、冠状縫合の上にうつ伏にしたようである。矢状縫合と人字縫合の間を三等分し、後ろ1/3を上焦、中1/3を中焦、前1/3を下焦とした。また臓腑は経絡とつながっているので、全身の臓腑、経絡、陰陽、表裏と対応する部分に刺鍼すれば、治らぬ病はないと考えている。
以上は全て大脳の生理や解剖に基づき、相応する頭皮を刺激して皮質機能を調整するものである。対応した頭皮への刺激は、どのようなプロセスを経て皮質に作用を及ぼすのか?現代の解剖生理の知識では説明できない。また臨床治療の過程で、例えば中心前回の後部の頭皮(感覚区または倒臓)は、知覚障害を治療できるだけでなく、運動障害、血圧の調整、失語症などの治療ができ、血流変化と脳血流に影響を与え、対側の肢体を治療するだけでなく、同側の肢体にも治療作用があるといったように、一つの刺激区でいろんな作用があることが判った。そのため伝統的な経穴を使って治療する方法から、刺激区を使って治療する方法に切り替えてしまった人もいる。1973年、安氏などは運動区を百陽区(百会から太陽への透刺)や、感覚区を後頂区と呼び始め、また運動区の上1/5を百会穴、中2/5を正営穴、下2/5を頭維穴などと改めた。
1974年、我々は古人の記載に基づいて「脳血管病後の半身不随の頭部透穴治療」という論点を掲げ、特に1973年からは前頂から健側の懸顱への透刺と、百会から健側の曲鬢へ透刺をおこない、脳血管障害によって半身不随になった自分の頭に刺鍼して効果を確かめた。それと同時に100例の患者を治療して系統的に観察した結果、頭部の経穴を使ったこの病気に対する有効率が95%に達した。その後に系統的な研究をおこなった結果、十四経脈は全て頭部に達しているため、十四経脈の経穴を使って十四経および五臓六腑の疾患を治療することができ、また透経(経脈と経脈を透刺する)、透穴(穴位と穴位を透刺する)、一穴多経(一穴で多くの経脈をつなぐ透刺)、一穴帯多穴(一穴から多くの穴位に透刺する)の方法を使い、対側の疾患を治療するだけでなく、同側の疾患も治療でき、理想的な効果を上げることができるという結論に達した。
1979年、中医研究院の鍼灸研究所神経科生理二室で、健側の百会、正営、懸顱に刺鍼して半身不随の患者を治療し、満足できる効果が得られ、また頭部の経穴に刺鍼すると患者の脳血管を拡張させ、血管壁外周の抵抗力を減少させて血流量が増加することを発見した。
1980年、張氏は「伏選区」を使って16種類の疾病に及ぶ106例の患者を治療したところ、有効率は96%以上に達し、運動区の特異性は少なく見積っても大脳前回の投影区に限ったものではないと言い始めた。これと同時期に山西(頭鍼療法の発生地)では生殖区の上3cmに刺鍼して尿崩症の治療をおこない、これと異なる主張をしている。
1981年、高氏は上星、百会、五処、承光、通天、絡却などに刺鍼して100例の半身不随患者を治療し、有効率は90%に達した。
1983年、中国の著名な鍼灸家が、中国鍼灸学会主催のもとに、頭皮鍼従事者の専門家会議を開催し、一緒に『頭皮鍼、穴名標準化国際方案』を定めた。それが1884年6月に日本の東京で開催された世界衛生組織西太地区会議で、正式に承認された。
1985年、中医研究院鍼灸研究所と北京鍼灸学会が北京で「頭皮鍼学習班」を組織し、北京鍼灸界の著名人を呼び集めて「方案」の内容を紹介して講義し、頭皮鍼と関係のある生理、病理、解剖、経絡、経穴、辨証論治および臨床治療などのマニュアルを細かく解説し、頭鍼の理論と治療法を伝統的な中医学理論の範囲にまとめ上げ、伝統的な頭部経穴の適応症は広いことを訴え、その本来の面目と特徴を復活させて再確認したということで「頭皮鍼」と命名された。
1988年1月、ハルピンで開催された中国鍼灸学会経穴研究会頭穴組成立曁学術交流会議で、既存の頭穴がまとめられた。この大会で頭穴を使った疾病治療の特徴、主治範囲、基本的操作法を深く研究し、頭穴療法の適応症を拡大することになった。この大会で発表された頭穴治療の論文では、内科、外科、婦人科、小児科、整骨、神経内科、眼科および精神疾患など40種余りに及ぶ疾患が治療できる。特に頭穴療法で、急性病、脳出血、癲癇のもっとも適した治療時期の討議がおこなわれ、代表に好評だった。また疾病の頭穴治療研究と同時に、現代機器を使って頭穴を研究した報告も少なくなかった。この会議によって頭穴の研究は、さらに新しい段階に入った。
この期間中に「経絡頭鍼」、「湯氏頭鍼」、「蘭田頭鍼」などが現れた。
現在では頭部に刺鍼の治療メカニズムについて、二つの主な学説がある。
1.大脳皮質の機能が頭皮に投影される部分があって、その部分は大脳皮質に対して調節作用があるため治療できる。
2.身体の働きの総合調節作用説:人体の頭部は十四経脈が循行し、交わり、集まる部分である。頭穴に刺激することで気血の流れをや陰陽を総合的に調節し、病気の予防や治療に効果を表す。また透穴を使うことによって一穴から多くの穴位に影響を与えることができ、一穴で多くの穴位にわたる全体の整合作用を起こすことができる。それにより大脳の働きを調節し、また総合的に調整できるので、その作用は頭皮直下の皮質中枢調整だけにとどまらない。

第一章 解剖生理の知識

第一節 頭蓋の軟組織

表面から深層の皮膚、浅層筋膜(皮下組織)、頭頂筋と帽状腱膜、腱膜下結合組織、頭頂骨など、五つの層から構成されている。(1図)

皮膚

浅層筋膜
帽状腱膜
帽状腱膜下の
疎性結合組織
頭蓋骨外膜


1図 頭頂部断面図
一、皮膚
頭頂部の皮膚は厚くて緻密で、前額部を除いて全て頭髪があり、多くの汗腺と皮脂腺がある。?や毛嚢炎の好発部位である。このほか血管とリンパ管が豊富で、外傷では出血が多いが治りも早い。
二、浅層筋膜
皮下組織で、強靭で緻密な結合組織からできており、脂肪を含んでいるが、その脂肪の多さは太り具合によって異なる。結合組織が脂肪を無数に区切っており、区切りの中には脂肪のほかに神経と血管がある。だからこの層に炎症が起きても滲出物は広がりにくく、腫れが局部のみに留まることが多い。しかし末梢神経が圧迫されるため、炎症は早期から頭痛となって感知される。血管はここでは結合組織と癒着しており、外傷を負っても血管は収縮しにくいため出血が多くなり、血管や結合組織を圧迫しなければ止血できなくなってしまう。
頭頂部の血管と神経は浅層筋内では、ほとんどが基底部から頭頂部に向かって走っている。
(一)動脈と神経 前、後ろ、外の三つのグループに分かれている。(2図)
1.前グループ
前内側グループ:正中線からの距離2cm、滑車上動脈と滑車上神経がある。
前外側グループ:正中線からの距離2.5cm、眼窩上動脈と眼窩上神経がある。
2.外側グループ
耳前グループ:浅側頭動脈と耳介側頭神経が一緒に走っている。
耳後グループ:耳介後動脈と顔面神経である耳後枝の後耳介神経、頚神経叢の大耳介神経後枝と小後頭神経がある。後耳介神経は耳の後上方の筋肉に分布している。大耳介神経と小後頭神経は皮膚に分布している。

滑車上神経 滑車上動脈
眼窩上神経 眼窩上動脈
上顔面神経側頭枝

耳介側頭神経 浅側頭動脈


小後頭神経 耳介動脈


大後頭神経 後頭動脈
第三頚神経

2図 頭頂部の神経と動脈
3.後グループ:後頭動脈と大後頭神経が後頭部に分布する。そのあと頭頂に至り、動脈は神経の外側を行く。
頭頂部の動脈は広範に吻合している。左右が吻合しているばかりでなく、内頚動脈系統や外頚動脈系統ともつながり、頭頂部の神経もすべて皮下組織内を通っており、互いに折り重なって分布している。
(二)静脈 頭頂部の静脈は皮下組織にあり、広範に吻合して静脈網を作っている。静脈の主幹は、同名の動脈と一緒に走っている。
三、頭頂筋と帽状腱膜
頭頂筋は前方の前頭筋と後部の後頭筋を含んでいる。前頭筋と後頭筋は帽状腱膜でつながっている。前頭筋は眉や眉間の皮膚や皮下組織から起こり、眼輪筋とつながっている。後頭筋は外後頭隆起と、その左右両側から起こる。この二つの筋肉は皮筋に属す。帽状腱膜は強靭で厚いが、両側の側頭部では薄くなって側頭筋膜となる。
四、腱膜下の疎性結合組織
それは潜在性間隙のある一層の疎性結合組織で、導出静脈が通っており、それは頭皮の静脈、板間静脈、頭蓋骨内の硬膜静脈洞とつながる頭皮で危険な部分である。頭皮の静脈は導出静脈によって頭蓋骨内の静脈洞とつながっているので、もし導出静脈に頭皮の感染などが起きて血栓ができたりすると、血栓が脳内に入ってしまう恐れがある。また、ここで欝血したり、膿が溜ったり、液が溜ったりすると、すぐに頭頂全体に広がり、ひどければ瞼まで影響が及ぶ。
五、頭蓋骨骨膜
頭蓋骨膜は縫合と側頭窩、そして骨と堅くくっついてできた骨縫合膜ならびに硬膜外層とつながっているところにあるだけで、その他の骨膜と頭蓋骨の間には疎性結合組織が広がっている。骨膜下に膿が溜ったり出血したりすると、骨縫合に制限されるため一つの骨の骨膜の下から広がらない。こうした状況は腱膜下の疎性結合組織と違う。

第二節 頭蓋骨
頭蓋骨は一つの前頭骨、二つの頭頂骨、二つの側頭骨、蝶形骨と篩骨の八つの骨から構成され、頭蓋頂、頭蓋底、頭蓋腔を作っている(3図)。

プレグマ 矢状縫合 鱗状縫合

冠状縫合
頭頂骨 頭頂結節
前頭骨
前頭結節 ラムダ

後 人字縫合
プテリオン 側頭骨 頭
骨 外後頭隆起
蝶形骨
アステリオン






3図 頭蓋骨と縫合線

一、頭頂骨
前部は前頭鱗、後部は後頭鱗、中間に二つの頭頂骨があり、両側は蝶形骨の大翼と側頭鱗部である。
頭蓋底と頭蓋腔は省略する。
二、骨縫合
矢状縫合:二つの頭頂骨の間。冠状縫合:前頭骨と頭頂骨の間。人字縫合:後頭骨と頭頂骨の間。蝶頭頂縫合:頭頂骨と蝶形骨がつながるところ。

第三節 脳

大脳、小脳と脳幹から構成されている。

一、大脳
左右の両半球に分かれ、脳梁によってつながっている。表面の灰白質は大脳皮質と呼ばれ、脳細胞によって作られている。その下は白質で、神経線維によって作られている。白質のなかの灰白質の塊りは、大脳核と呼ばれている。白質の中には脳室がある。
(一)大脳の表面 :大脳には三つの面と、四つの極、五つの葉(六つの葉という人もある)がある。


















4図 大脳半球皮質の背外側面の溝と回

1.中心前回。2.上前頭回。3.上前頭溝。4.中前頭回。5.下前頭回。6.直回。
7.大脳外側溝。8.側頭極。9.上側頭回。10.上側頭溝。11.中側頭回。12.橋。13.錐体。
14.オリーブ。15.延髄。16.オリーブ後溝。17.小脳片葉。18.小脳半球。19.下側頭回。
20.大脳横裂。21.下側頭溝。22.後頭極。23.横後頭溝。24.頭頂間溝。25.中心溝。
26.中心後回。

面:背外側面、内側面、底面。
極:後頭極、側頭極、島極、前頭極。
葉:溝と回によって五つ(六つ)の葉に分けられる。
(二)主な溝と裂。
中心溝:背外側面付近の中間部分に位置する。頭頂部から下に向かって湾曲し、外側溝の上で止まる。前は前頭葉、後ろは後頭葉である。
外側溝:脳底から始まり、背外側面で後ろに向かう。上方は前頭葉と頭頂葉、下方は側頭葉となる。
頭頂後頭溝:内側面ではっきりしていて、大脳半球の後ろ のところにあり、頭頂後頭溝から後頭前切痕をつないだ線から後ろ側が後頭葉である。
輪状溝:前頭部と側頭部の深部にあり、ほぼ三角形をして、島、前頭葉、側頭葉の境界である。(4図、5図)

















5図 大脳皮質内側面の溝と回

1.中心旁小葉。2.帯状溝辺縁枝。3.脳梁幹。4.楔前部。5.頭頂後頭溝。6.脳梁膨大部。
7.楔部。8.鳥距溝。9.視床。10.海馬溝。11.歯状回。12.海馬回。13.後頭側頭溝。
14.下側頭回。15.海馬旁回鈎。16.海乳頭体。17.脳弓体。18.前交連。19.脳梁吻。
20.脳梁膝。21.脳梁溝。22.帯状回。23.帯状溝。24.透明中隔。25.上前頭回。

(三)分葉
前頭葉:背外側面の中心溝から前、外側溝より上の部分。中心前溝、上前頭溝、下前頭溝によって中心前回、上前頭回、中前頭回、下前頭回に分けられ、底面は嗅溝、直回と眼窩回がある。内側面の帯状溝から上、中心溝から前には、内側前頭回、中心旁小葉の前部がある。
側頭葉:外側溝の下方で、頭頂後頭溝と後頭前切痕をつないだ線の前方。外側から上側頭溝、下側頭溝によって上側頭回、中側頭回、下側頭回に分かれている。上側頭回の一部は外側溝に巻き込まれ、上側頭回平面と呼ばれる。そこには横側頭前回と横側頭後回がある。底部は下側頭回が底部に回っており、その内側には内側後頭側頭回(紡錘状回)がある。
頭頂葉:背外側面の中心溝から後ろで、頭頂後頭線の中点と外側溝末端をつなぐ線の上部である。中心後溝、頭頂間溝によって中心後回、上頭頂小葉、下頭頂小葉(縁上回、角回)に分けられる。内側面の中心溝を延長した線の後、頭頂後頭溝の前で、帯状回頭頂下溝の上には、中心旁小葉後部と後頭前回がある。
後頭葉:外側面は頭頂後頭溝と後頭前切痕の後方で、溝と回は横に定まっていない。内側面は頭頂後頭溝の後で、鳥距溝によって楔部(上唇)と舌状回(舌唇)に分けられる。
島:外側溝の深部にあり、前頭葉が表面を被っている。
辺縁系:帯状回、海馬、中隔野と歯状回を含んだ部分で、脳幹の周囲にある。辺縁系の内容は徐々に拡大して皮質構造と似ており、作用は皮質下構造(前障、扁桃核、視床の一部)と密接に連絡しており、辺縁系統に属す。匂い、内臓、感情の活動や記憶などと関係があり、内臓脳とも呼ばれる。(6.7.8.9.10図)

中心溝 中心前溝

中心後溝
上前頭溝

頭頂間溝
下前頭溝


大脳外側溝

上側頭溝

下側頭溝
大脳横裂

□:前頭葉 □:頭頂葉 □:側頭葉 □:後頭葉
6図 大脳半球皮質の分葉(背外側面)









□:嗅脳 □:前頭葉 □:後頭葉 □:頭頂葉 □:側頭葉
7図 大脳半球皮質の分葉(内側面)
1.帯状溝辺縁枝。2.頭頂後頭溝。3.脳梁膨大。4.鳥距溝。5.海馬溝。6.前交連。
7.脳梁吻。8.脳梁膝。9.脳梁溝。10.帯状溝。















□:前頭葉 □:後頭葉 □:側頭葉 □:嗅脳
8図 大脳半球皮質の回溝と分葉(底面)
1.前頭極。2、24.嗅球。3、5.眼窩回。4、23.嗅索。6.下前頭回。7.大脳外側溝。8.海馬溝。
9.紡錘状回。10.側副溝。11.鳥距溝。12.外側後頭側頭回。13.楔部。14.舌状回。
15.後頭極。16.大脳脚。17.中脳水道。18.動眼神経。19.乳頭体。20.灰白隆起。
21.視交叉。22.視神経。















□:前頭葉 □:頭頂葉 □:後頭葉
9図 大脳半球の回溝と分葉(上面)
1.前頭極。2.大脳縦裂。3.上前頭溝。4.下前頭溝。5.中心前溝。6.中心溝。7.中心後溝。
8.頭頂間溝。9.後頭溝。10.後頭極。

島輪状溝





島中心溝 島短回



島長回



側頭極


10図 島を被った部分を切除した右側の島
(四)大脳皮質の構造 大脳皮質は大脳表面にあって神経細胞からできており、灰色をしているため灰白質と呼ばれている。溝のために大脳の表面積は約2.2m2に拡大され、その1/3が表面、2/3が溝や裂の中にある。皮質層の厚さは平均2.5cmで、中心前回が最も厚くて4.5cm、後頭葉の鳥距溝底で最も薄く1.5cmの厚さである。皮質の神経元の数は約140億個ある。皮質の神経のうち少数は神経終末(視床皮質線維)に入り、大部分は神経元同士がつながって、同半球間および対側の半球(脳梁を経て)を連絡している。さらに少数は神経元から出て、皮質によってまとめられた刺激をそれぞれに対応する神経系統に伝えている。
皮質細胞は錐体細胞、顆粒細胞(または星状細胞)、多形細胞の三種類に分かれており、これらの細胞の軸索突起により連合線維や交連線維となる。それ以外のいくつかの小型の細胞は、皮質内部の各層を連絡している。
大脳皮質は六層に分けられる。第1層の表在層は、少量のレチウス細胞とカハール細胞を含み、全体の厚さの約10%を占める。第2層の外顆粒層は、大量の顆粒細胞と小型の錐体状神経細胞によって作られ、全体の厚さの約9%を占める。第3層の外錐体層は、やや大きな錐体細胞からできており、全体の厚さの約33%を占める。第4層の内顆粒層は、外顆粒層とほぼ同じであり、感覚野が比較的厚いほか、通常では全体の厚さの10%を占める。第5層の内錐体層は、中型と大型の錐体細胞からできており、中心前回と中心旁小葉に巨大な錐体細胞があって、全体の厚さの約20%を占める。第6層の多形細胞層は、楕円形、紡錘形、多角形の大きさの不揃いな細胞によってできており、皮質全体の厚さの約20%を占める。一般に1〜3層は皮質と各皮質間の連絡と連合する働きがあると考えられている。第4層は上行線維の刺激を受け取り、第5〜6層で線維に刺激を出して反応を完成する。















11図 大脳皮質細胞の構造区(背外側面)
1.中心後回。2.中心後溝。3、5.頭頂間溝。4.縁上回。6、8.上側頭溝。7.横口頭溝。
9.上側頭回。10.中側頭回。11.下側頭溝。12.下側頭回。13.側頭極。14.大脳外側溝。
15.直回。16.下前頭回。17.下前頭溝。18.中前頭回。19.上前頭溝。20.上前頭回。
21.中心前回。22.中心溝。















12図 大脳皮質細胞の構造区(内側面)
1.中心旁小葉。2.帯状溝辺縁枝。3.楔前部。4.頭頂後頭溝。5.鳥距溝。6.舌状回。
7.脳梁膨大部。8.下側頭回。9.海馬旁回。10.鈎。11.大脳外側溝。12.直回。13.嗅球。
14.脳梁幹。15.帯状回。16.上前頭回。
大脳皮質細胞の構造は各部分が全く異なっており、組織学の構成によって脳の皮質区分図を作る学者がいたり、それぞれの人によって区分けする項目も全く違っている。現在最もよく使われているのがブロードマン(1909)の区分法である。彼は皮質を52の部分に分け、数字で表示した(皮質区分図)。例えば運動領は第4野、体知覚領は第3、1、2野、視覚領は第17野、聴覚領は第41、42野にある。(11図、12図)

膝 大 体 肩 肘 腕 手
腿 幹 小
踝 指 薬
足趾 指 中
指 人
差 親
指 指 頚

眼瞼と眼球

口唇
発声運動
下顎
唾液分泌
舌 咀
舌咽 嚼
図13 皮質の人体各部の運動部位 図14 運動皮質の面積比
(五)大脳皮質の主な機能
1.身体の運動
第一運動領 中心前回と中心旁小葉の前部。第4野と第6野の一部である。
主に中心後回、視床の部分を受ける線維と交連、連合線維。
下行性線維は錐体路系の皮質脊髄路(前索路、側索路)、皮質延髄路、錐体外路系の網様体脊髄路、赤核脊髄路、皮質錐体外路系などがある。
動物や人間の運動領に電気刺激を与えると対側の筋肉が収縮するが、外眼筋、前頭筋、咀嚼筋、咽喉筋などでは両側が収縮する。これらの運動は全て単純な運動である。
中心溝の前方にある中心旁小葉へ電気刺激をおこなうと、足の指、くるぶし、膝、股、体幹、肘、前腕、手、小指、薬指、中指、人差指、親指、頚、額、瞼と眼球、顔、唇、発声、下顎、舌、咽喉、涎、咀嚼の順序で運動が引き起こされる。(13図)
運動領は機能によって細かく分類され、その投影図は身体と上下が逆になっているが、頭部は身体と同じである。機能分野の大きさは、細かな運動ができるかどうかに関係あり、例えば親指の部分は腿の部分の十倍ある。皮質は、対側の上下肢と口輪筋、眼輪筋、前頭筋、舌筋(オトガイ舌筋を除く)の運動をコントロールする。また両側の咀嚼筋、咽頭筋もコントロールする。(14図)
頭と眼の運動
前頭葉の眼部:中前頭回の後部で第8野の一部分に相当し、この部分を刺激すると両眼が同じ方向に斜めに動く。
前頭葉の頭部:眼部に相当し、刺激すると頭に伴い眼球が対側を向く。
補助運動:脳半球内側面の内側前頭回の皮質を電気刺激しても運動が起こるが、これを補助運動領と呼ぶ。その面積は1cm2ぐらいで、ここは身体の運動のほか内臓の動きも引き起こし、主に姿勢の維持と関係している。
第二運動領 中心前回と中心後回の最下端にあり、外側溝に深く入っている。この部分は対側の上下肢の部分だけで、頭部はない。
実際に運動と関係する部分は、4、6、8野のほかにも、頭頂葉、後頭葉、側頭葉の3、1、2、5、19、22野などがある。(15図)

62a 4 3,1,2

62B


5
8aBδ

19





6b 22

15図 人の大脳半球で、電気刺激によって運動を誘発する刺激野
2.身体の知覚
第一知覚領:中心後回と中心旁小葉の後部にあり、3、1、2野に相当するところで、身体の知覚とその識別をおこなっている。
視床の後腹側核(内側、外側)から出るのが知覚を感じる線維で、三叉神経視床路や脊髄視床路などによって皮膚感覚や身体の感覚が伝えられる。刺激は視床の後腹側核(内側、外側)に中継されたあと、内包脚を上行し、中心後回と中心旁小葉の後部に行く。
誘発電流と皮質刺激の研究によれば、知覚領は運動領の作用部位とほぼ同じで、外生殖器、足の指、足、脛、大腿部、体幹、額、頭、肩、上腕、肘、前腕、手首、指、眼、鼻、顔、上唇、下唇、歯、歯槽と下顎、舌、咽喉などの順となっている。その部分の大きさは、体表各部の感覚の鋭敏さと関係があり、例えば手や顔や口の部分は特に大きいが、その部分の感覚受容器が多いため、神経の分布密度が大きくなるからである。(16図)

前 肘 上 肩 頭 頚 体 股 脛
小 手 腕 腕 幹 関 足
中 薬 指 首 節
親 人 指 指 足趾
眼指 差
鼻 指
顔 生殖器
上唇
両唇
下唇
歯、歯槽と下顎


咽頭

腹腔器官

図16 皮質の身体の知覚、人体各部の投影と比率
第二知覚領:人では中心後回の最下部(中心前回まで広がっていることもある)にある。この部分を刺激すると、第一知覚領を刺激したときと似た感覚が起こる。それは両側の体表を反映しているが、対側が主である。顔や口や咽喉の反映する部分は、ここでは証明されていない。
3.言語領:比較的複雑で、多くは左右どちらかの大脳半球が中心となっている。言語は、言葉や文字を理解したり、喋ったり字を書いて考えや感覚を表すことを含んでいる。つまり聞く、見る、話したり書いたりの筋肉運動を通して表される。
聴覚性(知覚性)言語中枢:頭頂葉の縁上回と上側頭回、中側頭回後部にあり、そこが損傷されると言葉が理解できなくなる。
記憶、閲覧、視覚性言語中枢:角回にあり、損傷されると本を読むことができなくなり、命名性失語症となる。
運動性言語中枢:下前頭回後部にあり、損傷されると運動性失語症が起こる。
書字中枢:中前頭回後部にあり、損傷されると文章を書くことができなくなる。
4.聴覚領:側頭葉外側溝の横側頭回の上にあり、内側膝状体から出る線維を受ける。両側の信号を受けるが、対側が主である。
5.視覚領:後頭葉の内側にあり、鳥距溝の上下部。外側膝状体から出る線維を受ける。片側の視覚領で、瞳孔の中央から同側網膜のこめかみ側半分と対側網膜の鼻側半分を受け持ち、楔部で網膜の上部、舌状回で網膜の下部の映像を受け持つ。(図17、図18)
6.そのほかの中枢
前頭葉:筋肉の張力と姿勢、運動失調、眼をグルグル回す運動、思索や高級な知力、知覚及び自律神経の調整などをおこなう。
頭頂葉:味覚、自分の位置の認知、細かな運動。
側頭葉:記憶や平衡。
辺縁系統:匂い、味、感情、行動、記憶及び内臓の運動に関係する。

知覚中枢
運動中枢

書字中枢 聴覚性
言語中枢
動眼中枢

視覚性
言語中枢
運動性
言語中枢 視覚中枢


聴覚中枢


17図 大脳皮質の機能区分(背外側面)

中心溝 運動中枢


脳梁溝 骨盤内器官の運動中枢

頭頂後頭溝
内臓中枢

鳥距溝

海馬溝

臭覚味覚中枢 側副溝

18図 大脳皮質の機能区分(内側面)

(六)大脳皮質の部位の診断
1.前頭葉損傷
精神症状:記憶力が減退し、表情が淡泊で鈍くなって自制が利かず、集中力がない。知能障害が起こって、性格が変わり、喜んだと思うとすぐ怒ったりする。時間、場所、人物などが判らなくなる。
中心前回症状:刺激性の病変と痙攣発作(癲癇)。破壊性の病変では単麻痺が起こる。
眼の運動障害:中前頭回後部とその線維が損傷されるもので、刺激性の病変では病変部の対側を見つめる。破壊性の病変では病巣部を見つめる。一般に症状は長続きせず、意識がはっきりしているときは現れないことが多い。
運動性失語:下前頭回(ブローカーの中枢)の損傷。
反射:握り反射、探索反射(groping反射)、ローマーズ反応の減弱や消失、緊張性のアキレス腱反射。
拒絶症:両側の前頭葉が損傷。
前頭葉性の運動失調:体幹性の運動失調と症状が似ており、直立と歩行障害が主である。原因は前頭葉と小脳の連絡が破壊されたことによる。
字を書くことができない:中前頭回の後部の損傷。
硬直状態。
前頭葉底部の症状:フォスター−ケネディ症候群(一側の味覚、視力が低下し、視神経が萎縮し、対側の視神経乳頭に浮腫が起こる)。両側の視神経乳頭に浮腫が起こり、突然一方の視力が低下する。前頭極の腫瘍では、眼窩や眼窩上孔が圧迫され、3、4、5対の脳神経及び三叉神経の第一枝が損傷されたり、一方の眼球が突き出したりする。
孤立性の中枢性顔面麻痺。
自律神経失調症:片麻痺肢体の浮腫や皮膚温度の変化など。
前回転発作:対側の筋肉が引きつり、目が病側の反対側を向いたり、意識障害など。
2.頭頂葉の損傷
中心後回の病変:刺激性の病変では知覚性皮質性の癲癇が起こる。破壊性の病変では、二つの点の識別、触覚の部位、触覚の滞留や倒錯などの、皮質の複雑な感覚の知覚障害が起こる。
病変が頭頂部と後頭部の境界線にあると、手足がなくなった感覚や、多くあるような感じがする。
失行症:縁上回が損傷すると、複雑な技能が使えなくなる。
失読症:頭頂葉と側頭葉の境界の角回が損傷すると、健忘性の失語症を併発する。
後回転発作:頭頂小葉が損傷されると、対側半身の知覚に異常発作が起こる。
病巣の対側に下象限性の半盲が起こる。
対側の半身が萎縮する。
空間位置の障害(左右、地理、方向)。
3.側頭葉の損傷
知覚性失語。
聴覚障害:刺激性病変による幻聴や、破壊性病変による難聴。
味覚や臭覚の障害:刺激性病変による味や匂いの幻覚。両側の破壊性病変により味覚や臭覚の減退が起きたりする。
健忘性失語と失読症。
運動失調:体幹性運動失調。
視野の変化:病巣対側の上象限の視野消失。
眩暈発作:側頭葉のびまん性病変。
音楽障害:上側頭回前部。
側頭葉癲癇:症状が複雑で、意識が恍惚とし、言語が乱れ、精神運動性興奮、情緒と見当識能力の障害、幻覚、錯覚、記憶の欠損など。基本症状としては記憶力の障害。
自動症は側頭葉癲癇の一種で、発作が起きると意識の支配を受けない行動、例えば人を傷付けたり、物を壊したり、自己加害、衝動、裸になるなどの精神興奮状態、そしてそのほかの無目的な行為、例えば口唇を無目的に動かす、咀嚼、嚥下、頭や目玉を回す、摂食行動の異常などが現れる。
さらに夢幻感、恐怖感、複視、大視症、周りのことをよく知っているような感じ、周りのことが目新しい感じなどは側頭葉の癲癇である。
4.後頭葉の損傷
刺激性病変により幻視や複雑な幻覚が現れる。破壊性病変により同名半盲や四分の一半盲、そして皮質盲が起きる。
視像判断ができない。
眼の協同運動障害:刺激性病変により、眼が病巣の対側を向く。あまり起こらない。
(七)大脳半球内部の構造と機能
大脳半球内部の組織は、脳梁と脳室、そして基底神経節や内包などを含む。
脳梁:両半球をつなぐ線維。
基底神経節:レンズ核と尾状核を含む。レンズ核はさらに外部の被核および内部の淡蒼球に分けら、被核と尾状核を新線状体、淡蒼球を古線状体を呼ぶ。線状体は錐体外路系を構成する部分で、随意運動の調節や筋収縮の調節、さらに体温や糖代謝も調節する。これ以外にも視床下部にある自律神経もコントロールしている。古線状体が脳血管の硬化などにより損傷すれば、筋肉の硬直、随意運動の減少、仮面状顔貌、頭部や四肢に震顫が現れるなど、いわゆるパーキンソンとなる。新線状体が損傷すれば筋肉の収縮力が減退し、不随意で不規則な振るえが起こり、舞踏病と呼ばれる症状が現れる。
内包:視床とレンズ核そして尾状核に挟まれた狭い部分であり、皮質を下行する神経線維から皮質を上行する神経線維に至る通路である。脳の水平面上では、くの字形あるいは逆くの字形になっており、前脚そして後脚、および両肢が交接する膝に分かれる。脊髄を上行あるいは下行する投射線維は、内包の定位置に収まっており、皮質延髄路は膝を通過する。皮質脊髄路は内包後脚の前方にあり、さらに後ろに向かって皮質赤核路、視床皮質路、聴放線そして視放線などのように、投射線維が並んで通過する。出血による圧迫などで内包が障害されれば、対側半身の運動麻痺、知覚障害や対側の同名半盲が現れる。(19図)
視床と視床下部:視床本体は知覚線維を受ける。脊髄から上行する知覚線維では、例えば脊髄視床路、薄束そして楔状束、および延髄を上行する三叉神経脊髄路などが、視床を交互に通過し、神経元を換えたあと内包後脚に入り、後視床放射されて中心後回の皮質性知覚区に至って線維を出す。つまり視床は知覚線維の三次神経元中継地点である。
視床下部は内臓運動と内分泌活動の中枢で、感情にも係わっている。視床下部は中脳の

中心灰白質および網
□:前頭橋核路 状構造を交互に中継
したあと、下行する
線維を出して脳幹の
□:皮質橋核路 副交感節前神経核に
至り、また脊髄の交
感節前神経核と副交
□:皮質脊髄路 感節前神経核にも達
する。視床下部は、
この通路を使って内
□:知覚路 臓運動をコントロー
ルしている。

□:視聴覚路


□:後頭−側頭−頭頂橋路

19図 内包

二、脳幹
延髄と橋、そして中脳の3つの部分から構成されている。脳幹は第3から第12の脳神
経が、脳から出る部位である。
−−−−動眼神経副核 中脳は第3と第4脳神経、そし
−−−−動眼神経核 てその神経核があり、橋は第5、
−−−−滑車神経核 第6、第7、第8脳神経と神
−−三叉神経中脳路核  経核、延髄には第9、第10、
−−三叉神経主知覚核 第11、第12脳神経と神経核
−−三叉神経運動核 がある。(20図)
−−外転神経核 脳幹は神経核のほか網状構造
−−顔面神経核 が大きな面積を占めているが、
−−三叉神経脊髄路核 それは複雑な部分で広く連絡し
−−唾液核 ている。網状構造は進化の上で
オリーブ核−− −−孤束核 は古いもので、多くのシナプス
舌咽神経−− −迷走神経背側運動核 が連絡している形態を残してお
迷走神経−− −−舌下神経核 り、さまざまな知覚伝導系のシ
副神経−−− −−疑核 グナルを受け取って、遠心性繊
舌下神経−− 維へ直接あるいは間接的に伝え、
−−副神経核 それぞれの中枢部分と連絡する。
20図 脳幹の模式図 網状構造は、さらに睡眠、覚醒、
筋力の調節、内臓活動の調節など、多くの重要な働きにも関係している。網状構造の縫線核群(延髄から中脳に至る)は、細胞内に神経伝達物質であるセロトニンを含んでいる。セロトニン(5ヒドロキシトリプタミン)は鎮痛の伝達物質なので、鎮痛作用を起こす。

三、小脳
小脳虫部と小脳半球からできている。3対の小脳脚と延髄、橋、中脳と連絡しており、後頭蓋窩に位置している。上部は小脳テント、そして大脳の後頭葉と隣接しており、その下方には橋と延髄がある。小脳表面の灰白質は小脳皮質と呼ばれ、内部の白質を髄質と呼び、髄質の中心にある灰白質核は小脳核である。
小脳の働きは、身体のバランスを維持したり、筋肉張力の調節、協調運動などである。

四、血液供給と脳脊髄液循環
(一)脳の動脈
脳の動脈は、内頚動脈と椎骨動脈の二つの大きな系統に分けられる。内頚動脈は大脳半球内側面の前大脳動脈、そして中大脳動脈と前交通動脈を出している。中大脳動脈は大脳半球の外側面に分布し、前交通動脈は左右の前大脳動脈をつないでいる。内頚動脈は、このほかにも後交通動脈と前脈絡叢動脈を出しているが、後交通動脈は両側の後大脳動脈と連絡し、前脈絡叢動脈は脈絡叢となって脳室に入り、内包と尾状核に血液を供給する。椎骨動脈は頚椎横突孔を通って、後頭骨の大後頭孔から頭蓋腔に入り、橋で左右が合流して脳底動脈となる。脳底動脈からは前下小脳動脈と後下小脳動脈が出て、それぞれ小脳の下面と延髄に血液を供給している。脳底動脈からは、このほかにも小脳の上面に血液を供給している上小脳動脈が出ている。迷路動脈と橋枝は、橋と第8脳神経に血液を供給する。
さらに脳底動脈は後大脳動脈も出し、後頭葉と側頭葉底面に血液を供給している。前大脳動脈、中大脳動脈、前交通動脈、後大脳動脈そして後交通動脈で大脳動脈輪(ウイルス動脈輪)を作っている。(21図、22図、23図、24図、25図)

前大脳動脈の分枝





後大脳動脈の分枝 中大脳動脈の分枝





21図 大脳半球の外側面の主要な動脈と血液供給




前大脳動脈と 後大脳動脈と
その分枝 その分枝



縦に割った内側面
22図 大脳半球の内側面の主要な動脈
血液供給区
−−−1
−−−2 □中大脳動脈
−−−3
−−−4
−−−5 □前大脳動脈
−−−6
−−−7
□後大脳動脈

A:大脳底面の動脈 B:前、中、後大脳動脈が
1.前交通動脈2.前大脳動脈3.内頚動脈 脳底面で皮質に血液供給を
4.中大脳動脈5.後交通動脈6.脳底動脈 している部位。
23図 大脳底面の主要な動脈と血液供給
1−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−前大脳動脈 1:大脳縦裂
2−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−前交通動脈 2:嗅球
3−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−眼動脈 3:視神経
4−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−中大脳動脈 4:視交叉
5−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−後交通動脈 5:脳下垂体
6−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−後大脳動脈 6:橋
7−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−脳底動脈 7:外転神経
8−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−上小脳動脈 8:基底溝
9−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−内頚動脈 9:錐体
10−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−前下小脳動脈 10:小脳
−−−−−−−−−−−後下小脳動脈 11:脊髄
11−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−椎骨動脈 12:前正中裂

12−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−前脊髄動脈
24図 脳の底面の動脈
15−−−−−−
14−−−−−− −−−−−−−1 □:中大脳動脈深枝
13−−−−−− −−−−−−−2
12−−−− −−−3 □:中大脳動脈浅枝
11−−−−− −−−4
−−−−−−−5 □:前大脳動脈
10−−− −−−−6
−−−−−−−7 □:後大脳動脈
−−−−8
9−−− □:前交通動脈

□:前脈絡叢動脈


A:大脳の水平断面 B:各動脈の血液供給範囲
1.脳梁膝2.尾状核3.被核4.前障5.内包6.海馬7.脳梁膨大8.鳥距溝
9.視放線10.側室脳脈絡叢11.視床12.淡蒼球13.第三脳室14.側脳室前角
15.大脳縦裂
25図 大脳深部の動脈血液供給
(二)脳の静脈
深と浅の2つの静脈からなり、動脈とは別に走っている。深静脈は脳実質の中、浅静脈は脳の表層を行く。深静脈、浅静脈とも最後には大脳大静脈に入り、直静脈洞に注がれる。(26図)
ロランド静脈

上矢状静脈洞
前頭葉静脈
頭頂葉静脈

トロラール静脈
後頭静脈
浅中大脳静脈
ラベー静脈

下大脳静脈

横静脈洞


26図 大脳半球の静脈(A:大脳半球の外側面)
前終静脈
傍中心静脈
縦尾状核静脈
透明中隔静脈 横尾状核静脈

前頭静脈 視床線状体静脈

脈絡叢静脈

頭頂葉静脈

下矢状静脈洞
内大脳静脈
深中大脳静脈 直静脈洞

大大脳静脈
海綿静脈洞 側頭静脈 脳底静脈
横静脈洞
26図 大脳半球の静脈(B:大脳半球内側面)
(三)脳室と脳脊髄液循環
脳脊髄液は中枢神経系統内を調節し、栄養物を脳細胞に運んで代謝産物を持ち去る。
大大脳静脈槽 脳脊髄液がクモ膜下腔に
上大脳静脈 充満していれば脳の水枕
クモ膜顆粒 となり、振動による頭蓋
上矢状静脈洞 室 上矢状静脈洞 骨との直接接触を避けら
間 れ、さらに頭蓋内部の圧
脳硬膜 孔 静脈洞交会 力も調整する。脳脊髄液
交叉槽 小脳テント は主に側脳室と第3、第
脚間槽 直静脈洞 4脳室にある脈絡叢から
中脳水道 大槽 産生される。この液体は
第4脳室 後下小脳動脈 側脳室から室間孔を経て
第4脳室脈絡叢 第4脳室正中口 第3脳室に入り、下に向
橋槽 脊髄軟膜 かって中脳水道と第4脳
後頭骨の骨膜 クモ膜 室に流れ、第4脳室正中
硬膜下腔 硬膜 口と外側口を通ってクモ
脊髄 終室 膜下腔に流れ込む。そし
クモ膜下腔 終糸 てクモ膜顆粒を経て上矢
中心管 状静脈洞に吸収され、静
終槽 脈に入る。もし脳脊髄液
27図 脳脊髄液の循環 の循環路が閉塞されれば、頭蓋内圧が高くなって水頭症になる。(27図)
五、主要伝導路
(一)感覚伝導路
1.温度痛覚:皮膚→後根神経節→後根→後角で細胞を乗り換える→白交連→対側の外側脊髄視床路→視床で細胞を乗り換える→内包後脚→皮質層。(28図)。

中心後回−− | 中心後回−−
| −−−視床
内包−−−− |
| 内包−−−−
←中脳 |
脊髄視床路−−− | −−−尾状核
頭面部の感覚| レンズ核−
マイスネル触覚小体 ←橋 |
クラウゼ小体 | 中脳→
自由神経終末 ←延髄 | 内側毛帯−−
パチニ小体 |
毛包の神経終末 ←頚髄 | 橋→
| 薄束核+
←胸髄 | 楔状束核+
皮膚感覚の神経末梢 | 延髄→
←腰髄 |
| 薄束+
| 楔状束+ +
| 頚髄→ | +−−
頚髄後角の損傷により、分節性の知覚障害が発| | |
生する。 | 薄束+ | +−−
胸髄側索の損傷により、伝導性の知覚障害が発| 楔状束+ +−+
生する。 | | +−−
28図 皮膚感覚の伝導路 | 胸髄→ | |
2.深部感覚:筋肉、関節、筋腱→後根神経節→| | |
後根→脊髄後束(薄束、楔状束)→延髄の薄束、| 腰髄→ + |
楔状束核で細胞を乗り換える→対側の内側毛帯→|
視床→内包後脚→皮質層。(29図) | 頚髄後索の損傷で、頚から下の深部
3.触覚:皮膚→後根神経節→後根に入って、一|感覚(左図)、識別性触圧覚(上図)
部は深部感覚と一緒に上行し、一部は後角で細胞|、振戦覚(下図)が障害される。
を乗り換えて対側の前脊髄視床路に至る→視床。| 触覚小体神経 筋紡錘 神経腱紡錘
4.顔の知覚:三叉神経から入り、深部感覚は中| パチニ小体 関節包 関節腔 骨
脳、触覚は橋、温度痛覚は脊髄路から対側の三叉|
神経毛帯を通って視床に至り、内包を経て皮質層| 29図 深部の感覚と触覚の伝導路
に達する。
(二)錐体路
1.皮質脊髄路:大脳皮質→内包前脚→脳幹→延髄下端。一部は交叉せずに前皮質脊髄路に至る→対側の前角で細胞を乗り換える(少数は同側に至る)。大部分は交叉して対側の外側皮質脊髄路に至る→前角で細胞を乗り換える→後根→随意筋。
2.皮質脳幹路:大脳皮質→内包前脚→脳幹で交叉して対側に行き、一部は同側の脳幹神経運動核で細胞を乗り換えて、脳神経を構成する→頭面部の随意筋。(30図)。
−−−−−−
中心前回−−−−−−


内包−−−−−−


皮質脊髄路−−−−−−
+−−−
動眼神経核と−−−−−−+−−− →
動眼神経 中脳→
−−−顔面神経核
皮質延髄路−−−−−−− −−−外転神経核
橋→
−−−疑核と
迷走神経
延髄→ −−−舌下神経核と
舌下神経
前皮質脊髄路−−−−−−−
−−−
頚髄→

外側皮質脊髄路−−−−−−−
胸髄→
−−−
腰髄→

※1左半球の中心前回上部を損傷すると、右下肢に痙性麻痺が起こり、バビンスキー反射が陽性になる。※2左の大脳脚を損傷すると、右半身に痙性麻痺が起こり、左眼の眼瞼下垂や眼球が下外を向くなどの脳神経症状も伴う。( 左側の頚髄側索を損傷すると、右半身に痙性麻痺が起きる。)左側の腰髄前角を損傷すると、左下肢に弛緩性麻痺が起きるが、病理反射はない。
30図 錐体路
六、体表投影
頭鍼は皮質が頭皮に投影している部分に基づいて刺激区を定めている。そこで主な回溝が体表に投影する部分を把握しなければならないが、それには最初に6本の基準線を定めるのが一般的で、この基準線に基づいて区分してゆく。
@下横線:眼窩下縁から耳の後ろに向け、外耳道口の上縁までに至る線。
A上横線:眼窩上縁から後ろに向けて、下横線と平行に引いた線。
B矢状線:鼻根部から上後方に向け、外後頭隆起に引いた線。
C前垂直線:頬骨弓の中点から、上下の横線と垂直に引いた線。
D中垂直線:下顎骨関節突起の中点から、上に垂直に引いた線。
F后垂直線:乳様突起後縁から、前垂直線や中垂直線に平行に引いた線。
(一)中心溝の投影
前垂直線と上横線の交点と、后垂直線と矢状線の交点をつないだ線上で、后垂直線と中垂直線の間の部分である。この部分の下端は、下顎関節の5〜5.5cm上にくる。
(二)中心前回と中心後回の投影
それぞれの位置は、中心溝が投影している前と後ろの、それぞれ1.5cm幅の範囲である。中心前回の下部は運動言語中枢であり、その投影部位は前垂直線と上横線の交わる上方である。
(三)外側溝の投影
この溝は上横線と中心溝で作る三角を、二等分するように引いた斜線に当る。この線が分けているのは、横側頭回が投影する部分である。縁上回は外側溝の後ろにあり、頭頂結節付近に相当する。角回は上側頭溝の後ろにあり、頭頂結節の後方3〜4cmのところである。(31図)
中垂直線
后垂直線 | 前垂直線
| | | 中心前回
| | | 中心後回−−− |
| | |
| | | −−−上前頭回
| | |
上横線−−−−−+−−−+−−−+−−−−− 頭頂間溝−−−− −−−中前頭回
| | |
| | | −−−下前頭回
下横線−−−−−+−−−+−−−+−−−−− 上側頭回−−−−
| | | 中側頭回−−−−
| | | 下側頭回−−−−
| | | −−−外側溝



31図 6本の基準線 頭部の体表投影区

第二章 頭部の経絡と経穴
第一節 経 絡

一、十二経脈 『霊枢・経脈』
足の陽明胃経 :「客主人を過ぎて、髪際を循り、額顱に至る」
足の太陽膀胱経 :「目の内眦から起こり、額に上って巓で交わる。その支脈は巓から耳の上角に至る。その真っ直なものは、巓から脳に入って絡まり、さらに別れて下ってうなじ(後頚部)に出る」
手の少陽三焦経 :「うなじを上がって耳の後に繋がり、真っ直に上がって耳の角に出る」
足の少陽胆経 :「目の鋭眦に起こり、上がって額角に触れ、耳の後ろを下がって、頚を循る」
足の厥陰肝経 :「目系に繋がり、上がって額に出、督脈と巓で会う」

二、奇経八脈
督脈 :「督脈は、額を上がって巓上で交わり、脳に入って絡み、さらに別れて下がり、うなじに出る」『素問・骨空論』「督脈は、下極の兪に起こり、背骨の中を並んで進み、上がって風府に至り、入って脳に属す」(『鍼灸甲乙経」では、さらに巓に上って額を循り、鼻柱に至る)『難経・二十八難』
陽?脈 :「陽?脈は、跟の中に起こり、外踝を循って上行し、風池に入る」『難経・二十八難』。「足の少陽の筋・・・上がって右額角を過ぎ、?脈と一緒に行き、左は右に絡まる。だから左の額角を傷付けると右足が動かなくなる。これを維筋相交と呼ぶ」『霊枢・経筋』。「?脈は、少陰経から別れた脈で・・・頬に入り、目の内眦に属し、太陽脈や陽?脈と一緒に上行する」『霊枢・脈度』。「陽?脈・・・手足の太陽と陽明と陽?の五つの脈は、睛明穴で一緒になる。睛明から上行して髪際に入り、下がって耳の後ろの風池に入って終わる」『奇経八脈考』。
陽維脈 :「それは頭にある。足の少陽と本神、陽白で会い、臨泣に上がって、正営に上がり、脳空を循り、下って風池に至る。これは督脈と風府と?門で会う」『十四経発揮』。「上がって耳の後ろを循り、足の少陽と風池で会い、脳空、承霊、正営、目窓、臨泣に上がり、額に下って手足の少陽と陽明の五脈が陽白で会い、頭を循って耳に入り、本神に至って止まる」『奇経八脈考』。

三、経別 『霊枢・経別』

足太陽の正 :「背骨から出て、うなじに上って出、再び太陽に属す」。足少陰の正:「再びうなじに出、太陽に合流する」
足少陽の正 :「食道を挟んで上がり、エラと顎の中に出、顔に散らばって目系に繋がり、少陽と目の外眦で会う」。足厥陰の正:「少陽と合流し、別れて一緒に行く」
足陽明の正 :「鼻根と眼窩に出、さらに目系と繋がり、陽明と合流する」。足太陰の正:「陽明と合流し、別れて一緒に行き、上がって咽喉に結び、舌の中を貫く」
手少陽の正 :「巓で別れて缺盆に入る」。手心主の正:「少陽と完骨の下で合流する」

四、経筋 『霊枢・経筋』
足太陽の筋 :「真っ直のものは外後頭隆起で結び、頭に上り、顔に下がり・・・」「その支脈は腋窩に入り、上がって缺盆に出、上がって完骨に結ぶ」
足少陽の筋 :「耳の後ろを循り、額角に上がり、巓で交わって、顎に走って下がる」
足少陰の筋 :「上がってうなじに至り、外後頭隆起に結び、足太陽の筋と一緒になる」
手太陽の筋 :「頚を循り、太陽の前に出て走り、耳の後ろの完骨に結ぶ。その支脈は、耳の中に入る。真っ直のものは耳の上に出る」。
手陽明の筋 :「左角を上がり、頭に絡まり、右顎に下がる」

五、絡脈 『霊枢・経脈』
「督脈の別絡は、長強と呼び、背骨を挟んでうなじに上り、頭の上に散る」


六、頭部の交会穴
百会:手足の三陽経、督脈の交会穴。 風府:督脈、足の太陽、陽維脈の交会穴。
脳戸:督脈、足の太陽の交会穴。 ?門:督脈、陽維脈の交会穴。
神庭:督脈、足の太陽、足の陽明の交会穴。
頭維:足の少陽、足の陽明、陽維脈の交会穴。
頷厭:足の少陽、足の陽明の交会穴。
曲鬢、天衝、頭竅陰、完骨:足の太陽、足の少陽の交会穴。
本神、目窓、正営、承霊、脳空:足の少陽、陽維脈の交会穴。
陽白:手足の少陽、手足の陽明、陽維脈の交会穴。
頭臨泣:足の太陽、足の少陽、陽維脈の交会穴。
風池:手足の少陽、陽維脈、陽 脈の交会穴。
角孫:手足の少陽、手の陽明の交会穴。

第二節 経穴

一、頭穴の取穴基準

頭穴の取穴基準は、『霊枢・骨度』篇に「頭髪で被われた部分を顱と呼び、顱からうなじまでが一尺二寸」「耳の後ろの完骨間の幅は九寸」「うなじの髪の生え際から背骨までが二寸半」と記載されている。現在では『鍼灸甲乙経』三巻に記載されている取穴に基づいたものが多い。
(一)頭部の寸法 『霊枢・骨度』篇の「顱から項まで、一尺二寸」という記述に基づいて、現在は前髪際から後髪際までを一尺二寸と定めている。また『鍼灸甲乙経・巻三』の「頭から鼻まで一直線。髪際を一寸入り、督脈を循って風府まで逆行した八穴の二番目」で、上星から風府までを十寸とする。上星は前髪際を入ること一寸。風府は後髪際を入ること一寸である。しかし髪際の個人差は非常に大きく、年齢によって違うだけでなく、同年齢でも個人差があるので、髪際を基準とするのは不適当である。そこで頭部の基準は1.第二頚椎棘突起の上縁を?門穴とする。『鍼灸甲乙経』の?門は「うなじの後髪際の凹みの中」、『銅人?穴図経』は「うなじの中央で、髪際を入ること5分の凹みの中」である。一般の書物では髪際を5分入ったところとしている。後髪際の個人差は特に大きく、長いものでは大椎穴付近まであるので、?門穴は第二頚椎棘突起の上縁にあるとするのが標準である。第一頚椎は環椎なので棘突起はない。うなじで上に最初に触れるのが第二頚椎棘突起である。
2.後頭骨の下縁が風府穴である。『鍼灸甲乙経』に「うなじの上で、髪際を入ること一寸。大筋の内側の凹みの中」とある。現在ではほとんどが後頭骨と第一頚椎の間としている。第一頚椎に棘突起がなく触知できないので、後頭骨の下縁に取っている。
3.外後頭隆起は取穴の主な基準である。外後頭隆起を古人は枕骨と呼んだ。『医宗金鑒』には「後山は、枕骨である。その骨の形状は様々で、品の字や、山の字、川の字をしていたり、円く尖ったり、三日月や下弦の月のような形、ひよこのような形があるが、全て枕骨である」と言い、『鍼灸甲乙経』は脳戸を「枕骨の上にあり、強間の後一寸五分」という。
4.百会は頭の最高点にあり、両耳を自然な方向につないだ線の中点、あるいは頭頂結節をつないだ線の中点にある(我々が93人を測り、両耳の自然な方向と頭頂結節の関係を調べたところ、99%で両耳の自然方向をつなぐ線は頭頂結節を通り、頭頂結節は簡単に見つかった。だから頭頂結節をつなぐ線の中点は、百会を取るのに便利である)。プレグマの後ろ三寸で、外後頭隆起の前四寸半にある。百会は常用穴で、いくつかの経外奇穴の取穴は百会を基準としている。『鍼灸甲乙経』に「百会は前頂の後一寸五分。頭頂の中央の毛の中」とある。前頂の前一寸半は?会だから、百会は?会から三寸のところに当る。
5.?会はプレグマの部分にあり、前頭部の取穴基準である。『鍼灸甲乙経』に?会は「上星の後一寸で、骨の間の凹みにある」と言っている。骨の間とは前頭骨と頭頂骨が結合した部分で、小児のまだ骨がくっついていないときは大泉門と呼ばれ、成長しても多くは凹みや痕跡がある。
6.?会から眉間までを五寸とする。上星や神庭は、これを基準とする。
(二)頭部の横幅 『鍼灸甲乙経』は「耳の後ろの完骨間の幅は九寸」とあり、これが頭部の横幅の基準となるが、実際に使われることは少ない。
神庭から頭維までは四寸半である。『鍼灸甲乙経』では、頭維は「額角髪際にあり(『銅人?穴図経』では髪際を入ったところ)、本神の両傍らを挟んで、それぞれ一寸五分のところ」とある。額角髪際も個人差が大変大きいので基準としてふさわしくない。神庭と頭維の間にある頭臨泣は瞳孔の直上である。だから二つの瞳孔の間が四寸半と考えれば、これを基準として測ることができ、これはちょうど眉間の盛り上がったところから前頭骨の顴骨突起の外縁、絲竹空に相当するところまでである(我々は93人の両瞳孔間の距離と、眉間から前頭骨顴骨突起の外縁までの距離を測り、その結果はほぼ一致した)。だから頭維穴は絲竹空穴の直上にある。(32図、33図、34図、35図)


通天 承光 五処
目窓 前頂 ?会 上星 眉衝 上星 神庭
正営 神庭 曲差 目窓
百会 頭臨泣 五処
絡却 頭維 本神 頷厭 眉衝
后頂 率谷 懸顱 頷厭 本神
承霊 天衝 陽白 頭維
強間 浮白 絲竹空 懸釐 額中 頭臨泣
脳空 懸顱 陽白 曲差
脳戸 竅陰 曲鬢 攅竹 印堂
玉枕 耳門 和
完骨 懸釐
風府
?門
風池 曲鬢
天柱

督脈 足の太陽 手の陽明 足の少陽
32図 側頭部の穴位 33図 前頭部の穴位
足 足
の膀 の 足
百会 督 太胱 太 の
脈 陽経 承霊 督 陽 少
足の少 脈 経 陽
絡却 陽胆経 経
後頂
后頂 天衝 絡却
百会 承霊
強間 浮白 角孫 通天
脳空 竅陰 顱息 前頂 正営
脳戸 玉枕 脈 承光
翳風 ?会 目窓
風府 完骨 五処 頭維
上星 臨泣
?門 天柱 本神
神庭 眉 曲
衝 差
陽白
34図 後頭部の穴位 35図 頭頂部の穴位

二、経穴
(一)督脈
1.?門:督脈と陽維脈の交会穴。
別名:?門、唖門、舌横、舌厭、舌根、厭舌、横舌、舌腫。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、後髪際の凹みの中。『銅人?穴図経』は、うなじの中央で髪際を入ること五分の凹みの中。?門は、第1、第2頚椎の間にあり、第1頚椎は棘突起がないので、第2頚椎棘突起が触れ、その上縁が?門穴。
?門は頚部にある。『頭皮鍼穴名国際標準化方案』は「外後頭隆起の下の旁線」が玉枕から天柱への透刺である。?門穴と天柱は水平なので、?門、風府、風池、天柱は頭部の経穴となる。
主治:@舌が緩んで喋れない?唖。A頭痛、頭重。B寒熱。C背骨がこわばって反り返る。振るえ、癲癇。D中風、屍厥(失神)。F衄血(不正出血)。G瘰癧(リンパ結核)、痰核(ガングリオン)。G善噫(ゲップ)や嘔吐。
『鍼灸甲乙経』:うなじのこわばり。舌が緩んで、?となって喋れない。『外台秘要』:さまざまな陽気を瀉す。熱衄、風頭痛、汗が出ず、寒熱、脊がこわばって反り返る、??(ヒキツケ)、突然仮死状態になり人事不省となる。『経験良方』:瘰癧。痰核。
2.風府:督脈と足の太陽、陽維脈との交会穴。
別名:舌本、鬼枕、鬼穴、鬼林、熱府、惺惺。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、うなじの上で髪際を入ること1寸、大筋内の凹みの中。突然口を開けばその肉は起き、閉じれば下がる。外後頭隆起下縁と第1頚椎の間に取る。
主治:@外感頭痛、寒熱、項頚がこわばって痛む。A目眩、眩暈。B咽喉が腫れて痛む。
C暴?(突然声が出なくなる)。D嘔吐。F鼻血。G黄疸。G癲狂(躁鬱病)。H中風の失語、半身不随。
『素問・骨空論』:風が外から入って人を震えさせ、汗が出て頭痛がし、身熱悪寒、大風で項頚部が痛む。『鍼灸甲乙経』:足の感覚がない。頭痛でうなじが引きつり、頚が曲げられない。目が回って息ができない、舌が引きつって喋れない。ウワゴト。休みなく喋り続け、狂ったように走り、自殺したがる。目があらぬほうを見つめる。暴?となってしゃべれず。咽喉の痛み。『千金方』:頭中百病、馬黄、黄疸。『銅人?穴図経』:目眩、鼻血。『類経図翼』:風寒感冒、嘔吐が止まらず。
3.脳戸:督脈と足の太陽との交会穴。
別名:会額、会顱、西風、迎風、仰風。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、外後頭隆起の上で、強間の後ろ一寸五分。『医宗金鑒』:風府の一寸五分上。外交頭隆起の上縁に取る。
主治:@悪寒、頭痛、頭重、頭が腫れぼったい。A風眩(目まい)。B目赤(結膜炎)、目痛、遠くが見えない。C癲(鬱病)、狂(躁状態)、癇(癲癇)、??。D?唖。F足癬(水虫)。
『鍼灸甲乙経』:痙、目眩。寒熱。頭が重くて項が痛い、目が不明、風眩、服を重ね着しても寒けがする、汗が出る、頭が重く悪風する。癲疾、骨矣、眩、狂、??、口噤、羊鳴。?で喋れない。『外台秘要』:目が赤くなって痛く見ることができない、顔が赤く腫れる、舌本からの出血。『銅人?穴図経』:眼睛が痛んで遠くが見えない、顔が赤い、目が黄色い、頭が腫れぼったい。
4.強間
別名:大羽。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、後頂の一寸五分後。百会から脳戸までを三等分し、中間の二つの経穴を、下から上に強間、後頂とする。
主治:@頭痛、うなじのこわばり、頚を回すとこわばる。A癲狂、??。B口歪。C眩暈、心煩(胸が不快)、嘔吐。D足癬。
『鍼灸甲乙経』:癲疾で狂走する、??で頭を揺らす、口が歪む。頚を回すとこわばる。『外台秘要』:針で刺すような頭痛、動かせない、うなじが抜けるようで左右に回せない。『銅人?穴図経』:頭がクラクラして目が回る、胸が不快で唾を嘔吐する。
5.後頂
別名:交衝。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、百会の一寸五分後、外後頭隆起の上。強間の取り方を見る。
主治:@頭痛、うなじのこわばり、悪風寒。A癲狂、??。B目眩、目¥¥(目がはっきり見えない)。
『鍼灸甲乙経』:風眩、目眩、頭頂痛。癲疾、??、狂走、頚項痛。『銅人?穴図経』:目¥¥、悪風寒、目眩、片頭痛。
6.百会:督脈と手足の三陽経、足の厥陰経の交会穴。
別名:三陽五会、巓上、頂山、天満、泥丸宮、維会、鬼門、天山、嶺上、三陽、五会、頂上回毛、頂上旋毛、螺紋。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、前頂の一寸五分後、頭のテッペンの渦巻きの中。凹みがあって指が入る。『神農経』:前髪際から五寸、後髪際から七寸。『医宗金鑒』:両耳の尖ったところの頂きの陥中。頭部の最高点。耳の自然な方向の直上(あるいは頭頂結節)の中点。
主治:@頭痛、風頭重、頭頂痛。A鬱病、躁病、癲癇、痙(身体の痙攣)。B中風、半身不随、失語、失神。C耳聾、耳鳴り、眩暈、鼻詰まり。D脱肛、子宮脱。Fヒキツケ、健忘、痴呆。G瘧疾(マラリア)、下痢、細菌性下痢。G脱毛。H月経の出血過多。
『鍼灸甲乙経』:頭頂痛、風頭重、目が脱けるように痛む、頚を左右に回せない。耳鳴り。『千金方』:小児の脱肛。諸風による精神異常や意識不明を治療する。突然硬直して倒れたり、風寒を嫌うものを治療する。汗が出て吐きたくなったり、硬直する。半身不随、失語や失音など、いろいろな風病(中風)を治療する。『銅人?穴図経』:風による癲癇、中風、角弓反張(身体が反り返る)、またはよく泣く、言葉がでたらめ、盛んなものは泡を吹いて胸が不快である。心臓がドキドキし健忘する。瘧疾、耳鳴り耳聾、匂いが分からない、頭痛。
7.前頂
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、?会の一寸五分後、骨の間の凹みの中。百会と?会の間に取る。
主治:@癲、狂、癇、??。小児のヒキツケ。A頭頂痛、悪風寒(風寒を嫌う)。B中風。C眩暈。D不眠、健忘。F鼻水が出る。
『鍼灸甲乙経』:風眩、目瞑、悪風寒、顔が赤く腫れる。『銅人?穴図経』:頭風、目まい、小児のヒキツケ。風による癲癇、??。鼻水が多く、頭頂が腫れぼったく痛む。
8.?会
別名:鬼門、頂門、?門、?上。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、上星の一寸後、骨の間の凹みの中。冠状縫合と矢状縫合の交点、大泉門だった部分。
主治:@頭痛、頚痛、悪風寒、頭皮の腫れ。A癲、狂、癇、急性慢性のヒキツケ、嗜眠。B鼻詰まり、鼻のデキモノ、鼻痔(鼻茸)、衄血、顔の腫れ。C眩暈。D中風、風 ?(運動麻痺)、振るえ。
『鍼灸甲乙経』:頭痛で顔が青い。癲疾で泡を吐く、しばらく硬直して倒れ、風寒を嫌い、顔が赤く腫れる。痙。『千金方』:風頭眩。諸風邪による鬼病、癲で四肢が重い。『類経図翼』:うなじの痛み、飲み過ぎで頭皮が腫れぼったい、風癇、鼻水、頭風でフケができる、嗜眠、目まいがして顔が腫れ、鼻が詰まって匂いが分からない。『景岳全書』:鼻癰、鼻痔。『神農経』:子供の急性慢性の驚風。
9.上星
別名:鬼堂、神堂、名堂。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、顱の直上で鼻の中央、髪際を一寸入った凹みの中で豆が入る。髪際と?会の間に取る。髪際が変わっていたりはっきりしないものは、眉間から?会までを五寸として計算する。
主治:@頭痛、熱病、瘧(瘧疾)。A癲、狂、癇。B目が痛くて遠くが見えず、鼻血、鼻中息肉(鼻茸)。C眩暈。D中風。
『鍼灸甲乙経』:熱病。瘧疾。風眩で吐き気がする、顔が青い、癲疾。目が痛くて見ることができない。鼻血。『千金方』:鼻茸。百邪による病。
10.神庭:督脈、足の太陽、足の陽明の交会穴。
別名:髪際。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、鼻から一直線の髪の際。『外台秘要』:鼻から一直線の
髪の際五分。
主治:@頭痛、寒熱。A癲、狂、癇、驚悸(怒ったり驚くと心臓がドキドキする)、不眠、痴呆。B中風、半身不随、口噤不言(口が開かず喋れない)、涎が自然に流れる。C目の腫れ、目のかげり、涙が出る、目無所見(目が見えない)。D鼻血、鼻水。F心窩部が膨れる、胸悶(胸の不快感)、胸痺、喘喝(呼吸切迫)。G腰背痛。G陰嚢が乾いて痒い。
『鍼灸甲乙経』:頭脳中寒、鼻血、涙が出ず。寒熱頭痛、喘喝、目が見えず。風眩で吐き気がする、煩満。瘧疾。癲疾で泡を吐く。『千金方』:久風、卒風、緩急諸風、卒発、動いているのが分からない、あるいは心窩部や腹の脹満感、または半身不随、または口噤不言、涎が出る、目が塞がり耳聾、または全身冷逆、または煩悶慌惚、喜怒無常、あるいは唇が緩んで声が出ない、声?、角弓反張、卒癲。『銅人?穴図経』:鼻水が止まらず、涙が出る、驚悸して安らかに眠れない。『儒門事親』:目の腫れ、目の陰り、また頭痛も治療する。腰背のこわばり、陰嚢が乾いて痒い。
(二)足の陽明胃経
11.頭維:足の陽明、足の少陽、陽維脈との交会穴。
別名:?大。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、額角髪際にあり、本神を挟んで両側それぞれ一寸五分。『鍼灸大成』:神庭の傍ら四寸五分。『経穴概要』:咀嚼するとき動くところ。絲竹空の直上で、神庭と水平のところ。
主治:@片頭痛。A目痛、はっきり見えない、眼瞼がピクピク動く。B咳き込んでむせ、胸が一杯になって嘔吐する。C脱毛。D中風、失語、難言。
『鍼灸甲乙経』:寒熱、破れるような頭痛、眼が抜けるように痛む、咳き込んでゼイゼイする、嘔吐して汗が流れる、難言(しゃべりにくい)。『銅人?穴図経』:片頭痛、はっきり見えない、微風、眼瞼がピクピク動く、風で涙が出る。
(三)足の太陽膀胱経
12.眉衝
別名:小竹。
位置と取穴:『鍼灸大成』は、眉頭の直上で、神庭と曲差の間。
主治:古代では、この経穴に対する記載は少ない。現在の頭鍼では上焦病の治療に使う。また目まいや脳の病気にも使う。
『鍼灸大成』:五種類の癲癇、頭痛、鼻詰まり。
13.曲差
別名:鼻衝
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、神庭の両側を挟んで一寸五分。髪際にある。神庭から頭維まで四寸半あり、この穴は内側から1/3の交点のところにある。
主治:@頭痛、身熱があり汗が出ない。A目が不明、はっきり見えない。B鼻詰まり、鼻血、鼻瘡(鼻のデキモノ)。C頚の腫れ。D喘息。F中風と風邪。
『鍼灸甲乙経』:頭痛、身熱、鼻詰まり、喘息で呼吸困難、煩満して汗が出ず。『千金方』:久風、卒風、緩急諸風。『銅人?穴図経』:頭項痛がある身体の煩熱、目がはっきり見えない。『鍼灸大成』:鼻詰まり、鼻血、鼻のデキモノ。うなじの腫れ。
14.五処
別名:巨処。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、督脈の傍らで、上星から一寸半離れたところ。上星は髪際を一寸入ったところで、曲差の上五分に取る。
主治:@痙(硬直)、??、癲、狂、癇。A頭風、頭重、頭熱、寒熱。目眩(目の前が暗い)、目不明。
『鍼灸甲乙経』:痙、背骨が折れるように反り返る、??、癲疾、頭重、寒熱。『千金方』:頭熱、時々クシャミが出て止まらず。『銅人?穴図経』:目不明、頭風目眩、??、目が上を向いて人が判別できない。
15.承光
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、五処の二寸後ろ。中線と一寸半離れたところで、髪際を二寸半入ったところ。
主治:@頭痛、熱病で汗が出ない。A鼻詰まりや鼻水。B青盲(緑内障)、遠くが見えない、目生白膜(白内障)。C中風、風眩。D口の歪み。F嘔吐、心煩(胸が不快である)。
『鍼灸甲乙経』:熱病で汗が出ず、苦い液を吐いて胸焼けする。青盲、遠くが見えない。『銅人?穴図経』:鼻が塞がって匂いが分からない、口の歪み、水鼻が多い、風眩頭痛、嘔吐心煩、目生白膜。
16.通天
別名:天血、天旧、天伯。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、承光の一寸五分後ろ。
主治:@頭痛、頭重、顔の腫れ。A鼻詰まり、鼻血、鼻痔(鼻茸)。B頚やうなじのこわばり。C中風、偏風(半身不随)、口の歪み。D癲狂(躁鬱病)。F?気(リンパ結核)。G眩暈。
『鍼灸甲乙経』:頭とうなじの痛みが激しい。しばらく硬直して倒れる、鼻が詰まって鼻血、ゼイゼイ喘いで息ができず。『千金方』:?気、顔の腫れ。『銅人?穴図経』頚を回せない、鼻詰まり、偏風、口の歪み、鼻水が出る。『鍼灸大成』:鼻痔。
17.絡却
別名:強陽、脳蓋、絡?。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、通天の一寸三分後ろ。
主治:@癲、狂、癇、??、恍惚として楽しくない。A頭眩、耳鳴り。B青風内障(緑内障)、目無所見、妄見(幻覚)。
『鍼灸甲乙経』:癲疾で硬直して倒れる、妄見、恍惚として楽しまず、狂ったように走る、??。『銅人?穴図経』:青風内障、目無所見、頭眩耳鳴り。
18.玉枕
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、絡却の七分後ろ、脳戸を挟んで傍ら一寸三分、後頭骨で肉が起こるところ。天柱の直上に当り、脳戸と水平に取る。
主治:@頭痛、頭重、うなじのこわばった痛み、悪風(風を嫌う)、寒熱。A目が痛くて見ることができない。B癲、狂、癇。C眩暈、嘔吐。D鼻詰まり。
『鍼灸甲乙経』:頭項痛、悪風、汗が出ない、寒熱の激しい厥証、嘔吐、目系が額を引っ張って痛む。頭重項痛。寒熱骨痛。頭眩目痛、頭半寒。『外台秘要』:目が痛くてみることができない、頚が抜けるように痛む、頚を左右に回せない、泡を吹かない癲疾、互引。『類経図翼』:鼻詰まりで匂いが分からない。
19.天柱
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、後頭部を挟んだ髪際で、大筋の外廉(外縁)の凹みの中。?門と水平で、僧帽筋の外縁。
主治:@頭痛、頭重、熱病で汗が出ない。A頚、うなじ、背、腿の痛み。B癲、狂、癇。暴卒(突然腹が黒くなって、膨れる)。小児の驚癇(癲癇やひきつけ)。C目痛、目がぼんやりして赤くなって痛い、涙が出る。D咽喉が腫れて喋りにくい。F鼻詰まり。G諸風。
『鍼灸甲乙経』:眩、頭重や頭痛、目が脱けるように痛む、うなじが抜けるように痛む、幻覚を見ておかしくなる、目が上を向く、うなじが硬直して回せない、突然の痙攣、足で身体を支えられない、折れるように痛む。癇眩。癲疾互引。喉が腫れて喋れない。目がぼんやりして赤くなって痛み、涙が流れる。熱病で汗が出ず。『千金方』:久風、卒風、緩急諸風。匂いが分からない。肩が折れるように痛い。風眩によって暴れ、喋り続ける。『外台秘要』:小児の疳の虫やヒキツケ。
(四)足の少陽胆経
20.角孫:手足の少陽と、手の陽明の交会穴。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、耳郭の中間の上で、口を開けると凹むところ。『経穴纂要』:耳翼を前に折ったとき、耳角の処に取穴する。
主治:片頭痛、耳病および歯の疾患。
『霊枢・寒熱篇』:上虫歯。『鍼灸甲乙経』:歯槽が腫れて噛めず。『類経図翼』:目生翳膜、唇の乾燥、頭項のこわばり。耳歯の病。
21.頷厭:手足の少陽と足の陽明の交会穴。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、こめかみの角の曲がったところで、眼窩の上縁。『経穴纂要』:この経穴を求めたければ、まず頭維と曲鬢を定め、そのあと紐を頭維と曲鬢の間に張って切った後、それを三等分して上から頷厭、懸顱、懸釐と取る。
主治:@頭痛身熱、片頭痛、目が外側を向いて引きつる。A眩暈。B目がはっきり見えない。C耳鳴り。D小児の驚癇(癲癇やひきつけ)。Fうなじ痛、手首痛、歴節痛(関節の痛み)。G失語。
『鍼灸甲乙経』:クシャミ、頭痛身熱、目がくらんで見えず。片頭痛、目が外に引きつる。『銅人?穴図経』:頭風眩、眼がよく見えない、耳鳴り、頚項痛。『鍼灸聚英』:驚癇。歴節風で汗が出る。
22.懸顱
別名:髄空。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、こめかみの角を曲がったところで、コメカミの中に取る。取穴方は頷厭を参照。
主治:@片頭痛で目が外眦に引っ張られる、頭痛。A熱病で苦しいが汗が出ない。B歯痛、?(鼻水が出る)、目昏(はっきり見えない)、瞑目(目を閉じたがる)、顔が赤くなって腫れる。C眩暈。D中風、失語。
『鍼灸甲乙経』:熱病で頭痛して身体が重い、目が外眦に引きつる、胸苦しくても汗が出ない、顎や歯が引きつける、顔の皮膚が痛む。『銅人?穴図経』:歯痛。『鍼灸聚英』:片頭痛、身熱があり、鼻から膿のような汁が出たと思ったら鼻詰まりする。はっきり見えず目を閉じたがる。
23.懸釐:手足の少陽と足の陽明の交会穴。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、こめかみの角を曲がったところで、コメカミの下縁に取る。取穴法は頷厭を参照する。
主治:@熱病。A片頭痛、目の鋭眦痛(外眦痛)。B歯痛。C癲疾。D眩暈、耳鳴り。F失語。
『鍼灸甲乙経』:熱病の片頭痛、目が外眦に引っ張られる。『千金方』:顔の皮膚が赤く腫れる。癲疾互引、癲癇で羊のような声を上げる。熱が不快で汗が出ない。『外台秘要』:耳鳴りがして、クシャミする。
24.曲鬢:足の太陽と足の少陽の交会穴。
別名:曲髪。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、耳の上で髪際を入ったところで、凹みのあるものもある。口を開けると凹む。耳の前でモミアゲの後縁直上、角孫と水平のところに取る。
主治:@頭痛、うなじのこわばり。A歯の痛み、歯槽の痛み、口噤で開かず、口の歪み。
B突然声が出なくなった。C中風の半身不随。D眩暈、失語。
『鍼灸甲乙経』:頚や顎が腫れぼったく、歯まで痛くなり、口噤して開かず、引きつって喋れない。『千金方』:突然声が出なくなる、虫歯。『景岳全書』:一切の歯の痛み。『鍼灸大成』:頚項が回せない、脳の両コメカミ痛を巓風とする。
25.率谷:足の太陽、足の少陽の交会穴。
別名:蟀谷、耳角、率角。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、耳の上で髪際を一寸五分入ったところ。『鍼灸大成』では、咀嚼して取穴する。耳尖の直上で、側頭筋の上縁に取る。
主治:@頭痛、片頭痛。A酔酒風(目まいがして吐く)。B膈胃の寒痰。C小児の急性、慢性の驚風。D目眩、胸がムカついて嘔吐する、失語。
『鍼灸甲乙経』:用酒風熱、両角目眩痛、食欲がない、胸がムカついて嘔吐する。『銅人?穴図経』:膈胃の寒痰。『神農経』:小児の急性慢性の驚風。
26.天衝
別名:天衢。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、耳の上角の前三分にある。『十四経発揮』は、耳の後ろで髪際の上二寸。耳根の後で、髪際の直上で率谷と水平な部位。
主治:@癲疾風痙(癲癇で痙攣する)。A驚悸。B頭痛。?気。
『鍼灸甲乙経』:癲疾(癲癇)で泡を吹かず。『千金方』:?。頭痛、癲狂互引、驚悸を繰り返す。『銅人?穴図経』:頭風で歯茎が腫れる。『鍼灸大成』:癲疾風痙。
27.浮白:足の少陽と足の太陽の交会穴。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、耳の後ろで髪際を一寸入ったところ。天衝から完骨までに二穴あり、3つに折れた上を浮白、下を竅陰とする。
主治:@頭痛、寒熱。A咽喉の痺れ。B歯痛、目痛、耳聾、耳鳴り。C肩背が挙がらない、足が緩んで動かない。D胸が不快で咳き込んだり喘息となる。F頚やうなじのデキモノや?気。
『鍼灸甲乙経』:虫歯の腫れ。『千金方』:歯が痛んで喋れない、足が緩んで動かない。『銅人?穴図経』:寒熱、咽喉の痛み、咳き込んで泡のような痰が出る、胸が不快でゼイゼイ喘ぐ、耳がザワザワして聞こえない、項頚部にオデキや 気ができた、肩背が挙がらない。『類経図翼』:目痛、頭風痛。
28.頭竅陰:足の少陽と足の太陽の交会穴。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、完骨の上で、後頭骨の下。浮白の取穴法を参照。
主治:@頭痛、うなじ痛、四肢のコムラガエリ。A目痛、耳聾、耳鳴り。B咽喉の痛み、舌のこわばり。C脇の痛みと咳嗽、口が苦い。D癰疽やライ病。
『鍼灸甲乙経』:頭痛が首まで及ぶ。癰疽。『千金方』:鼻の中のデキモノ、歯@。錐で刺すような頭痛。『銅人?穴図経』:うなじが痛んで目まで及ぶ。『鍼灸聚英』:四肢のコムラガエリ、目が痛く耳鳴りがして聞こえない、舌本から出血する、骨労、手足が煩熱し汗が出ない、舌がこわばる、脇痛で咳き込む、咽喉の痛み、口の中が苦い。
29.完骨。足の少陽と太陽の交会穴。
別名:枕骨。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、耳の後ろで髪際を四分入ったところ。乳様突起の後下縁に取る。
主治:@頭痛、首やうなじのこわばった痛み。A口のゆがみ、歯痛、口噤、耳の後ろの痛み、頬の疾患、頭面の腫れ。B足が痛くて動かない、歩けない。C癲狂、瘧疾。
『鍼灸甲乙経』:瘧疾。小便が赤黄色。頭風で耳の後ろが痛む、煩心が足に及び歩けない。口が曲がる、頭項が振るえる、牙関緊急。うなじが腫れて首を前後できない。頬の腫れが耳まで及ぶ。咽喉の痺れ。癲癇で硬直して倒れる、狂いやすい。『千金方』:頭面の気による浮腫。
30.本神:足の少陽と陽維脈の交会穴。
別名:直耳。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、曲差の両側それぞれ一寸五分、髪際にあり、神庭の傍ら三寸に取る。
主治:@頭痛、項頚部のこわばり痛。A目眩。B癲疾、小児の驚癇。C脇肋痛。D偏風(半身不随)。F崩漏(不正出血)、遺尿(知らず知らずのうちにオシッコが出る)。
『鍼灸甲乙経』:頭痛、目眩、項頚部のこわばった痛み、胸脇がつって、身体を横に傾けられない。癲疾。小児の驚癇。『鍼灸聚英』:偏風。
31.陽白:手足の陽明と手足の少陽、陽維脈の交会穴。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、眉毛の上一寸、瞳子?の直上。
主治:@頭痛、うなじのこわばり、発熱悪寒。A目痛、目が赤くなって腫れる、鳥目、遠視。
『鍼灸甲乙経』:頭目瞳子痛で、見ることができない、頚やうなじが引きつってこわばり、左右に回せない。『千金方』:遠視でよく見えない、暗い夜には目が見えない。『銅人?穴図経』:黄色い目ヤニが出る、背中に悪寒がして、服を着込んでも暖まらない。
32.頭臨泣:足の太陽、足の少陽、陽維脈の交会穴。
別名:臨泣。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、目眦の直上で、髪際を五分入った凹みの中。頭維と神庭の間に取る。
主治:@眉頭痛。A悪寒、身体の痛み。B目眩。C鼻詰まり。D目痛、目翳(目の陰り)、涙が出る。F瘧疾。G中風。G驚癇。H胃腸病。
『鍼灸甲乙経』:頬が冷たくて見ることができない、口から唾が出ない、両眉頭痛。『千金方』:瘧疾。夕方になると発作が起こり、身体が痛み、寒けがして振るえる。『銅人?穴図経』:中風で意識不明、目眩、鼻詰まり、目に白い陰りができる、涙が多い。『鍼灸聚英』:頭痛。驚癇で白眼を剥く。ライ病。
33.目窓:足の少陽と陽維脈の交会穴。
別名:至栄、至営。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、臨泣の一寸後。瞳孔の直上で、髪際を一寸半入ったところ。
主治:@頭痛、頭面の浮腫。A目瞑青盲(緑内障で見えず)、目が赤くなって痛む、目翳(目に霞がかかったようになる)、目眦が赤くなって痛む。B眩暈。C虫歯で腫れる。D熱病で汗が出ず。F中風。
『鍼灸甲乙経』:目瞑、青盲で見えず、遠くが見えず。目の中に白い皮膚ができて瞳孔を覆う。上の歯の歯槽が腫れる。頭痛。『銅人?穴図経』:頭面の浮腫、目眦が赤くなって痛む、突然頭がクラクラする。『鍼灸聚英』:頭痛寒熱、汗が出ない寒熱。
34.正営:足の少陽と陽維脈の交会穴。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、目窓の一寸後。
主治:@頭痛、悪風寒。A歯痛で口角が引きつる。B目眩。C中風。
『鍼灸甲乙経』上歯の虫歯の痛み、悪風寒。『銅人?穴図経』:唇や口角のこわばり。頭痛。『鍼灸聚英』:目眩瞑。
35.承霊:足の少陽と陽維脈の交会穴。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、正営の一寸五分後ろ。正中線と頭頂結節の間で、髪際を四寸入ったところ。
主治:@頭痛、悪寒。A鼻詰まり、鼻血。B目痛。C中風。
『鍼灸甲乙経』:脳風頭痛、風寒を嫌う、鼻血や鼻詰まり、ゼイゼイ喘ぐ呼吸困難。
36.脳空:足の少陽と陽維脈の交会穴。
別名:顳?。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、承霊の一寸五分後。玉枕を挟む骨の下の凹みの中。『素問・気府論』の注では、外後頭隆起の後ろを挟んで、後頭骨の上。風池の直上で、脳戸と水平の位置。
主治:@頭痛、片頭痛、項頚のこわばり。A眩暈。B目痛。C鼻の痛み。鼻管疽(鼻の中のデキモノ)。D労疾羸痩(過労による痩消)、心悸。F癲疾。
『鍼灸甲乙経』:頭痛身熱、両顎が引きつる。脳風目瞑、頭痛、風眩目痛。癲疾大痩、鼻管疽、ライ病。『銅人?穴図経』:目瞑心悸し癲風となる。項頚がこわばって回せない。『扁鵲心書』:片頭痛で目が見えなくなりそう。『鍼灸聚英』:鼻のデキモノ。
37.風池:手足の少陽、陽維脈、陽?脈との交会穴。
別名:熱府。
位置と取穴:『鍼灸甲乙経』は、顳?にあり、後髪際の凹みの中。『類経図翼』:耳の後ろの凹み、後髪際の大筋の外廉。後頭骨の下縁で胸鎖乳突筋と僧帽筋の間に取る。
主治:@熱病、温病。A腰痛、頚痛、うなじのこわばり。B目が赤くなって痛む、目ヤニが多く出る、目の内眦が赤くなって痛む。C鼻血、耳が塞がったような感じ。D癲、狂、癇。F眩暈、中風。G瘧疾、?気。
『鍼灸甲乙経』:頚の痛み、うなじが痛くて回せず、目から涙が出る、目ヤニが多い、鼻血、目の内眦が赤く痛む、気厥、耳目が不明。『千金方』:諸?。中風発熱による頭痛。『銅人?穴図経』:ガタガタするような寒熱、温病で汗が出ない、目眩して頭痛がする、瘧疾。『類経図翼』:中風で喋れない、牙関緊閉、口で飲むことができない。

三、経外奇穴
1.四神聡
位置と取穴:百会の前後、左右一寸ずつ。
主治:頭痛、眩暈、不眠、健忘、癲、狂、癇、中風、半身不随、耳鳴り。
2.前(後)神聡
位置と取穴:百会の前(後)一寸。
主治:頭痛、眩暈、不眠、健忘、癲癇、中風。
3.大門
位置と取穴:外後頭隆起の一寸上。
主治:腿が萎縮して不随となる。
4.天聡
位置と取穴:前髪際を二寸七分入ったところ。一説には鼻から髪際までを紐で量り、それを二つに切って一つを取り、髪際から上に量った紐の端。
主治:傷寒。
5.額上
位置と取穴:前髪際を一寸二分入ったところ。
主治:小児のヒキツケ。
6.督脈
位置と取穴:前髪際を二寸入ったところ(?会穴)。
主治:小児のヒキツケ。小児の身体の硬直、角弓反張。
7.?中
位置と取穴:前髪際を一寸五分入ったところ。
主治:小児の突然のヒキツケ。
8.天庭
位置と取穴:前髪際を五分入ったところ(神庭穴)。
主治:頭部のデキモノ。
9.前髪際
位置と取穴:前髪際の正中。
主治:頭風、眩暈、長く治らない痛み。
10.額中
位置と取穴:印堂の上一目寸(目頭から目尻までを一寸としたものが一目寸)。
主治:眩暈、嘔吐、顔の痛み、口のゆがみ。
11.目飛
位置と取穴:前髪際を一分入ったところ。
主治:鼻血、煩痛、心悸、??、鼻血、涙が出る。
12.印堂
位置と取穴:眉間。
主治:頭重、頭痛、鼻の疾患、小児のヒキツケ、産後の目まい、眼疾患、眩暈。
13.明堂
位置と取穴:?門と風府の間。
主治:頭項痛、衄血、インフルエンザ、癲狂。
14.寅門
位置と取穴:鼻から髪際までを紐で量り、それを三つに切って、一つを前髪際から上に伸ばした端。
主治:馬黄、黄胆。
15.顳?
位置と取穴:眉梢と外眦の間。
主治:温病の季節の邪、頭痛と目まい、口の歪み、一切の眼疾患。
16.太陽
位置と取穴:眉梢と外眼角の間の一寸後。
主治:片頭痛、全ての眼疾患。
17.側髪際
位置と取穴:目尻の直上で、髪際を入ったところ。
主治:頭眩、目眩、片頭痛による激痛、目がぼんやりする。
18.挿花
位置と取穴:額角直上で、髪際を一寸五分入ったところ。
主治:頭面のオデキ、片頭痛。
19.目明
位置と取穴:瞳孔の直上で、髪際を入ったところ。
主治:太陽とつながる頭痛、目が赤くなってはっきり見えない。
20.夾上星
位置と取穴:上星の三寸傍ら。
主治:鼻茸。
21.当陽
位置と取穴:瞳孔直上で髪際を一寸入ったところ。
主治:頭痛眩暈、目赤腫痛、感冒の鼻詰まり、卒倒して人事不省となる。
22.耳上
位置と取穴:耳の上の髪際。
主治:?気。
23.陽維
位置と取穴:耳の後ろの付け根の中央。
主治:耳鳴り、耳聾。
24.翳明
位置と取穴:翳風の一寸後。
主治:眼疾患、耳聾、不眠。
25.安眠
位置と取穴:翳風穴と風池穴の間。
主治:不眠、眩暈、頭痛、心悸、精神病。
26.鳳岩
位置と取穴:耳垂と?門の中点の五分前。
主治:癲狂。

第三章 いくつかの頭鍼の紹介
ジャァオ
第一節 焦氏の頭鍼

これは山西省の焦順髪同志が1971年に初めて提唱した、大脳皮質機能の区分を理論的根拠とし、刺鍼を使っていろいろな疾患を治療するもので、脳疾患による病気を中心に治療する。

一、刺激区の場所と治療効果
刺激区を正確に取穴するには、まず二つの基準線を決めなければならない。前後正中線:両眉の間から外後頭隆下縁までの頭部正中線。眉枕線:眉の上縁の中点から外後頭隆起先端までの頭の側面をつなぐ線。(36図)

前後正中線







眉上縁の中点 眉枕線
眉間



外後頭隆起



36図 焦氏の頭鍼基準線

(一)運動区
位置:上点は、前後正中線の中点を後ろに5mm移動させたところ。下点は、眉枕線と鬢角髪際(モミアゲ)前縁が交わるところ。以上の上下の二つの点をつないだものが運動区である。運動区の上1/5が下肢や体幹の運動区。中間の2/5が上肢の運動区。下2/5が顔 面の運動区で、言語T区とも呼ぶ。
主治:運動区の上1/5は、対側の下肢と体幹の運動麻痺を治療できる。運動区の中間2/5は、対側の上肢の運動麻痺を治療できる。運動区の下2/5は、対側の中枢性の顔面神経麻 痺や運動性の失語、涎が流れる、発声障害などを治療できる。(37図)
(二)感覚区
位置:運動区を後ろに1.5cm平行移動したところで、上1/5が下肢、頭、体幹の感覚区。中2/5が上肢の感覚区。下2/5が顔の感覚区。
主治:感覚区の上1/5が対側の腰腿痛、知覚麻痺、知覚異常、後頭部や項頚部の疼痛や頭鳴りの治療。感覚区の中2/5は、対側の上肢の疼痛、知覚麻痺、知覚異常の治療。感覚 区の下2/5は、対側の顔面部の知覚麻痺、片頭痛、顎関節炎などを治療する。
感覚区は内臓区(胸区、胃区、生殖区)と組み合わせて、外科手術のときの頭鍼麻酔ができる。(38図)

舞踏震顫控制区 運動区
前後正中線の中点 ↑ →感覚区
↓ 後ろに5mm移動さ
せると運動区上点
運用区
言語二区
眉枕線と鬢角 暈聴区
(モミアゲ) 言語三区
前縁との交点






37図 運動区の部位 38図 側面刺激区

(三)舞踏震顫控制区
位置:運動区を前に1.5cm移動させた平行線。
主治:舞踏病、震顫麻痺症候群。(一側の病変ならば対側、両側に病変があれば両側に刺鍼する)
(四)暈聴区
位置:耳尖の直上1.5cmのところから、前と後ろに向う各2cmの水平線。
主治:耳鳴り、聴力減退、眩暈などの症状。
(五)言語二区
位置:頭頂結節の後下方2cmのところから、前後正中線と平行に、下に向けて引いた3cmの長さの直線。
主治:命名性失語症。
(六)言語三区
位置:暈聴区の中点から、後ろに向けて引いた4cmの水平線。
主治:知覚性失語。
(七)運用区
位置:頭頂結節を起点とする垂線を引き、それと40度の角度で前後に線を引く。全部3cmの長さ。
主治:失行症。
(八)足運感区
位置:前後正中線の中点から傍ら1cmずつのところで、後ろに向けて3cm水平線。
主治:対側下肢の疼痛、知覚麻痺、運動麻痺、急性の腰の捻挫、皮質性の多尿、夜尿、子宮下垂など。(39図)
(九)視区
位置:外後頭隆起の水平線上で、外後頭隆起の外側1cmのところから上に向けて前後正中線と平行に引いた4cmの直線。
主治:皮質性の視力障害。(40図)





足運感区

運動区上点
言語二区


足運感区


視区

感覚区上点
平衡区






39図 頭頂の刺激区 40図 後面の刺激区

(十)平衡区
位置:外後頭隆起の水平線上で、外後頭隆起の外側3.5cmから下に向けて引いた、前後正中線と平行の4cmの直線。
主治:小脳疾患によって起こる平衡機能障害。
(十一)胃区
位置:瞳孔直上の髪際を起点とし、上に向けて引いた前後正中線と平行な2cmの直線。
主治:胃痛や腹部の不快感。(41図)
(十二)胸腔区
位置:胃区と前後正中線の間で、髪際の上下に向けて、各2cmの長さに引いた直線。
主治:気管支喘息、胸部の不快感。
(十三)生殖区
位置:額角から上に向けて引いた、前後正中線と平行な2cmの直線。
主治:機能性の子宮出血。足運区を組み合わせて子宮下垂の治療をする。
(十四)血管舒縮区
位置:舞踏震顫控制区を前に1.5cm移動させた平行線。
主治:皮質性の浮腫、高血圧。

二、操作方法
特徴に基づいて刺激区を決め、座位か臥位にしたあと、局部を消毒し、26〜28号の1.5〜2.5寸ステンレス毫鍼を使って、鍼体と頭皮を30度前後の角度で帽状腱膜下に刺入し、その刺激区の必要な長さに刺入する。上下操作はしない。捻転するときは人差指の橈側面と親指の掌側面で鍼柄を挟み、人差指の関節を続けざまに屈伸させ、鍼体を左右に旋捻する。一回に2〜3回転させ、一分間に200回転程度の捻転が必要である。この捻鍼を2〜3分続けた後、15分置鍼する。捻鍼時や置鍼の間は、患者や家族のものに動かない肢体を動かすように言って、患肢の機能訓練をおこなう。そのあとも同じような方法で二回捻転したあと抜鍼し、綿花で鍼孔を圧して出血しないようにする。半身不随の患者では一日1回か一日置きに1回治療し、10〜15回を1クールとして、各クール間は1〜3日休憩した後、さらに治療を続ける。我々の最近の研究では、中風による半身不随を回復させるには、一日2回刺鍼をしたほうが一日1回刺鍼するより効果が優れている。
捻転法だけでなく、現在は提挿操作も使われて、優れた効果を上げている。
ファン
第二節 方氏の頭皮鍼

『頭皮鍼』という書物の記載によれば、方雲鵬老先生が1958年に承霊穴を使って感冒を治療したところ、腰痛もよくなった。1970年に道を歩いていて不注意だったため、滑って転んで右側の尾 骨の右側を打ち、次の日に痛みがひどくなると同時に、右側の人字縫合に圧痛が現れた。そこで頭部の圧痛点に刺鍼すると、頭部の痛みはすぐになくなり、尾?骨の傷もかなり軽くなった。それからしばらくして一人の人民公社社員が、大腿内側を犁で傷付け、長さ2cmの筋層にまで達する傷を負った。そのため激しい痛みとともにショック状態となったので、傷に包帯をすると同時に、人字縫合の外側先端にも二本ほど刺鍼した。すると患者はすぐに覚醒し、痛みも軽くなったので一人で歩いて帰った。これにヒントを得て、長期にわたって模索と多くの臨床実践を繰り返し、病気が起こると頭皮の対応する部位に反応点が現れ、これらの反応点を使って疾病を治療できると主張した。その反応点の分布には一定の法則性があり、全部で7つの刺激区と21個の穴位があるとした。(42.43.44.45.46図)


運動(倒象) 頚部 上背
下部 上焦 頭部 書写 下背
書写 中焦 肩部 下部 下焦 上腰
総運(伏象) 下焦 運平 下腰
上焦 中焦 中部
総感(伏臓) 下焦 腕部 中焦 記憶 上臀
思維 中部 思維 上部
感覚 手部 上焦 股間 下臀
上部 運平 説話 膝部
記憶 聴覚
嗅味 聴覚 足部
説話 信号 嗅味 信号
視覚 視覚
平衡 平衡
呼循 呼循


42図 方氏の頭皮鍼 側面図(一) 43図 方氏の頭皮鍼 側面図(二)

頚 | 下焦
肩 |
頭 肘 | 感 中焦
| 覚
下焦 腕 | 運平 (倒 上焦
上焦 中焦 | 記憶 臓)
手 |
思維 | 信号

| 視覚

| 平衡

| 呼循


44図 方氏の頭皮鍼 前面図 | 45図 方氏の頭皮鍼 後面図

一、刺激区と主治
(一)伏象穴区(総運動区、略して総運)
1.部位と命名:頭蓋を覆う軟組織内にあり、前頭骨、後頭骨、頭頂骨の境界線に沿ったところで、頭蓋骨縫合線の両側に対称的に分布している。この穴区内には、全身の各部
と対応した刺激点が規則正しく配列されてお
り、これらの刺激点をつなぎ合わせると冠状
縫合と矢状縫合の上に、あたかも一人の人間
がうつ伏したように浮かび上がる。
(倒象) 2.位置:冠状縫合は左右の上肢に相当す
運動 る。矢状縫合は体幹に相当する。人字縫合は
書写 上部 左右の下肢に相当する。プレグマ(冠状縫合
中部 と矢状縫合の接点)は頚椎と胸椎の境界点に
下部 当り、それより前は頭頚部である。人字縫合
上焦 の先端は尾 骨の先端部に相当する。
中焦 3.作用と効能:伏象は「総中枢」の重要
下焦 (倒臓) な中心部分の一つで、「総運動中枢」とか「総
感覚 経絡中枢」とも呼ばれている。これは人体の
神経の働きが集中している反応区で、全身の
運平 運動神経機能をコントロールしている。もし
記憶 人体のどこかに異常が起これば、伏象中枢の
視覚 相応部分にも異常反応が起きている。言い換
えれば伏象のどこかに異常な変化が起こって
46図 方氏の頭皮鍼の頭頂部図 いれば、それがコントロールしている人体部
分にも反応が現れている。だから頭部の伏象
穴区に刺鍼することによって、全身のそれと対応する部分の疾患(同側)を治療することができる。これは神経系統、血管系統、運動系統の治療効果において優れている。
伏象は人体の経絡で、機能と連絡している「陽中枢」である。それは全身の陽経を管理しているので、陽経の府とも呼ばれている。それは全身の経気の活動を管理調節することで気血の運行を正常に保ち、全身各器官の働きと活動を維持して正常に機能させる。だから伏象や伏臟総経絡中枢に刺鍼すれば、中枢の管理下にある陰陽を調和させたり、気血を流通させ、人体の生理機能を調節して疾病を治療できる。
4.主治:神経系統、血管系統、運動系統の疾病を治療できる。例えば神経性の頭痛、片頭痛、夢ばかり見る、耳鳴り、耳聾、三叉神経痛、肋間神経痛、坐骨神経痛、末梢神経炎、脳炎の後遺症、脳震蕩、神経衰弱、ヒステリー、癲癇、失語症、自律神経疾患、脳血管障害(脳出血や脳梗塞による半身不随)、高血圧、低血圧、冠状動脈硬化、不整脈、脈管炎、先端疼痛性紅斑、貧血、対麻痺、急性慢性のギックリ腰、慢性腰痛、リューマチ性の関節炎、手術の後遺症、椎間板ヘルニア、小児麻痺、寝違い、歯痛、腰背痛、尿貯溜、大小便の失禁、ガングリオン、乳腺炎や目まいなどに効果がある。
(二)伏臟穴区(総感覚中枢、略して総感)
1.部位と命名:額の正中線から、それぞれ左右両側の額角に至るところである。この場所は全身各部分の特異な刺激点で、両側の各部分は人体を正中線で分けた左半身と右半身の内臓や皮膚の縮図となっている。額の正中に向かっているほうが頭で、額角が足になっており、ちょうど人間の左右半身が正中線に頭を向けた形で髪際に横たわっている。「総中枢」で全身の知覚を調節したり制御し、「総運動中枢」の伏象区に付随する皮膚系統と内臓系統だから「伏臓穴区」と呼んでいる。
2.位置:額中線から額角までの6.5cmの間が、上焦、中焦、下焦の三焦に分かれる。上焦は3.0cm、中焦は1.5cm、下焦は2.0cmである。上焦は横隔膜から上の胸部の内臓で、胸から上と上肢の皮膚感覚、そして大脳の思考である。中焦は臍から上、横隔膜から下の内臓と皮膚感覚である。下焦は臍から下の下腹部の内臓(泌尿や生殖系統を含む)と、臍から下と下肢の皮膚感覚である。
3.作用と効能:伏臓は全身の知覚が集中して反応する部分だが、特に全身の皮膚の痛覚、触覚、冷覚、温覚、痺れや痒みなどの不快感に対して、明らかな調節作用がある。伏臓穴区は伏象の内臓機能の部分でもあり、内臓の状態が表れる。特に精神や知能、情緒、記憶、思索活動などに深い関係と調節機能を持つ。そのため伏臓穴区に刺鍼すると、陰陽の平衡を保ち、虚実を調え、全身の皮膚感覚と内臓疾患を治療でき、身体の状態を改善して正常にする。
4.主治:主に内臓や皮膚の知覚異常などを治療する。全身の皮膚の痛覚、触覚、冷覚、温覚、痺れや痒み、引きつりなどの不快感にもっとも効果がある。例えば胃痙攣、胆嚢炎、下痢、生理痛、腸仙痛(腸が絞られるような痛み)、生理不順、十二指腸潰瘍、肝炎、細菌性下痢、腹膜炎、肺炎、胸痛、三叉神経痛、虫歯、自汗(汗がダラダラ出る)、インフルエンザ、心悸(心臓がドキドキする)、冠状動脈硬化症、心臓神経症、高血圧、頭昏(頭がぼんやりする)、尿路結石、腎炎、膀胱炎、尿失禁、尿貯溜、浮腫、自律神経失調症、内分泌異常、子宮下垂、皮膚掻痒症、ジンマシン、神経性皮膚炎、酒渣鼻、湿疹、乾癬、アフタ性口内炎、アレルギー性鼻炎などの治療である。
(三)倒象、倒臓の穴区
1.部位と命名:倒象と倒臓の穴区は、実際には運動中枢と知覚中枢が頭皮上に投影されたものである。倒象穴区とは運動中枢で二区あり、左右両側の中心前回にそれぞれ位置し、四肢や体幹の運動機能を主に管理している。倒臓穴区は知覚中枢で、やはり二区あり、それぞれ左右両側の中心後回に位置し、四肢や体幹の皮膚感覚と内臓機能を主として管理している。穴区内の全ての刺激点は、基本的には身体の上下が逆になるように配列しているが、あまり規則的ではない。
2.位置
頭皮での中心溝の位置は、眉頂枕線の中点から1.25cm後ろをA点とする。眉耳線の中点の1.25cm前から、さらに垂直に4cm上がったところをB点とする。そしてA、B点を結んだ線が中心溝の位置である。(47図)
中心溝から前1.5cmの中心前回のある位置が倒象穴区である。中心溝から後1.5cm後の中心後回のある位置が倒臓区である。その長さは眉頂枕線の左右1cmのところから始まって約9cmある。
倒象の上部(下1/3)が頭頚部器官である。中部(中1/3)は上肢である。下部(上1/3)は体幹、下肢、肛門などの器官である。倒臓の上焦(下1/3)は腹腔内の消化器と頭面部およびその皮膚感覚を含む。中焦(中1/3)は上肢とその皮膚感覚。下焦(上1/3)は後頭、頚、体幹、脳、生殖、泌尿器系統と下肢およびその皮膚感覚である。
3.作用と効能
倒象:対側各部の器官と肢体の運動機能を主に管理する。
倒臓:対側各部の内臓と皮膚感覚を主に管理する。
4.主治:倒象と伏象はだいたい同じで、主に対側半身の体幹や四肢の運動機能障害や異常を治療するのに使う。倒臓と伏臓はだいたい同じで、主に対側半身の知覚障害や異常を治療するのに使う。
A:中点の後ろ1.25cm

頂 枕
中 中
心 心
前 後
眉 回 回

B点
|垂直4cm上


眉 | 耳 線
−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|中点の1.25cm前 小脳



47図 中心溝の位置
(四)そのほかの中枢 大脳皮質は、運動や知覚中枢だけでなく、さまざまな中枢があって、皮質の各部に分布している。それぞれの中枢の働きに基づいて、21ケ所の刺激点を定める。
1.思維:前頭隆起の間で、眉間(印堂)の直上3cmのところ。
主治:知能減退、ぼんやりしている、ヒステリー、幻聴、精神分裂病、神経性頭痛、高血圧、運動失調、意識がはっきりしない、自律神経失調症、胃潰瘍など。
2.説話:眉の中点と耳尖をつないだ線の中点。
主治:運動性失語、発声困難、ドモリ、舌筋の麻痺、仮性球麻痺、口輪筋麻痺、知恵遅れ(大脳の発育が遅い)、舌の震えなど。
3.書写:ブレグマの外後方(矢状縫合と45度の角度)3cmのところ。
主治:舞踏病、震顫麻痺、失語、失書症、高血圧、低血圧、肺気腫および皮質性の浮腫など。
4.記憶:人字縫合先端の前外方(矢状縫合と60度の角度)7cmのところ。
主治:失読症、記憶力減退、頭痛、頭鳴り、心悸、坐骨神経痛、遺精、不眠、頭暈、浮腫、息切れ、知恵遅れ(大脳の発育の遅れ)、脳炎の後遺症など。
5.信号:耳尖と外後頭隆起の上3cmをつなぐ線を三等分した前の点。
主治:知覚性失語、癲癇、不眠、神経性頭痛、ヒステリー、精神病、理解力の減退、健忘性の失語、知恵遅れ(大脳の発育の遅れ)など。
6.運平:人字縫合先端の前外方(人字縫合と30度の角度)5cmのところ、頭頂結節の上方。
主治:失行症、末梢神経炎、震顫麻痺、脳血管障害(片麻痺)、運動失調、手指失認症、先端疼痛性紅斑、リューマチ性関節炎など。
7.視覚:外後頭隆起の上2cmのところから1cm横。
主治:視覚障害、幻覚、網膜炎、角膜斑、緑内障、視神経乳頭炎、ガラス体混濁、急性慢性の結膜炎、白内障、眼瞼痙攣、頭痛、頭がぼんやりする、頭暈(目まい)、黒内障などの眼科疾患と鼻血。
8.平衡:外後頭隆起の2cm下から横に3.5cmのところ。
主治:片麻痺、眩暈、全身の運動失調、眼球震顫、パーキンソン病、言語障害。
9.呼循:外後頭隆起の5cm下から横に4cmのところ。
主治:心肺機能の異常による咳嗽、喘息、心臓がドキドキする、息切れ、呼吸困難および頻脈、不整脈、リューマチ性心疾患、高血圧、冠状動脈硬化症、肺気腫など。
10.聴覚:耳尖の1.5cm上のところ。
主治:神経性難聴、耳鳴り、眩暈、癲癇、幻聴、同側の半盲、高血圧、眼痛、ヒステリー、腹内が脹ったような感じなど。
11.嗅味:耳尖から3cm前のところ。
主治:味覚嗅覚が鈍くなる、味覚嗅覚障害や喪失、急性慢性の鼻炎、癲癇、記憶力減退、目まい、片頭痛、鼻洞炎、鼻血、涎が流れる、インフルエンザ、舌炎、湿疹、乾癬、記憶喪失症など。

二、取穴と配穴方法
(一)取穴方法
1.相応取穴法:身体のどこかに病気があった場合、「伏象」「伏臓」「倒象」「倒臓」の相応する部分から取穴する。
2.倣体鍼取穴法:病状に基づいて、伝統的な配穴をする部分を使う。これは「伏象」や「伏臓」の経穴部分から取穴する。例を挙げれば内関ならば手首と相応する部位を使い、環跳ならば腿の付け根に相応する部分から取穴する。
3.特定取穴法:病状に基づいて、それに相応する中枢部分から取穴する。例を挙げれば言語障害ならば説話や書写を選ぶなど。
4.米字取穴法:左右の肢体を対称に取穴する。上下の肢体を重複するように取穴する。左上、右下、左下、右上を交叉取穴する。身体を折り畳んで重ねたように取穴する。
(二)配穴方法
1.「伏象」と「伏臓」を組み合わせる。
2.「倒象」と「倒臓」を組み合わせる。
3.「伏象」と「倒象」を組み合わせる。
4.「伏臓」と「倒臓」を組み合わせる。
5.「伏象」と「伏臓」を組み合わせるとともに、そのほかの中枢とも組み合わせる。
6.頭部のそのほかの経穴や経外奇穴および伝統的な経穴などとも組み合わせる。
7.耳鍼、手鍼、足鍼などの鍼法と組み合わせる。

三、刺入と操作
(一)刺入 刺入角度には直刺と斜刺がある。刺入速度は速いもの(飛鍼)とゆっくりしたもの(緩刺)がある。
(二)運鍼操作
1.提挿操作:斜刺のあと、鍼体を直接上下(前後)させる。また直接鍼体を上下(前後)させるのではなく、鍼の刺さっている方向に頭皮を揺すってもよい。
2.雀啄操作:斜刺や直刺で使い、正確に力強く、上下幅は小さくして多くし、振るわせるような感じで上下させる。
3.捻転操作:軽くゆっくりと捻鍼する。また提挿操作と組み合わせてもよい。
そのほかにも朱氏の顱鍼、蘭田頭鍼および湯氏の頭鍼などがあるが、それらは使われる
ことが少ないので省略する。

第三節 新治療区

以上のさまざまな頭鍼、とりわけ焦氏の頭鍼の応用が盛んにおこなわれた結果、さらにいくつかの新しい刺激区が見つかった。
一、安神区
眉間(印堂)から上に向かう2cmの線。精神を安らげる作用がある。(48図)

+−−−−−百会
精神情感区−−−−+ |
+−−−−上星 |
鼻咽口舌区−−−−−+ |
| +−−−−−後頂
次鼻咽口舌区−−−−+ | |
+−−−−額中 腰区−−−+ |
| | |
安神区−−−−+ +−−−−−強間
+−−−−印堂 |

+−−−−−脳戸
制狂区−−− |
+−−−−−風府
+−−−−− 門
48図 前頭部の治療区
49図 後頭部の治療区
二、強壮区
百会から前後にそれぞれ3cmの部分(前神聡から後神聡への透刺)。自律神経失調症を治療する。
三、鼻咽口舌区
前後正中線で、髪際の上下それぞれ2cmの部分(上星から下に向けてへの透刺、標準化方案の額中線)。気管の感染を治療する。
四、精神情感区
血管舒縮区と胸腔区の間にあり、正中線と平行な左右に2cm開いた部分。精神や情緒障害を治療する。
五、制狂区
外後頭隆起(脳戸に当る)から、35度の角度で左右斜め下に、第二頚椎横突起に至る線。精神障害や情緒障害を治療する。
六、腰区
外後頭隆起の上4cmで、視区の傍ら1.5cmのところ。腰痛の治療に使う。
七、癲癇区
暈聴区の上1.0cmのところ。鎮静安眠作用がある。(50図)
八、通頂区(上星から百会への透刺)
鍼麻酔手術に使う。
九、通頂旁区(五処から通天への透刺)
鍼麻酔手術に使う。(51図)



運動区 |百会
語言区 |
通天| |
| |
| |
| |
手指加強区 | |通頂区
癲癇区 通頂旁区| |
| |
暈聴区 | |
| |
五処| |上星




50図 側頭部治療区 51図 通頂区と通頂旁区
十、手指加強区
頭鍼の上肢運動区(頂顳前斜線の中2/5)の下段で、上肢運動区を挟んだ両側1〜1.5 寸の線。上肢の機能回復を強める。
十一、失算区
感覚区の上点の3cm後ろから、前後正中線と60度の角度で後ろに向かう5cmの線。数学記号の識別能力を高める。
十二、錐体区
第二頚椎棘突起の上1.5cmで、左右に1cm開いたところから下に向かって3cm。運動障害の改善、特に運動の機能回復が遅いものによい。


額五鍼 |後神総
失算区−−− |
−−−− 頭頂結節 |
|百会

強壮区−−−−−−+
顳三鍼 |前神総

附加運動区< 運動前区


額五鍼
−−−−−
清醒区

52図 顳三鍼と額五鍼の側面図 53図 頭頂部の治療区
十三、顳三鍼
第一鍼:頭頂結節下縁の前方約1cmのところから、後方に向けて3cm刺入する。
第二鍼:耳尖の上1.5cmのところから、後ろに向けて3cm刺入する。
第三鍼:耳尖の下2cmの、さらに後ろ2cmのところから、後ろに向けて3cm刺入する。
以上の鍼は、全て水平線と15〜20度の角度をなすよう、後上方に向けて斜めに刺入する。その部位は大脳の外側溝から下の側頭葉の後部に当る。その作用は、言語の感受性と記憶量の増強である。(52図、53図)
十四、額五鍼
前髪際の上2cmから、大脳の外側溝(外眼角の後3.5cmの、さらに1.5cm上から、頭頂結節までの線を基準とする)の間を、前から後ろに向けて五本刺入するものである。それぞれ約3cm刺入し、五鍼の間は等間隔で扇形になるように配列する。これは前頭葉の前部と前頭部に当り、どういう行為をするかを決定する。主治:前頭部の病変によって起こる精神障害、例えば情緒が淡泊になったり、反応が鈍ったり、周囲に対して関心や興味がなくなる、記憶力や知能が減退するなどの症状を治療する。
十五、運動前区
運動区の上点を前に4cm移動させたところから、後ろに向けて3cm刺入したものと、正中線の左右それぞれ1.5cm離れたところに一本ずつ、合計三本である。中心前回の前部で、どのように動作を続けるかの設計に係わっている。主治:痙攣性の筋緊張過度と強力把握を治療する。
十六、附加運動区
運動前区の中心に位置し、運動区中線の両側を前から後ろに一鍼ずつ(図では傍ら5mmのところから1cm刺入している)。この部分は動態運動を編成して、連続した随意運動の順序を決める。全ての運動機能障害を治療できる。(54図)


−−−額前区
−−−−−−頭頂結節

附加運動区

−−−−声記憶区
−−−−運動前区
前頭葉

−−−−−運動区
側頭葉< −−−−−語言形成区
−−−−−感覚区


後頭葉−

54図 運動前区と附加運動区の皮質部位 55図 声記憶区と言語形成区

十七、声記憶区
頭頂結節の下方と後下方にある。この区は広いので二本の鍼を交叉させて×の字に刺鍼する。主治:聴覚失認症。患者は音は聞こえていてもその意味が分からない。(55図)
十八、声音形成区
声記憶区の下方にあり、乳様突起の後方(乳様突起の上部後縁)から下に向けて3cmの長さ。言語能力の回復を促す。
十九、言語区
ブローカの中枢区で、下前頭回の後部にある。額五鍼の第一鍼で、運動区の下2/5の前方である。主治:反応が遅い、失語症、はっきり喋れなかったり喋るのに苦労する。
二十、次鼻咽口舌区
鼻咽口下区の2cm下にある。主治:目まいを伴った悪心、嘔吐、(器質的病変を除く)食欲不振。
二十一、清醒区
正中線で髪際を2〜4cm入ったところを、2〜6cmの幅で水平に横刺する。意識を呼び醒ます働きがある。
二十二、安寧区
第二頚椎棘突起の傍ら2cmのところを、2〜3.5cmの深さに直刺する。鎮静させて心を静める働きがある。
二十三、制癲区
胸腔区を上に向けて4cmの長さに刺入する(精神情感区に当る)。精神障害や癲癇の小発作を治療する。
二十四、唖穴
風池の上0.4寸。主治:仮性の球麻痺。
二十五、頭三角
両側の内眼角直上で髪際のところ(伏臓の
上焦部分に当る)を底辺の2角とし、髪際の
正中から上で(伏象の頭部に当る)ブレグマ
の前2〜3cm前を頂点とする正三角形を作
り、この三点を刺鍼点とする。これを頭三角
と呼ぶ。3点から1cmの長さに沿皮刺する。
主治:不眠。(56図)
二十六、治聾五穴
1号穴:眉弓と耳尖をつなぐ中点の上5
mmから、この線と45度の角度で後上方に
2cm刺入する。そして鍼尖を、耳尖の直上
2cmの部位に到達させる。
2号穴:1号穴に刺入した鍼の鍼体と直
角になるよう、1号穴に刺鍼した鍼の鍼尖か
ら2cm離れた上部から1号穴鍼の鍼尖部分 56図 頭三角
に達するように2cm刺入する。
3号穴:1号穴鍼と2号穴鍼の鍼尖がある部位(耳尖の上2cmのところ)から、1号鍼や2号鍼とそれぞれ45度の角度で、後方に向けて2cmの長さに刺入する。3本の鍼体が、皮下でYの字になるように刺入する。(57図のA)
4号穴:頭頂骨の最高点から、下に向けて正中線と平行に2cm刺入する。
5号穴:耳尖の上5mmと外後頭隆起の上3.5cmをつなぐ線の中点を刺入点とし、下に向けて2cm刺入する。主治:神経性難聴。(57図のB)
二十七、運動区透感覚区五鍼
運動区と90度の角度で、運動区から感覚区に向け、上から斜め下に等間隔で五鍼透刺する。主治:片麻痺。(58図)
Aは@と直角
C 頭頂骨の最高点
A

B
D
@ 耳尖の上
2cm −−−−−−−−・上3.5cm
中点の上5mm 耳尖の上 |
45度の角度で 5mm |



外後頭隆起


A B
57図 治聾五穴

二十八、眼球協同運動中枢
前髪際を2cm入ったところで、正中
線の傍ら2cm。主治:眼筋麻痺。 運動区
二十九、頚膨大区 感覚区
頚椎4〜胸椎1の棘突起傍ら1.5c
mのところを、背骨と平行に刺鍼する。
主治:上肢の運動麻痺。
三十、腰膨大区
胸椎10〜腰椎4の棘突起傍ら1.5
cmのところを、背骨と平行に刺鍼する。
主治:下肢の運動麻痺。






58図 運動区から感覚区への透刺

次の節では、頭部経穴模型に使われている国際標準化方案を紹介する。これは頭部の経穴模型で左半分に記された線である。頭部経穴模型を参照されたい。
第四節 頭皮鍼穴名の国際標準化方案
1970年から、頭部の穴区に刺鍼して病気を治療する頭鍼療法が出現し、しばらくすると、この方法が多くの国に紹介された。現在ではそうした国や地域の臨床医が常用する治療法の一つとなった。国際的な頭鍼療法の学術交流のため、そしてこの療法をさらに発展させるために、頭鍼穴名の標準化方案が制定された。
頭鍼療法は伝統的な鍼灸医学に基づいて発展してきたもので、使われる穴区は全て経絡、経穴、臓腑と密接な繋がりがある。そのため穴位は経絡や経穴などの理論や特徴を反映している。
世界衛生組織の要望に応えて、会議を開いて討議した結果、分区によって経を定め、経の上から選穴し、古代の穴位を透刺する(一鍼で二つあるいは三つの穴位を刺鍼する)方法を原則として、この方案を定めた。
頭皮鍼の穴名の国際標準化方案は十四経穴名の標準化方案と同じで、頭穴名をアルファベットと数字により表すことと、穴名を中国語の発音と漢字で表すことが必要である。中国語の発音の後に英語の訳文を付ければ、漢字や中国語の発音を知らない人が学んだり理解するのに便利である。Mは微鍼系統を表し、Bは頭皮を表す。
頭皮鍼の基準線は全て頭皮にあり、4つの区に分けて14本の基準線(左側、右側、中央と合計25本)がある。十四本の基準線の位置は頭蓋骨の解剖用語を使い、前頭骨、頭頂骨、側頭骨および後頭骨にある十四本の基準線を定め、四つの区域に分けた。
前頭区:額中線(中央に一本)、額旁1線(額中線を挟んで左右に一本ずつ)、額旁2線(額旁1線を挟んで左右の一本ずつ)、額旁3線(額旁2線を挟んで左右に一本ずつ)の、4本の基準線がある。
頭頂区:頂中線(中央に一本)、頂顳前斜線、頂顳后斜線、頂旁1線(頂中線を挟んで左右に一本ずつ)、頂旁2線(頂旁1線を挟んで左右に一本ずつ)の、5本の基準線がある。
側頭区:顳前線(左右に一本ずつ)、顳后線(左右に一本ずつ)と基準線が2本ある。
後頭区:枕上正中線(中央に一本)、枕上旁線(枕上正中線を挟んで左右に一本ずつ)、枕下旁線(正中線を挟んで左右に一本ずつ)の、5本の基準線がある。

一、基準線の位置
基準線は全て頭部にあるが、頭部は「諸陽の会」でもあり、身体の中心である。まさに『霊枢・邪気臓腑病形』篇の「十二経脈の三百六十五絡脈、その気血は全て上に昇って顔に行き、空竅(五官)に走る」である。だから十二経脈の名称で基準線を表せば、初めて習うものでもすぐ分かり、覚えやすい。
十四本の基準線の位置を下に述べる。
前頭区:59図。
額中線:前頭部にある督脈(神庭)。髪際の正中線で、髪際の上半寸と髪際の下半寸の計一寸である。
額旁1線:足の太陽膀胱経( 竹から眉衝のライン)。額中線の外側で、内眼角の直上。髪際の上下半寸ずつで、やはり一寸。
額旁2線:足の少陽胆経(陽白から頭臨泣のライン)。額旁1線を挟む外側、瞳孔の直上で、髪際の上下半寸ずつで、やはり一寸。
額旁3線:足の厥陰肝経。額旁2線を挟む外側で、頭維と本神の中間、髪際の上下半寸ずつで、やはり一寸。 |


神庭 |
眉衝 額中線 |
頭臨泣 額旁1線 | |百会
頭維 額旁2線 | |
額旁3線| |
| |←頂中線
| |
| |
| |
| |前頂





59図 国際標準化方案前頭区 | 60図 国際標準化方案頭頂区(一)

頭頂区:60図、61図、62図。
頂中線:督脈(百会から前頂への透刺)。頭頂部の正中線上で、百会から前に向けて一寸半に刺入する。(60図)
頂顳前斜線:足の太陽膀胱経(前神聡から懸釐への透刺)。頭部の側面で、頭頂正中線から頭部側面に向かって斜めに走る斜線。この線は三本の経脈を通過する。
頂顳后斜線:足の太陽膀胱経(百会から曲鬢への透刺)。頭部の側面で、頭頂正中線から頭部側面に向かって斜めに走る斜線。この線は三本の経脈を斜めに貫いている。頂顳前斜線と頂顳后斜線は一寸離れている。(61図)
頂旁1線:足の太陽膀胱経(承霊から通天への透刺)。頭頂部にあり、頭頂正中線と一寸半離れた外側にある。承霊穴から経脈に沿わせて、後ろに一寸半刺入する。
頂旁2線:足の少陽胆経(正営から承光への透刺)。頭頂部にあり、頭頂正中線の外側2.25寸のところ(正中線と頭頂結節の間)で、正営穴から経脈に沿わせて、後ろに一寸半刺入する。(62図)
側頭区:62図。
顳前線:足の少陽胆経(頷厭から懸釐への透刺)。頭部の側面で、こめかみにある。額角下部からモミアゲに向けて引いた斜めの線。
顳后線:足の少陽胆経(率谷から曲鬢への透刺)。頭部の側面で、側頭部から耳尖上方に至る線。

前神総 通天
百会 前神総 正営
頂顳前斜線 百会
頂旁1線
頂旁2線 頷厭

頂顳後斜線−−−− 顳前線
率谷
懸釐
懸釐 顳後線

曲鬢−−−−−−− 曲鬢






61図 国際標準化方案頭頂区(二) 62図 国際標準化方案頭頂区と側頭区

後頭区:63図。
枕上正中線:督脈(強間から脳戸への透
強間 刺)。後頭部で外後頭隆起上方の正中線。
枕上正中線 枕上旁線:足の太陽膀胱経。後頭部で、
枕上正中線から半寸ずつ離れた平行線。
枕上旁線 枕下旁線:足の太陽膀胱経(玉枕から天
脳戸 柱への透刺)。後頭部で、外後頭隆起の両
側二寸のところから、下に向けて引いた垂
線。

玉枕 枕下旁線 二、頭皮鍼の適応症
全身にある三百六十五絡は全て頭部に昇
って循行しているため、頭皮鍼の治療範囲
は非常に広く、頭部や面部の局部の疾患に
限らず、全身疾患も治療できる。
(一)額中線 :前頭部の髪際にある正中
線で督脈に属している。神庭穴から経脈に
沿って下に一寸刺入する。主治:癲癇、精
63図 国際標準化方案後頭区 神異常、鼻疾患など。
(二)額旁1線 :前頭部の正中線の外側にあり、内眼角の直上で足の太陽膀胱経に所属する。眉衝穴から経脈に沿って下に一寸刺入する。主治:冠状動脈硬化症による心臓の痛み、気管支喘息、気管支炎、不眠など。
(三)額旁2線 :前頭部の額旁1線の外側で、頭臨泣穴から経脈に沿って下に一寸刺入する。足の少陽胆経に属する。主治:急性、慢性の胃炎、胃や十二指腸潰瘍、肝胆疾患など。
(四)額旁3線 :額旁2線の外側にあり、足の少陽胆経と足の陽明胃経の間にある。頭維の内側0.75寸のところから下に向けて一寸刺入する。主治:機能性子宮出血、インポ、遺精、子宮脱出、頻尿、尿意急迫など。
(五)頂中線 :頭頂部の正中線で、督脈に属す。百会から前頂までの線。主治:運動麻痺、知覚麻痺、痛みなどの腰腿足の病気および皮質性の多尿、脱肛、小児のオネショ、高血圧、頭頂痛。
(六)頂顳前斜線 :前神聡穴から懸釐穴までで、足の太陽膀胱経に属す。この線は督脈から斜めに足の太陽膀胱経、足の少陽胆経を貫く。全線を5等分し、上の1/5は下肢や体幹の運動麻痺を治療する。中の2/5は上肢の運動麻痺を治療する。下の2/5は中枢性の顔面麻痺、運動性失語症、涎が流れる、脳動脈硬化などを治療する。
(七)頂顳後斜線 :百会穴から曲鬢穴までで、足の太陽膀胱経に属す。この線は督脈から斜めに足の太陽膀胱経、足の少陽胆経を貫く。全線を5等分し、上の1/5は下肢や体幹の知覚異常を治療する。中の2/5は上肢の知覚異常を治療する。下2/5は頭面部の知覚異常を治療する。
(八)頂旁1線 :頂中線の外側で、頂中線と一寸半離れており、足の太陽膀胱経に属する。承霊穴から経脈に沿って後ろに、通天穴へ向けて1.5寸に刺入する。主治:運動麻痺、知覚麻痺、疼痛などのような腰腿の病症を治療する。
(九)頂旁2線 :頂旁1線の外側で、督脈と2.25寸離れ、足の少陽胆経に属している。正営穴から経脈に沿って承光穴まで後ろに1.5寸に刺入する。主治:運動麻痺、知覚麻痺、疼痛などのような、肩、腕、手などの病症を治療する。
(十)顳前線 :側頭部の髪の毛の内側で、額角の下部から耳の前方に向けて斜めに引いた、頷厭穴から懸釐穴までの線。足の少陽胆経に属する。主治:片頭痛、運動性失語、末梢性神経麻痺および口腔の疾病。
(十一)顳後線 :側頭部の耳の上方で、耳尖の直上にある。率谷穴から曲鬢穴までの線で、足の少陽胆経に属す。主治:片頭痛、眩暈、耳鳴り、耳聾など。
(十二)枕上正中線 :後頭部で、外後頭隆起の上方正中の垂線。督脈に属する。強間穴から脳戸穴までの線。主治:眼病、足の疥癬など。
(十三)枕上旁線 :枕上正中線と平行な半寸外側の線で、足の太陽膀胱経に属する。主治:皮質性の視力障害、白内障、近視など。
(十四)枕下旁線 :後頭部で、外後頭隆起の外側二寸のところから下に向かう垂線。足の太陽膀胱経に属する。玉枕穴から天柱穴までの線。主治:小脳疾患によって起こる平衡障害や、後頭痛など。


第四章 臨床研究の概況

十数年来、頭穴の臨床応用がおこなわれ、その適応症は絶えず広がってきた。神経系統の疾患から臨床各科に広がり、慢性病や後遺症の治療から急性疾患の治療に広げられ、また中国から世界に広められた。頭鍼は70余りの疾患に適用されている。ここで紹介するのは現在にわりあい頭鍼が応用されている疾患である。

第一節 脳血管障害の後遺症と脳障害による運動麻痺や失語

頭穴の臨床応用で最も多いものは、脳卒中による運動麻痺や失語症など後遺症治療で、現在で百篇以上ある。その有効率は84.7%〜100%であるが、これは治療効果の評価基準や病気の程度および治療方法などで異なる数字となったと思われる。脳性麻痺には脳卒中のほか、各種の脳炎によるもの、中毒性脳炎、脳外傷、中毒によって起こったものなどがあるが、治療原則はだいたい同じである。
脳疾患によって起こる運動麻痺の治療法は、近年になって更に進歩したが、それを以下に紹介する。

一、穴位と刺激区の選択
(一)焦氏の刺激区に基づいた配穴 :運動麻痺の治療では、だいたい焦氏の刺激区を使
うが、特に1980年以前にはそうであった。病状に基づいて運動区、感覚区、言語区(T、U、V区)、血管舒縮区、舞踏震顫麻痺控制区、運用区などが使われた。例えば焦氏が1976年に以上の方法を使って脳血栓による後遺症500例を治療したところ、有効率95%であった。陳氏は1971〜1976年に34ケ所の機関でおこなわれた中風による半身不随2717例の治療結果を、臨床治癒24.2%、特効34.7%、有効35.6%、無効5.5%とまとめている。それによると脳血栓の後遺症は、脳出血の後遺症に比べて治療効果が優れていると言える。これらの報告は、ほとんど焦氏方式で治療している。
この時期、さらに病状に基づいて新しい治療区を加え、良好な結果を挙げた。大連鉄道医院などでは焦氏の刺激区のほか、嚥下困難に「鼻咽口舌区」を使ったり、精神障害や意識障害に「精神情感区」と「制狂区」を使ったりしている。
頭穴は片麻痺や失語などの状態を改善するだけでなく、頭痛や目まい、知覚麻痺などの自覚症状や知能障害、健忘なども改善できるので、動脈硬化の治療に使う人もある。
以上の方法は中風によって起こった半身不随や失語症に使われるばかりでなく、それ以外の脳障害によって起こる運動麻痺や失語症などにも使うことができる。例えば陳氏は病状によって運動区、感覚区、言語区、舞踏震顫控制区、平衡区、視区を主とし、高血圧と皮質性の浮腫には血管舒縮区を加えたり、足の指が動かないものや大小便を失禁するものに足運感区を加えたり、目まい、頭痛、不眠などの伴うものに暈聴区を加えたり、動悸が激しい、心臓がドキドキする、健忘などがあるものには胸腔区を加えたり、夜尿には足運感区や生殖区などを加えて、脳血管障害、脳炎、脳膜炎の後遺症、脳の外傷、大脳無発育など409例を治療し、89.49%の有効率があり、特効があったり治癒した患者は41.81%に達した。
また言語区(T、U区)を使って結核性髄膜炎の後遺症による失語を治療した例では、5回目の治療から話ができるようになり始め、12回の治療で知能、言語能力ともはっきりと好転した。また言語区(T、U、V区)を使って脳挫傷による失語症22例を治療した例では、3〜4クールの治療で全員治癒している。
また運動区、足運感区、言語区、舞踏震顫控制区、精神情感控制区を使って、リューマチ性脳炎、血管内膜炎、中毒性脳疾患、狂犬病のワクチン注射後の脳炎、化膿性脳炎、脳クモ膜炎など12例を治療した例では、そのうち10例はすでに意識不明の状態にまでなっていたにもかかわらず、全てに良好な効果が得られた。
(二)方氏方式の頭皮鍼の配穴 :方氏によれば、運動障害には患側の伏象と対側の倒象を主とし、知覚障害では患側の伏臓と対側の倒臓を主とし、言語障害には説話、記憶、信号を主とし、病状に基づいて中医辨証による体穴を組み合わせて脳血管障害によって起こった片麻痺707例を治療した。その結果、臨床治癒61.8%、特効16.27%、有効19.51%で、全体の有効率は97.5%であった。
(三)国際標準化方案の治療ラインを使ったもの :この数年は多くの人が『頭皮鍼穴名国際標準化方案』から関係のある「基準線」を使って治療をおこない、満足できる効果を上げている。例えば陳氏は、さまざまな肢体麻痺患者に、対側の「頂顳前斜線」と「頂旁1線」を組み合わせ、麻痺した手足に痺れや痛みがあるものには「頂顳後斜線」を加え、動かない手足に浮腫があったり高血圧のあるものには「血管舒縮区」を加え、失行症には「頂旁2線」を加え、上肢の機能回復の遅い(指先で細かいことができない)ものには「手指加強区」を加え(原文では位置は示していない。恐らく言語一区の両側だろう)、失語には失語症の性質によって「頂顳前斜線」や「顳後線」を使い、回復の遅いものには「言語加強区」を加え、片麻痺を伴うものには健側の体穴も組み合わせ、失語症だけならば両側を交互に取穴する。脳疾患による運動麻痺335例と中枢性の失語症109例を治療し、その有効率は93%に達した。そのうち運動麻痺のグループでは、治癒62.1%、特効17.3%、好転14.6%、無効6%だった。失語グループは、治癒61.5%、特効17.4%、好転13.8%、無効7.3%であった。
(四)伝統的な頭穴を使ったもの :頭穴は一穴で多くの病を治療でき、また一つの病気も多くの穴を使って治療できる。つまり対側の病気を治療することができ、また同側の病気も治療できる特徴があるので、古来からの頭穴に透刺を使っても、片麻痺や失語症の治療に満足できる効果を得られる。百会から曲鬢への透刺、前頂から懸顱への透刺を使って中風による片麻痺500例の治療をおこない、自覚症状(頭痛、目まい)、筋力、血圧、脳の血流、血液循環などを指標とし、刺鍼治療してすぐの効果だけでなく、長期にわたる効果を調べた例がある。有効率は、頭痛94%、目まい89%、筋力96%の効果があった。そのほか筋力、関節機能、痛みの域値、血液循環を指標とし、健側の百会から曲鬢への透刺、患側の百会から曲鬢への透刺と前頂から懸顱への透刺などの効果を比較観察した結果、これらの経穴を使った限りでは、運動機能や知覚機能でもほとんど同じような効果が得られた。のちに別の人が、通天と前神聡から懸釐への透刺と、正営から神庭への透刺を両側で比較観察したが、やはり同じような効果が得られた。また上星、五処、承光、通天、絡却などの経穴を使っても、満足できる効果が得られる。
(五)頭穴(各種の頭鍼を含む)と肢体の経穴の組み合わせ :最近の臨床のほとんどは頭穴と肢体の経穴を組み合わせて治療したものである。頭部の刺激区に肢体の経穴を加えたり、伝統的な頭穴に肢体の経穴を加えたものが多くある。
鄭氏は、頭鍼の対応治療区を使ったものと、頭鍼に体鍼を加えて治療したものを比べたところ、頭鍼109例のうち臨床治癒10.1%、特効47.7%、有効33%、無効9.2%で、臨床治癒と特効を併せると57.8%であった。頭鍼に体鍼を加えたグループは207例では、臨床治癒17.9%、特効77.3%で、体鍼を加えたもののほうが明らかに優れていた。また申氏は、頭鍼に体鍼を加えたグループ、頭鍼のみを使ったグループ、体鍼のみを使ったグループを比較したところ、頭鍼と体鍼を併用したグループは明らかに後の二つに勝っていた。著者は、病気が長引くいた病状のひどい患者で、肩関節が下垂したり、肢体麻痺も痙性や筋の緊張が高まったり、失語などを伴う患者では、頭鍼だけを使っても、なかなか効率が悪い。やはり本治である頭鍼と標治の体鍼を組み合わせる必要がある。肩が垂れ下がったものには極泉、肩井、肩?に刺鍼したり、電気鍼を使ってもよい。また精神障害が伴えば人中と神門を配穴し、失語や涎を流すものには廉泉と?門を配穴し、失禁するものには関元と太谿を配穴し、上肢や下肢の筋力が0ならば、隠白、少商、環跳、極泉に刺鍼し、提挿と捻転を組み合わせた瀉法を使い、手足が続けて2〜3回ピクピク動くように刺激する。一般に動く幅が大きいほど治療効果がよく、治りも速い。
賈氏は『霊枢・五乱』篇の「頭の気が乱れれば逆厥となり、頭が重くなったり、フラついて倒れそうになる。気が頭にあるものは天柱を取る」とある。『鍼灸大成』では、天柱は「足が身体を支えられないものを主治」し、完骨は「足の力が入らなくて動かず、曲がらないものを主治」すると記載されている。天柱、完骨を使った中風の治療例は112例あり、有効率は98%である。
李氏は百会、印堂、四神聡などを主とし、「五遅」や「五軟」などに属する小児の脳性麻痺25例を治療したところ、治癒7例、有効6例、好転10例であった。
梁氏は四神聡、風池、角孫、人中を肢体の経穴と組み合わせて、ウイルス性脳炎の後遺症25例を治療した結果、治癒6例、特効8例、好転9例、無効2例であった。対症療法では、失語や涎が流れるものには?門と廉泉、通里を加え、口が開かないものには頬車と下関を加え、眼瞼麻痺には隠白、魚腰、陽陵泉、?竹を加え、指の屈伸困難には八邪、後谿から労宮への透刺を加え、小便がタラタラ流れて止まらないものには関元と中極、三陰交を加えた。
安氏は、百陽穴(百会から太陽への透刺)に、五輸穴の経穴と?穴を組み合わせた。上肢には外関、下肢には陽陵泉を組み合わせ、上肢が引きつるものには孔最と?門を加え、足が内翻するものは絶骨を加え、外翻するものには商丘と三陰交を加えた。1〜2回運鍼しても効果が悪いものには築賓を加え、しゃべりにくいものや失語には廉泉、?門、金津、玉液を組み合わせ、顔面神経麻痺には頬車、下関、地倉、迎香を加え、体が弱って大小便を失禁するものには関元の灸を加えた。全部で400例治療し、治癒7%(26例)、特効64%、好転29%だった。
第254医院では、頭鍼に循経指圧を組み合わせて半身不随を治療した。頭鍼は焦氏方式を使った。循経指圧は按圧法を使い、十四経の主穴を指圧し、初めは軽く、徐々に強く按圧し、先に健側、後で患側を指圧した。どちら側も陽経を先に、陰経を後で治療した。背部の太陽膀胱経の天柱から始め、上から下に向かい、順次に上肢、下肢(遠隔部から近位に、指圧しながら関節を動かすように)を治療した。全部で30例を治療し、比較的優れた効果が得られた。彼等は「頭鍼」でも「循経指圧」でも効果があるが、痙性麻痺や軽症の麻痺では「循経指圧」のほうが優れており、弛緩性麻痺では頭鍼が優れていると考えている。
(六)新治療区と改進配穴を使った治療方法 :臨床治療を続けるうちに、以上に述べた刺激区を使っても、ある種の患者には納得のゆくような効果が得られなかった。そこで新しい治療区を使ったり、配穴を変えたりして初めて効果が得られることがある。林氏は、大脳を別々の働きをする中枢という機械の集合体と見るべきではなく、いろいろな働きをする中枢が互いに連絡し合い、協力して処理している総合体として見なければならないと考えている。そのため彼は、運動障害は運動中枢に病変が発生しているといえども運動区のみを刺鍼刺激するのではなく、感覚区、錐体区も使わなければならないし、体表投影区の脊髄にも刺鍼しなければならないときだってあるとしている。そうして彼等は病状によっては「失算区」、「精神情感区」、「制狂区」、「視区」及び「暈聴区」などの高級中枢活動区を加え、知能を回復させ、運動機能の回復も促進させる。彼等はさらに脳の機能と脳の血流の関係に基づいて、脳に外傷を負った後遺症患者には、さらに「運動前区」、「附加運動区」、「顳三鍼」、「額五鍼」を加えることを提唱している。彼等は以上の方法を使って小児の脳性麻痺患者73例を治療した。その内訳は、先天性のもの14例、出産時に発病したもの20例、後天性39例で、病歴は4ケ月から15年であった。治療結果は、特効34例、有効38例、無効1例であった。脳の外傷による後遺症患者27例では、特効15例、有効11例、無効1例であった。陳氏は、上肢の機能回復の遅いもの(指先の細かい動きができないもの)には「手指加強区」を加えるとよく、失語症の回復の遅いものには「言語加強区」を加えるとよいと提案している。
(七)頭鍼、耳鍼、肢体の経穴を組み合わせて使ったもの :張氏は1981年から1986年にかけて脳血管障害によって起こる中枢性片麻痺患者330人を、T、U、Vの三つのグループに分けて治療した。T組は神経内科の一般的な治療をおこない、中医(漢方薬や伝統的鍼灸)と現代医学の併用治療。U組は頭皮鍼治療で、患側と反対側の運動区、感覚区、足運感区などに刺鍼したもの。V組は頭皮鍼、体鍼、耳鍼を組み合わせたものとする。その結果は、U、Vグループとも治癒率と特効率はTグループを上回っており、P<0.01であった。
V組の具体的方法は、@頭皮鍼と耳鍼を交替におこなう。A耳鍼は心、肝、脾、腎、肩、肘、腕、?(大腿骨頭)、膝、踝などの穴位を使い、すばやく捻転したあと30分置鍼する。B肢体の経穴は三日に一回、「鷹上」穴と「足起」穴に中刺激をおこなう。
頭鍼は患側の筋電図に対して大きく影響を与え、初期に刺鍼すればまだ損傷されていない脳細胞による代償作用を促し、神経生理を改善させることもできる。
耳鍼は鍼感を強くして作用を持続させると、刺鍼してから一分以内に耳介の血管が充血し始め、皮膚の色が紅く変わり、局部の皮膚温度が上昇して、患者は局部や頭面部が発熱しているように感じ、5分以内に熱感と軽くなった感じがして、抜鍼しても6時間はそうした感じが続く。
体鍼は局部の機能改善に優れている。例えば肘関節が強直していたら、患側の「鷹上」穴(肘尖の上三横指で、尺側に一横指よったところ)から上に向けて一寸半斜刺し、強刺激をしたあと抜鍼すれば、肘関節はすぐに動くようになる。「足起」穴は、内踝と外踝を前でつないだ線の、中点から上に1.5寸のところ、脛骨外縁にあり、刺鍼すれば足関節の機能が回復する。

二、刺激方法の選択
頭穴では経穴や刺激区の研究のほか、最近では刺激方法についても研究がおこなわれている。
(一)快速捻転法 :これはもっとも広く使われている操作で、焦氏が求めている操作法である。一定の長さほど刺入したら提挿操作せずに鍼を固定し、人差指の橈側面(側面)と親指の掌側面(腹)で鍼柄を挟み、人差指の中手指節関節を連続して屈伸させて鍼体を捻転する。一分間に200回前後の回転数と、一回の回転で2回転(720度)ずつ左右に転がす。こうした操作を1〜2分連続したあと5〜10分置鍼する。この一連の操作を2遍繰り返したあと抜鍼する。普通10回を1クールとする。焦氏は1989年に再び、すばやく刺入し、速い捻転をおこない、すばやく抜鍼する原則を三快鍼刺術としてをまとめた。それは刺鍼時間を短くし、治療能率を高め、痛みが余りなくて刺激が強く、患者によっては治療効果が高まる特長がある。
(二)提挿操作 :これは古来の呼吸、迎随、徐疾、提挿などの補瀉操作で、頭穴の特徴に基づいて抽気法と進気法の二つに変化した。
抽気法:得気があったら鍼をすばやく皮下まで引き上げ、ゆっくりと元の位置に戻す。この提挿操作を3〜5回繰り返す。鍼を引き上げるときは力を込めて、すばやく引き上げる。戻すときは力を入れずに、ゆっくりとおこなう。これと逆の操作が進気法である。抽気法は瀉で、進気法は補である。
(三)電気鍼 :頭部の経穴に刺鍼したあと、パルス電流を通電する。波形は連続波、ノコギリ波、疎密波などで、パルス間隔は毎分200〜500回、患者の耐えられる電流の強さで通電する。病状と波形やパルス間隔との関係についてはまだ報告されていないが、手でおこなう操作と電気鍼では効果が異なるという見解がある。
房氏は病状に基づいて運動区、足運感区、言語区、感覚区などに刺鍼し、G−6805電気鍼治療機で、パルス間隔毎分300〜500回、電流の強さは患者が我慢できる範囲で20〜30分通電し、100例を治療して、有効率は93%であった。鄭氏は初めに頭皮電気鍼を使い、あとで体鍼を加えて脳血管障害による片麻痺316例を治療した。彼等は、頭皮電気鍼を使った脳血管障害による片麻痺治療を文献と比較して、頭皮鍼の手による操作をした治療と電気頭皮鍼は、ほとんど同じような効果があると考えている。電気頭皮鍼は手による操作と同じような特徴があるだけでなく、一定のパルス間隔にすれば患者の痛みが少なく、治療効率が高く、速効性があって効果がよく、治療が簡単におこなえて広めやすい特長がある。陳氏は電気鍼頭鍼で脳卒中片麻痺患者を106例治療し、治癒率32.2%、全体の有効率は96.4%であった。大脳皮質の相応する頭皮の投影区で、頭皮、筋肉、帽状腱膜などの組織中にある末梢受容器へ電気によるパルス振動を加えれば、中枢神経系統の各水平分節に大脳皮質下行性繊維の連絡を受け取らせ、また刺激信号が入ることによって脳動脈の弾力性が改善し、それによって脳の血液循環が改善され、脳組織の酸素分圧が高くなり、病巣周囲の脳細胞の栄養状態が改善され、脳組織の回復が促進されると彼等は考えている。山東医学院では中風による片麻痺患者を、捻転手法グループ(25例)と電気鍼グループ(70例)に分けて治療したが、はっきりした差がなかった。陳氏は、手による捻転はパルス電流をつなぐ方法より効果があり、捻転手法を使えばほとんどの患者の対応する肢体に鍼感が現れ、捻転時に気持ちがよいと訴える患者もあると言っている。大原鉄道医院や唐山地区では、手による操作は鍼感が発生しやすく、鍼感があれば効果もよいと考えている。湖北医学院は患者を、頭鍼だけを使ったグループと、頭鍼に手による捻転に体鍼を加えたグループ、頭鍼にパルス電流を流して体鍼を加えたグループに分けて治療した。その結果、頭鍼だけをしたグループの治療効果は、頭鍼に体鍼を加えたグループより劣っていた。手による捻転とパルス電流による治療効果の差は、はっきりしなかった。
(四)頭鍼電動捻転法 :陳氏は、頭鍼の手法グループ(98例)とパルス電流頭鍼グループ(154例)、そして電動頭鍼捻転グループ(213例)に分けて、治療効果を観察した。その結果、手による捻鍼グループは有効率77.55%で、治癒率37.75%。パルス電流頭鍼グループの有効率は81.16%で、治癒率40.90%。電動頭鍼捻転グループの有効率は93.8%で、治癒率61.5%であった。もちろん有効率や治癒率では電動頭鍼捻転グループがもっとも良く、P<0.01である。電動捻転機はタイマースイッチが付いており、自動的に捻転し、捻転速度や回転幅を調節することができ、一定にできるという長所がある。電動捻転は手による捻転を基にしているが、刺激の強さが一定で、鍼体の角度も一定にでき、回転速度も均一で、補瀉に基づいて必要な速度に調整すればよいので治療効果もよく、治癒率も高いと彼等は考えている。また、治療過程を簡素化でき、治療能率を高めることができる。
(五)置鍼して捻転しない :林氏は捻転せずに置鍼のみを使って小児の脳性麻痺73例を治療した。局部を消毒して28号1.5寸の毫鍼を使い、すばやく皮下に刺入し、帽情腱膜の下に達したら捻転せずに、強刺激を使わないで1.5〜3時間ぐらい置鍼し、置鍼の間は患者に運動させる。彼等は、強烈な捻転は抑制作用がある劣性刺激で、置鍼こそが興奮作用を持つ良性刺激であると考えている。神経活動は反射の一種なので、刺鍼して患者の頭に置鍼し、ただ重い、腫れぼったい、圧迫感のみの感覚があるだけならば、痛みに対する患者の恐怖は消え、そのあとで彼等を自由に運動させる。こうすれば捻転による単純な強刺激よりも、さらに神経の反射機能の回復を促すことができる。患者が自由に運動しているうちに、何にも気にすることのない状態で、いろんな刺激が神経に入って絶えず大脳皮質に伝わり、皮質は頭鍼の刺激を受けて、神経に入り込んできたいろんな刺激が感受性を高め、それによって適当な運動パルスが発せられる。これが頭鍼による興奮作用であり、神経の働きを常に回復させて治療効果を確かなものとさせ、単純に強刺激を使って皮質を刺激するよりも、神経の生理状態にさらに適していると考えている。
(六)頭鍼と粗鍼(太い鍼)の組み合わせ :姜氏は、頭穴は両側の運動区、両側の足運感区を取り、片麻痺には感覚区を加え、言葉が喋りにくいものには言語区を加える。24号(直径0.55mm)の2〜2.5寸の毫鍼を使って、健側に刺鍼してから患側に刺鍼する。一日1回治療し、途切れることなく治癒するまで続ける。肢体用には0.8mm五寸の粗鍼を使う。上肢の麻痺には肩井を取り、曲池と合谷を配穴し、肩?には外関と後谿を配穴する。下肢の麻痺には気海兪に八?(透穴法)と陽陵泉を配穴し、環跳には血海と豊隆を配穴し、足の内翻には懸鐘か金門を配穴する。それぞれの経穴グループを順番に使い、一日1回治療して治癒するまで治療を続ける。頭鍼は一分間に200回の捻転を2分間、五分間隔でおこない、3遍捻転する。刺鍼が終わったら、次に肢体に粗鍼をすばやく刺入し、補助手法として弾鍼(鍼柄を弾く)を使って置鍼しない。肩井では鍼感を上腕に伝わらせる。肩 は一鍼で扇形に三回、合谷刺(鍼尖転向法)で刺入する。刺鍼したときに灼熱感や跳動感などの鍼感が肢体の末端まで伝わるようにしなければならない。全部で169例を治療し、治癒率48.5%、有効率は97.6%であった。
鄭氏は22〜24号(直径0.65〜0.45mm)の粗鍼を使って、先に健側の肢体の経穴に刺鍼し、患肢の機能が徐々に回復してきたら患側や両側に刺鍼する方法を報告している。頭部は四神聡から百会への透刺、あるいは百会から四神聡への透刺および片麻痺対側の運動区、足運感区、血管舒縮区などを使った。203例を治療した結果、臨床治癒33%、特効46.3%、好転20.7%であった。
(七)旋磁法 :旋磁機(磁石ディスクが回転する機械)を頭部の刺激区に置いて治療をした。宋氏は、麻痺肢体と対側の頂顳前斜線に旋磁機を置き、構音障害、筋力などについて薬物鍼灸グループと比較観察した結果、旋磁機グループの方が構音障害と主要な筋肉群の筋力の改善では、はっきりと対照群の薬物鍼灸グループより勝っていた。
(八)頭鍼にマッサージを加える :謝氏は、頭鍼では運動区を主とし、病状に合わせて感覚区、足運感区、言語区などを加えた。穴区を選んで刺鍼し、捻鍼はせずに刺鍼部位の上から5分間マッサージし、10分休息したあとで再びマッサージし、そのあと肢体をマッサージする。一ケ月を1クールとし、治療間隔は3〜4日開ける。60例を治療して、臨床治癒42例、特効12例、好転3例、無効3例であった。
(九)穴位注射 :徐氏は、頭穴と体穴へ交互に夏天無注射液を穴位注射して、64例の脳梗塞患者を治療した。その結果、治癒18例、特効27例、好転16例、無効3例だった。
(十)梅花鍼 :梅花鍼を使って脳の血液供給不全を治療して、優れた治療結果を得た。百会穴と後頭部を取り、頭頂部から下に向かって髪際に至るまで中刺激で叩刺する。頭頂から下へ網目状に、一分間に90回程度の割合で少し縦に叩打する。叩打するときは患者が少し痛みを感じる程度に、局部の皮膚が紅く潤んだり、少し盛り上がる程度に叩打し、出血させてはならない。28例を観察したところ、特効14例、進歩12例、無効2例だった。

三、健康回復の基準
中風による麻痺性疾患に対する鍼灸治療は、その独特な治療効果によって医学界に公認されている。しかし中風の健康回復の基準は、現在でも統一されておらず、基準になる方案もないので、ほとんどが治癒、好転、無効などと大ざっぱに治療効果を分けられており、どの程度のものがどれぐらいよくなったのか正確に判らない欠点がある。判定基準の多くは1981年に衛生部の定めた「病院入院患者の疾病治療効果の評定基準(施行案)」に基づいておこなっている。この基準は主に医療の見地から、臨床観察を判定する指標としたり、治療結果を評価するものであるが、完全なものというには不満がある。臨床観察を正確に判断するには無理があるし、学術交流の障害にすらなる。そのため適切で実用的な統一規格で、健康回復の程度を正確で細かく表せる基準が必要となる。そのため、以下の基準を提唱する人がある。
健康回復の指標は5段階5項目によって評価し、予後や治療効果は4段階4項目によって評価する。
(一)中風の健康回復の指標
1.職業能力:意識、知能は5級、運動(肢体や嚥下)機能は5級、言語能力は5級、知覚は4級以上、自律神経の状態は5級、患者が発病する前に従事していた仕事ができる。
2.生活能力:意識、知能は4級以上、運動機能は4級以上、嚥下機能は5級、言語能力は4級以上、知覚は3級以上、自律神経の状態は4級以上が日常生活ができる。
3.身の回りのことが自分でできる:意識、知能は4級以上、運動能力は3〜4級以上、嚥下機能は4級以上、言語能力は4級以上、知覚は3級以上、自律神経の状態は4級以上である。
4.運動機能:意識、知能は2〜3級以上、運動機能は2〜3級以上、運動機能は2〜3級以上、嚥下機能は2級以上、言語能力は2級以上である。
5.生命機能:意識、知能は1級、運動機能は1級、知覚は1級、自律神経は2級以上、運動ができないかほとんどできず、生命維持の機能のみがある。

(二)意識、運動、知覚、自律神経の状態の段階

1.意識と知能は5段階に分ける。
5級:意識がはっきりしており、計算能力、判断力および理解力が鋭敏で、正確である。
4級:意識がはっきりしており、計算能力、判断力および理解力が遅いが、正確である。
3級:意識がぼんやりしており、計算能力、判断力および理解力はあるが、正確でない。
2級:意識ははっきりしているが、精神や行動が異常で、老年性の精神障害や、動脈硬化による痴呆症などがある。
1級:昏睡状態や植物人間。

2.言語能力。
5級:流暢に喋り、発音もはっきりしており、音声も正確で、会話が完全にできる。
4級:言葉は拙いが一貫性があり、発音がはっきりしているか明瞭さに欠ける。音声は正確だが会話能力は不完全。
3級:言葉が拙く、一貫性がなく、言葉もはっきりせず、音声ははっきりせず、会話能力は部分的に喪失している。
2級:喋ろうとする動作や意思を示すが、言語能力はなく、会話による交流ができない。
1級:喋ろうとする動作や意思を示さない。

3.運動機能
身体の運動
5級:筋力5級で、関節の運動範囲も正常。筋肉の張力にも変化がなく、動きが俊敏で正確で、運動機能が完全である。
4級:筋力4〜5級で、関節の運動範囲は軽度に変化し(不全か過度)、筋肉の張力にも軽度の変化があるが、動作は正確で完全な運動ができ、運動機能もほぼ完全である。
3級:筋力が3〜4級で、関節の活動は不全か過度で、筋の張力が変化し、完全な動きができない。
2級:筋力は2級で、関節は動くが抵抗に逆らえない。筋肉の張力が変化している。
1級:筋力が0〜1級か、固有筋の張力変化がある。

嚥下機能
5級:嚥下運動が正常で、声も正常、咽頭反射も正常。
4級:たまにむせることがあるが、咽頭反射は正常で、発声に変化がなく、嚥下運動も良好。
3級:むせて、咽頭反射は減弱しているか亢進していたり、嗄声で声が出ない。嚥下困難があるが、食事はできる。
2級:むせるので食事がしにくい。食事はできるが咽頭反射にはっきりと異常があり、嚥下はできるが、嗄声が伴う。
1級:嚥下運動ができず、咽頭反射がなくなったり嗄声が伴い、全く食事ができない。

4.知覚機能
5級:知覚が正常(深部、表層部および、図形や距離などの特殊感覚も全て正常)で、反応も敏感で正確。
4級:いかなる刺激も知覚でき、部位も正確だが鈍い。
3級:刺激は判るが、鈍くて部位も正確でなかったり、腫れぼったい、痺れる、痛むなどの知覚異常がある。
2級:強い刺激は判るが、反応が鈍くて部位も不正確、知覚過敏があったり、昏睡状態で刺激に反応する。
1級:いかなる刺激に対しても感覚がなかったり、昏睡状態で刺激に無反応。

5.自律神経:心、肺、尿、便、汗などの項目で、原発性疾患による病変を除いたもの。
5級:心拍数、呼吸、尿便および汗に異状がないもの。
4級:心拍数、呼吸には異常がない。尿や便の異常(失禁や貯溜)があるが、自分で感覚がある。または発汗異常があり、血圧の変化はあるが安定している。
3級:心拍数、呼吸には異常がない。尿や便の異常(失禁や貯溜)があって、自分では感覚がない。または血圧に変化があり、安定していない。
2級:心拍数、呼吸には異常があるが、速さとリズムを含んでいる。しかし心肺機能はまだ良い。血圧の変化があったり、尿や便の異常がある。
1級:心肺機能が、すでに衰弱している。

(三)治癒した後の判定基準 :障害の残った程度。
1.職業能力、生活能力があるものを臨床治癒とする−−障害度0。
2.自分で身の回りのことができる−−障害度1。
3.運動機能−−障害度2。
4.生命機能−−障害度3。

(四)治療効果の判定基準 :鍼灸の治療効果の指標。
1.特効:回復を示す指標が、三段階以上好転したか、症状や徴候がほとんどなくなったものを特効とする。
2.進歩:回復を示す指標が二段階上がったものを進歩とする。
3.有効:回復を示す指標が一段階上がったものを有効とする。
4.無効:回復を示す指標が一段階も上がらなかったものを無効とする。
指標の内容は、意識、運動、嚥下、言語の四項目とする。

第二節 脳出血
脳出血の主な後遺症は脳性麻痺であるが、前節の方法で治療する。脳出血の急性期に関しては異なった意見があるが、大多数、とくに現代医学では脳出血の急性期には頭部に刺鍼すべきではないと考えている。しかし古人は急性期に、また意識不明の状態(中臓腑)でも鍼灸治療をしてよいと考えているが、ほとんどが伝統的な肢体の経穴を使って治療しており、頭穴だけを使うことは稀である。現在我々は頭穴を使って治療し、嬉しい兆しが見えている。我院の東氏は24例の脳出血患者(全てCTで検査済み)、発病して一日以内のもの7例、一週間以内のもの6例、一ケ月以内のもの6例を治療し、その結果を観察したところ、脳出血に対する頭穴の治療効果は顕著なものであったと報告した。発病してすぐに頭鍼を使ったものの治療効果は特に優れており、発病してからの時間が短いほど回復しやすくなり、治療効果も高い。彼等は患者5例の治療中に、たびたびCTで検査を繰り返し、脳出血の片麻痺回復と脳出血の血腫の吸収は関係があり、出血した血液の吸収が速いほど、出血部分がきれいになればなるほど、回復の程度がよいと結論付けた。これは刺鍼によって脳の出血した部分の血液が吸収されてなくなることを示している。東氏は別の論文で、急性期の脳出血患者に頭鍼治療して観察し、脳出血の急性期に頭鍼治療を使ってもよく、またそのほうが治療効果がはっきりしており、急性の脳出血患者の筋力を回復させるのに、明らかな促進作用があるとしている。頭鍼グループと現代薬グループを対比したところ、頭鍼治療では脳内の血腫の吸収を促す効果があり、現代薬だけを使った治療とは明らかな差があった。しかし症例が少ないので結論を出せず、確認の追試がおこなわなければならない。また急性の脳出血に頭鍼治療を採用するかについては、病巣部の出血が止まるかとか、生命の指標が安定しているかを基準とすべきだが、その具体的基準を次に提示する。

一、急性脳出血に対する頭鍼治療の適応症
1.意識がはっきりしているか、意識障害が軽いもの。
2.血圧が180/110mmHg以下のものか、処置をして血圧が安定しているもの。
3.大脳半球に出血があり、血腫が限局されており、脳全体の徴候が比較的軽いもの。
4.大脳半球の白質に出血があり、血腫が20m 以内のもの。
5.病状はひどくても、処置をして上の基準に達したもの。
6.意識障害の比較的ひどいもの、脳膜刺激症状のはっきりしているもの、両側の病理反射が陽性のもの、共同偏視などがあるものでは、細かく病状を観察して頭穴治療を応用する。

二、急性脳出血の頭穴治療の禁忌症
1.脳幹の出血、脳室の出血、内包の出血および視床下部が損傷したもの。
2.大脳半球の出血したもので、出血が20m 以上あるもの。
3.脳出血のため脳ヘルニアを併発していたり、脳ヘルニアの兆候があるもの。
4.脳出血のため、脳−心臓、脳−胃腸の症状を併発しているもの。
5.脳出血症状が徐々に激しくなっているもの、特に生命の指標(意識、血圧、呼吸、心拍、体温、瞳孔)に変化があるもの。
6.頭穴の治療期間、病状が再発したりひどくなるもの。

第三節 震顫麻痺や舞踏病と運動失調
震顫麻痺と舞踏病は錐体外路の病気であり、舞踏震顫控制区、運動区を使ったり、平衡区を加えたり、前頂、通天、承霊、懸顱などの経穴を使ったりして、一定の効果を挙げている。この方法は、それ以外の錐体外路の病気、例えば痙性斜頚などにも使える。
運動失調は、大脳半球の病変によって起こったり、脊髄の病変によって起こったり、小脳の病変によって起こったりし、運動区、平衡区、暈聴区などを使って治療する。また天衝や通天を使ってもよい。ある人は精神情感区に電気鍼を使って、ジクロルボス中毒による頭部が左右に小刻みに揺れる震顫を、15回の治療で治癒させた。

第四節 癲癇
1.運動区、感覚区、癲癇区に羊腸線を埋め込むか、電気鍼をおこなう。
2.大発作には胸腔区(両側)、舞踏震顫控制区(両側)を使い、小発作には運動区、制癲区を使う。精神的な発作には暈聴区を使う。一部の患者には胸腔区、運動区に3〜5日鍼を入れたままにし、毎日セルフマッサージさせる。数例の患者には神門、足三里、三陰交などを加える。
3.運動区、情感区、感覚区を使い、毎分150〜200回のパルス電流を流す。
4.脳電図に基づいて病巣を定め、相応する部分(前頭部、頭頂部、後頭部、側頭部など)にすばやく刺鍼し、大きく捻転するか626治療機で通電する。
5.額中線、頂中線、頂旁1線、枕上正中線に、古来の経穴の長強、腰兪、大椎、陶道、四神聡などを組み合わせ、頭穴は少し捻転したあとG−6805電気鍼器を接続し、低周波のパルス電流(毎分70回)を20〜30分通電する。発作の激しいものは通電時間を延長し、最長3時間通電してよい。また体鍼と比較したところ、治療効果は体鍼よりも優れていた。著者が感じるには、初期には彼等は、強い刺激で長時間置鍼して通電したほうが効果があると考えていたが、のちには軽微な電気鍼刺激や、単に20分ほどの置鍼でも効果があることを発見した。時には子供の患者に対して、数本の鍼で点刺(約0.1寸の刺鍼)して頭穴範囲につなげても効果があった。しかし動物実験では、電気刺激の強弱は癲癇波の抑制と一定の関係があるようだ。治療時間は長くなければならず、最初の3〜6ケ月は一日置きに1回おこない、癲癇が収まったら徐々に治療間隔を開ける。
6.実験によれば、頭穴はペニシリンによって起こった癲癇様の脳波放電を抑制することができる。

第五節 仮性球麻痺
仮性球麻痺は、両側の皮質の脳幹束が損傷されたことによって起こる。いろいろな原因によって起こるが、もっとも多いのは脳血管障害である。咽喉の筋肉が麻痺すれば、水を飲むとむせる、嚥下困難、嗄声、涎が流れる、こわばって泣いたり笑った表情になるなどの症状が起こる。以上の症状のために病人は食事できなくなることが多く、気管の感染を起こしたりする。その治療方法は
1.選穴:言語T区、百会、神庭、?門、廉泉、人迎に刺鍼し、すばやく捻転する。一般に3回捻転して30分置鍼する。?門と廉泉は置鍼せず、人迎は提挿操作をしない。
2.唖穴(4穴あり、頚前2穴は人迎と水突の間で胸鎖乳突筋の前縁、頚後2穴は風池の上0.4寸で胸鎖乳突筋の停止部)を主穴とし、上廉泉(廉泉の上1寸)、天容(両側)を組み合わせ、舌根部に向けて直刺する。そのあとG−6805の電気治療器を使い、毎秒3ヘルツのパルス間隔で20分通電する。
3.二つグループの基本穴を交替で使う。第一組:四神聡、風池、心兪、膈兪、肝兪、脾兪、腎兪。第二組:四神聡、天柱、肩?、曲池、合谷、通里、環跳、陽陵泉、足三里、絶骨、太衝、廉泉。毎日一組を取り、25〜30分置鍼する。肝陽上亢には陰谷と内庭を加え、風痰 血には豊隆と天容を加え、気虚血?ならば関元と血海、太谿を加える。
4.風池(両側)は対側の眼窩に向けて0.5〜1.0寸の深さに直刺し、大きく速く2〜3分捻転する。提挿操作はせずに、全部で3遍捻転する。?門は、ゆっくりと直刺で刺入し、得気があったら捻転せずに抜鍼する。
5.運動区の下2/5、胃区、舌区、舌下区(オトガイ下の筋腹の両側)から鍼尖を舌根の方向に刺入する。

第六節 尿失禁、頻尿
1.足運感区を使って神経性の頻尿を治療する。
2.足運感区、生殖区を主とし、脳卒中による大小便の失禁を治療する。一般的な脳卒中取穴のほかに、大小便の失禁では上の穴区に通電し、重症だったり効果がなければ関元、三陰交、次?を加える。中臓腑、中経絡のどちらにも使える。さらに両側の足運感区を主とし、関元穴を組み合わせて脳卒中後遺症による大小便の失禁を治療し、優れた効果を上げている。
3.両側の足運感区を使い、鍼を刺入後すばやく3〜5分捻転し、これを3遍繰り返すかG−6805型治療器を接続し、3分間刺激して10分で抜鍼する。午後や睡眠前に刺鍼すると効果がよく、夜尿症や頻尿に優れた効果がある。また足運感区を使って尿崩症を治療し、効果を上げた報告もある。
4.百会穴に薬物注射をして脳性の尿失禁を治療する。薬物は:アセチルグルタミン酸100mg、フルスルチアミン20mg、γ−アミノブチル酸250mg(いずれか一、二種類を選ぶ)を一日置きに1回穴位注射し、10回を1クールとして各クール間は3日開ける。治療した患者は2〜25才で、病歴は2〜25年だった。50例を治療して、治癒37例、有効7例、無効6例だった。

第七節 肢体の浮腫
著者は血管舒縮区と運動区を使い、胸のつかえや腹の脹れには胸腔区と胃区を加え、脳卒中によって起こった患肢の浮腫を治療し、満足できる効果があった。

第八節 除脳皮質症候群
除脳皮質症候群は、大脳皮質が重症で広範な損傷を受けたことによって、昏睡状態、痙攣などの症状が起こるもので、いわゆる植物人間と呼ばれる状態である。李氏は1973年に運動区、精神情感区、言語区、視区、暈聴区、強壮区などを使って2例の患者を治療した。一例はメトリホナート中毒によるもので、もう一例は溺れたために起こったものだが、どちらにも優れた効果があった。趙氏は1988年にも8例を報告している。彼等は最初に頭穴を使い、あとで頭穴に肢体の経穴を加えた。彼等の体験では
1.早期治療の効果がよいので、支持的療法をおこなった上に、できるだけ早く刺鍼治療を実施するべきである。
2.病状に基づいて、頭穴の運動区、精神情感区、視区、暈聴区、言語区などを選んで使う。肢体の経穴では、心包経、心経、肝経、胃経の経穴を使う。
3.頭穴療法は、肢体の経穴より効果が優れている。
4.手による捻鍼は、電気鍼よりも効果が優れている。

第九節 知力低下と知能の増強
1. 氏は妊娠期や分娩中に有害な影響を受けたため、脳無発育、知能低下、言語や肢体の機能障害がある学齢期前の児童を選んだ。主に智三鍼を使い、症状に合わせて頂顳前斜線、顳前線、顳後線、枕下旁線などを組み合わせたものと、健脳精(リジン、ビタミン)を使ったものを対照群として一年治療をおこない、追跡調査を一年おこなったところ、刺鍼グループ37例は有効率が70.27%であったが、薬物グループ13例は有効率が15.38%であった。
2.ある人は、風府、百会、四神聡、大椎、?門に腎兪、絶骨などを組み合わせて大脳の発育不全や水頭症、舞踏病などを治療した。
3.ある人は記憶量表を使って、被験者117例の百会穴に刺鍼し、短時間の記憶に対する影響力を調べた結果、補法で刺鍼したとき記憶商の水準が上がり、対照群と比べてはっきりとした差があった。

第十節 試験症候群
試験症候群は競技症候群の一つで、試験前や試験中に心臓がドキドキしたり、呼吸が苦しくなったり、目まいや頭痛がしたり、イライラしたり、汗をかいたり、悪心や嘔吐、下痢となったり、目がぼんやりしたり、手が振るえたり、知能が低下したり、考えがまとまらなくなったり、血圧が上がって失神し、また精神の異常をきたしたり、ひどい場合には死に至るものである。著者は大学の試験で32例を治療し、1例を除いて症状がすぐに治まった。彼等は試験の前日に8時間ほど置鍼をしておけば試験症候群を予防することができ、治療しなかった対照群と比較すると、はっきり差があるといっている。

第十一節 目まい
1.四神聡、両側の風池、大椎を主穴とし、豊隆、足三里、三陰交、内関、神門、腎兪を配穴する。また百会、神庭、頭維を使ってメニエル病や脳動脈硬化、頚椎症などによって起こる目まいを治療する人もある。
2.鼻咽口舌区、暈聴区を主とし、胸がほてる、不眠、夢ばかり見るなどの症状のあるものには精神情感区を加えて、手で捻転するか電気鍼治療をおこなう。
3.暈聴区と平衡区を使って50例のメニエル病を治療し、追跡調査したところ40例は治癒していた。
4.両側の暈聴区に百会、合谷、太衝、太陽、聴宮を組み合わせる。
5.麦粒大の灸(50壮)を百会穴におこない、高血圧、メニエル病とストレプトマイシン中毒によって起こった目まいを治療した。
6.百会穴に圧灸をすえる。百会穴の髪の毛を根部から鋏で中指の爪の大きさに切り取って穴位を顕にし、患者を低い椅子に座らせる。大豆大の艾 を作って、最初の二壮は一緒に百会穴に載せ、半分ぐらい燃え尽きたときに右手で厚紙を持って押さえて消し、モグサを残す。そのあとは一壮終わったらまた一壮と、前の燃え残ったモグサの上に載せて燃やすが、それらは煙が出なくなるまで燃やす。一壮燃え尽きたら押しつけ、押しつける圧力も最初は軽いが徐々に強くする。こうして25〜30壮すえて、患者に熱が頭皮から脳内に染み込んで行くような感じを起こさせる。こうして177例を治療した結果、治癒156例、好転19例、無効2例だった。著者の体験では、メニエル病の発作時には百会穴の感覚がなくなるので、百会穴がこの病気の特殊反応点と言える。だから百会穴の知熱感度の測定は、病状の程度を示す客観的な指標になる。
7.百会の灸を主とし、左の耳鳴りならば左に0.5cm寄ったところ、右の耳鳴りならば右に0.5cm寄ったところ、両側の耳鳴りならば正中を取る。まず鋏で髪の毛を1cm2 ぐらいの大きさに切り取り、少量のワセリンを塗って、ピーナツ程度の大きさの艾?で灸をすえる。熱くてたまらなくなれば艾 を取り替え、50〜70壮すえる。灸を終わったら足三里に刺鍼する。灸をしたら半月は頭を洗ってはならない。灸瘡ができたら衛生に特に注意しなければならない。耳聾、耳鳴りにも対症取穴する。病気が慢性となって体の弱ったものは六味地黄丸を服用し、病気になったばかりで身体が丈夫なものには龍胆瀉肝丸を服用する。

第十二節 発作性の嗜眠
趙氏は鼻交穴(鼻梁の正中線上で、鼻骨と軟骨の境目)から鼻尖に向けて0.2〜0.3寸刺入して小刻みに捻転し、得気があったら置鍼する。神門と三陰交を配穴する。20分置きに一回捻転し、全部で一時間ほど置鍼する。72例を治療して、治癒45例、有効21例、無効7例だった。

第十三節 小児の発熱によるヒキツケ
ある人は、百会に6時間置鍼した。痙攣発作には人中に刺鍼し、高熱には大椎と曲池、合谷に強刺激し、嘔吐するものは上?、梁門、気海、内関を加え、腹が脹るものは中?と章門を加え、下痢するものは足三里と天枢を加え、咳嗽するものは肺兪を加え、顔が黄色くなって身体が弱り、食欲がないものには四縫を加える。全て置鍼しない。全部で百数例を治療し、40例は2〜5年の間観察をした。その中の2例は再び高熱のためヒキツケを起こしたが、再度の治療の後で2年間発作が起こっていない。著者は、高熱によって癲癇様のヒキツケが起こるのは15〜20%だが、それらの患者のうちで一例も癲癇となるものはいないと考えている。

第十四節 脊髄損傷と末梢神経の損傷
1.運動区を使って急性脊髄炎、前脊髄動脈血栓症および脊柱骨折、脊髄横断性損傷を治療し、優れた効果を挙げた人がある。
2.ある人が、患肢と対側の上肢運動区と感覚区を使って、橈骨神経の損傷を5例、12〜60日間治療したところ、全てに顕著な治療効果があった。捻転を30秒続けて、肢体に感伝現象が現れたら、さらに5分間捻転を続ける。このような捻転を3遍続ける必要がある。

第十五節 頭痛
1.両側の安神区と感覚区の下2/5を使って、血管性頭痛を治療する。
2.高血圧性の頭痛では、両側の太陽と印堂を主穴とする。前頭部が腫れぼったく痛むものには百会を加え、激痛には四神聡を加え、うなじのこわばりを伴うものには両側の風池を加え、目まいがして倒れそうになったり、目がかすんだり、耳鳴りがするものには両側の頭維を加える。三 鍼を使って、それぞれの穴位を2mmの深さに刺鍼し、各穴から5〜10滴出血させる。
3.両側の翳風穴は片頭痛を治療する。著者は22年にわたる実験により、両側の翳風穴のみを使い、対側の乳様突起に向けて1.5〜2寸の深さに刺入し、鍼感を咽喉または舌根部に放散させる。そして脳の血流を観察すると、患者にはっきりした変化があった。
4.前頭痛には、両側の感覚区の上2/5、血管舒縮区の上2/5、印堂から両?竹への透刺、両側の瞳子?から太陽への透刺、両側の懸鐘にショウガ灸をおこなう。片頭痛は、患側感覚区の下2/5、太陽から率谷への透刺、液門から中渚への透刺をおこなう。後頭痛は、両側の感覚区の上2/5、両側の足運感区、両側の玉枕から前に向けて正中線と平衡に1.5〜2寸、両側の風池、両側の天柱に刺鍼する。頭頂痛は、両側の感覚区の上2/5、両側の足運感区、百会、両側の湧泉、両側の申脈を使う。著者の体験では頭鍼と鍼灸を併用したほうが、単に頭鍼のみを使ったときや鍼灸だけを使ったときに比べて治療効果が速く、再発もしにくく、治療時間も少なくて済むようだ。
5.主穴:懸顱から率谷への透刺する。眼窩上神経痛には?竹、太陽、禾?を加え、頭頂痛には四神聡を加え、後頭部からうなじが痛むものには風池と崑崙、風門の灸を加え、鼻炎には通天、印堂を加え、不眠には三陰交、?竹、神門を加える。主穴は三回すばやく捻転したあと抜鍼し、ショウガ灸を4〜5壮すえる。
6.ある人は血管舒縮区、精神情感区、感覚区を使って、いろいろな原因によって起こる頭痛を治療した。

十六節 高血圧症
1.方氏は、主穴に書写、呼循、思維、聴覚を取り、伏象の頭部を組み合わせ、症状の違いによって中医辨証施治に基づいて随証加減した。その結果、血圧が下がっただけでなく、症状、心電図、血中脂肪と眼底なども改善された。
2.ある人は、方氏頭鍼の伏象や伏臓と対応する穴位に刺鍼して心電図の変化を観察し、心電図の再分極波に影響を与えることを証明した。
3.百会穴の灸はショウガ灸から始め、満足できる効果がなければ棒灸を使った雀啄灸に変えると効果がある。
4.胸腔区、感覚区、暈聴区を使って延べ102人を治療し、延べ31人に変化があった。

第十七節 精神病
1.ある人は、神庭、眉衝、臨泣、本神、前頂、百会などを取り、精神分裂病を治療した
ところ、有効率80%であった。
2.百会と印堂に刺鍼して精神分裂病を治療する。得気があったら電気鍼治療機に接続し、パルス間隔24回/分で、毎回1時間、一日1回治療をする。ある人は情動性精神病のウツ状態を百会と印堂に電気鍼して治療したものと、塩酸アミトリプチリンで治療したものを比較し、電気鍼は塩酸アミトリプチリンと同じような効果があることを証明した。3例は電気鍼が無効だったが、塩酸アミトリプチリンに変えても、やはり効果がなかった。
3.額中線、頂中線、任脈と督脈の経穴を使って、更年期の憂鬱症を治療した。
4.額中線、額旁1線、額旁2線、額旁3線を取る。暴れるものは鳩尾と足三里を加え、幻覚があれば聴宮、風池、外関を加え、はっきりとウツ症状があるものには通里と神門を加え、胸や胃にしこりがあって膨れたようであれば豊隆と?中を加える。脅迫観念がはっきりしていれば四神聡と豊隆を加える。
5.幻覚の治療では、後頂から百会への透刺を主とする。幻視には正営から目窓への透刺を加え、幻聴には顱息から翳風への透刺を加え、幻味には頭竅陰から天柱への透刺を加え、幻臭には承光から五処への透刺を加え、幻触には百会から正営への透刺を加え、前庭性幻覚には風府から風池への透刺を加え、内臓幻覚には頭竅陰から顱息への透刺を加える。沿皮刺で刺入し、捻転と震顫術を1〜3分おこなったあと、気が病の場所に至ったら1〜3時間置鍼する。一日1回治療をする。
6.薛氏は電気鍼ショックによる精神病の治療を研究している。百会と人中への刺鍼は、過去の電気ショック療法に較べると使う電流が1:27.5で、刺激時間も短くて済む。研究によれば、刺激量が小さければ痙攣も緩く、意識不明も軽く、呼吸の抑制も軽く、治療の安全性を高め、治療効果にも影響を及ぼさない。

第十八 疼痛性疾患
1.頭面の疼痛:頂顳前斜線、天衝から率谷への透刺。胸腔や上肢の疼痛:額旁3線、本神から頭維への透刺、あるいは額旁1線、眉衝から下に向けて一寸刺入する。腹部の疼痛:額旁2線、正営から承霊への透刺。骨盤と下肢の疼痛:頂旁1線、通天から絡却への透刺。全身や脊柱の疼痛:頂中線、前頂から百会、百会から後頂への透刺。三つの機関で505例の症例を観察し、98.44%の有効率だった。刺鍼方向について彼等は、全ての外感疾患や体表筋骨機能障害では、前の穴から後ろに透刺し、内傷疾患や内臓の器質性疾患では、後ろの穴から前に透刺するべきだと考えている。
2.足運感区を使って足跟痛を治療する。X線検査によって骨棘が確認された25例を治療し、特効があったのは14例で、有効率は84%だった。百会穴を使って足跟痛を治療しても、優れた効果があった。
3.頭穴によって肩関節周囲炎を治療する。ある人は、頂顳前斜線を選び、中1/3のところから刺鍼(片肩には対側、両肩なら両側)した。前が痛ければ鍼尖を陰面に向け、後が痛ければ鍼尖を陽面に向けて刺鍼し、1時間置鍼して10〜30分ごとに一回抽気法を使って運鍼すると同時に肩を運動させる。ある人は、上の方法を基にして、痛む点に少し指圧を加えるとよいと主張している。またある人は、百会から角孫に透刺し、痛みのひどいものには養老、魚際、後谿を加えた。
4.腰痛や捻挫、痺証(痛み):ある人は、枕上正中線は督脈腰痛を治療でき、枕上旁線は膀胱経腰痛を治療できる。これはギックリ腰や疼痛も治療でき、椎間板ヘルニアによる腰痛にも使えると主張している。ある人は印堂穴(下に向けて一寸刺入する)を使うとよいと主張している。またある人は、枕上旁線を使ってギックリ腰を治療すると主張している。またある人は頂中線と頂旁1線を使って、様々な原因で起こる腰腿痛を治療できると主張している。またある人は感覚区に刺鍼し、風池と内関をマッサージして椎間板ヘルニアを治療すると主張している。
5.坐骨神経痛:ある人は、百会から通天への透刺を使い、環跳、八?、大腸兪を加え、適当に上、下肢の経穴を加えて治療する。
6.上腕骨外側上顆炎:俗にテニス肘と呼んでいる。頂顳前斜線の中1/3を使う。片側だけならば対側を使い、両側の肘ならば両側の頂顳前斜線を使って、ゆっくり押し込み強く引き上げる提挿操作を繰り返す。
7.ある人の報告では、伏象の対応する部分を使って痺証と捻挫の痛み300例を治療したところ、痺証の有効率は95.17%、捻挫の有効率は98.34%、坐骨神経痛の有効率は97.05%であった。
8.ある人は急性の胆道仙痛に、左側の額旁2線を取り、刺鍼して瀉法したところ痛みは直ちに止まり、2日間置鍼すると再発しなくなった。
9.頂中線、頂旁1線、頂旁2線を取り、抽気法を使って「急性潜在睾丸症」を治療したところ、30分後に腹腔に入っていた睾丸が陰嚢に降りてきて痛みは消え、諸症状もすべてなくなった。
10.三叉神経痛:対側感覚区の下2/5。
11.顎関節炎:対側感覚区の下2/5。

第十九節 五官の病気
1.上星穴で鼻血を治療する。
2.印堂から鼻根へ透刺して慢性鼻炎を治療する。10〜20秒すばやく捻転したあと30〜40分置鍼し、棒灸で30〜40分温和灸する。
3.電気頭鍼で眼筋麻痺を治療する。眼球の協同運動中枢(前頭部の髪際を2cm入ったところで、中縫線の横2cm)と視区を主とし、麻痺筋肉の近隣 穴を加える。例えば動眼神経不完全麻痺ならば、承泣、魚腰、睛明、絲竹空を加え、外側直筋麻痺ならば風池、瞳子?、球后などを加える。
4.近視:@承泣を主とし、翳明、風池を配穴する。A枕上旁線と額中線を取る。
5.急性結膜炎:両側の視区に通電する。
6.枕上旁線、頂顳後斜線の下2/5、額中線、額旁1線を交替で取り、すばやく切皮して皮下に刺入し、深層の骨膜に至ったら捻転せずに30分置鍼する。春季カタル性結膜炎、中心性網膜炎、ウイルス性角膜炎、慢性緑内障、近視、角膜斑、眼球震顫など150例を治療した。彼等は、近視では青少年の仮性近視に効果的で、角膜斑では二ケ月以上の治療期間が必要である。そして眼球震顫は症例が少ないので、引き続き研究しなければならないと考えている。
7.色盲:王氏と呂氏は、枕上旁線、頂顳後斜線の下2/5、額旁1線を使って、100例の色盲患者を治療したところ、その治療効果は95.2〜97%に達した。
8.翳風から曲鬢への透刺(翳風穴から前上方に向けて刺入し、耳介軟骨の下方を経て曲鬢まで透刺する)と絲竹空で、中心性漿液性網膜症患者74人を治療した。方法は、二穴へ必要な深度に刺入したら、捻鍼と提挿操作を組み合わせて鍼感を眼区に誘導し、眼に鍼感が達したらパルスを20〜30分通電する。片方だけの眼に病変があるものは患側の二穴を取り、両側の眼に病変があるものは二つの穴位の中の一つを選んで両側に刺鍼する。一週間に3回治療して10回を1クールとしたところ、治癒42眼、特効16眼、進歩24眼、無効8眼だった。病歴が一年以内のものの効果が比較的優れていた。
9.遅氏は、耳聾頭鍼の1、2、3、4、5号穴を使って難聴を治療し、優れた効果があった。林氏は声記憶区、言語形成区、顳三鍼、両側の言語区(ブローカの中枢)などを取り、神経性難聴163例を治療し、満足できる効果があった。
10.耳鍼、頭鍼、体鍼を併用して聾唖を治療する。頭鍼は暈聴区。耳穴は腎と枕。体穴は聴宮と翳風を取る。大多数の患者で症状が明らかに改善した。
11.視区に電気鍼して、視神経萎縮を治療する。
12.視区に電気鍼するか、帯鍼法あるいはビタミンB1 注射などで、白内障と近視を治療する。

第二十節 脱毛症
防老穴(百会の後ろ1寸)を主とし、頭維と上星を配穴して補法する。一日1回治療して10回を1クールとし、数ケ月から半年治療を続ける。特効がある。ある人は、風池、後頂、大椎などの経穴と肢体の経穴を梅花鍼で叩刺して脱毛を治療し、満足すべき効果があった。





第五章 頭穴のメカニズム

1970年代から頭穴の作用メカニズムの研究が始まり、ずっと続いてきた。臨床治療経験に基づいて、現代科学の機器を使い、先進的な実験方法を駆使し、いろいろな刺激を頭穴に与えて生み出される生理的、生化学的変化を様々な角度から検討し、頭穴のマクロ的領域だけでなくミクロの分子領域の理化学的変化を証明し、頭穴メカニズム研究に新しい発想を開拓し、基礎を築いた。現在までに判っている頭穴の作用メカニズムについて、以下に紹介する。

一、レオエンセファログラフィー
実験によって、頭穴は脳血管障害患者のレオエンセファログラフィー(脳の血流)を明らかに改善することが証明された。盛氏は、両側の安神区(経外奇穴。眉の中点の上2cm)と両側の感覚区の下2/3に刺鍼し、34例の血管性頭痛患者を治療して82.2%の治療効果を得た。レオエンセファログラフィーの指標も好転し、両側の振幅も高くなり、上昇時間は短縮して下降時間が長くなり、流入流出する血液容積は増加し、末梢抵抗指数は低下して、統計ではP<0.05であった。これは脳血管の血液充盈度が増加し、拍動性血液供給も増えたことを示している。孫氏は、百会から曲鬢に透刺してレオエンセファログラフィーに対する影響を調べた。中国製のXy型レオエンセファログラフィーを使って前頭部から乳様突起まで誘導し、20例の患者を中心に、刺鍼前、刺鍼して5分後、10分後、30分後で、レオエンセファログラフィーの波形、重拍波、流入時間と振幅変化を観察した。その結果8例は明らかに波形が変化し、16例は重拍波が変化して、流入時間が平均0.23秒短縮した(P<0.01)。振幅は平均0.26オーム増加した(P<0.01)。これは血管の緊張度が低下し、血流量が増えたことを示している。邱氏は、30例の脳血管疾患とその後遺症患者に刺鍼した結果、7例の患者で波形が明らかに好転し、5例は異常に高くなっていたものが正常になり、15例は重拍波が改善して、抜鍼の後でも10例がこうした変化を保持していた。2例は振幅が劣るものが異常から正常に変わった。ある人が、患側頭部の運動区に刺鍼して20例の脳卒中患者を治療したところ、17例は波の山が小さくなり、14例は波の谷が深くなり、15例で振幅が大きくなり、14例の拍動数が減少して、刺鍼前とは明らかに異なっており、これが治療効果とも一致していて、作用は60分以上続いた。またある人が百会、患側の正営と懸顱に刺鍼して、21例の脳卒中患者を治療したところ、置鍼の間は患者の脳血管が拡張し、末梢抵抗が減少して脳の血流量が増加したが、抜鍼して5分すると小血管の抵抗がいくらか増加することを発見した。

二、脳波
頭部の穴位に刺激を与えると、脳のα波を改善して電圧を上昇させるが、こうした変化は左右非対称に起こる。これは皮質機能の調節と病理状態の回復に作用することを示している。脳波の動態変化は、脳血管障害患者の予後判断に一定の価値がある。ある人が、10例の脳血管障害患者に頭鍼治療し、そのうち1例は両側の脳波にびまん性の徐波が現れていて、頭穴治療したが効果がなかった。病巣性δ波がある5例では、そのうち2例に有効だった。脳波に少し異常があるものは3例で、頭穴治療の結果は全部に有効、1例は脳波が正常で、治療結果も非常によかった。任氏は脳波で病巣部分を特定し、その部分の頭皮に刺鍼して40例の癲癇患者を治療したところ、有効率は85%に達した。そして単に癲癇発作を抑制するだけでなく、脳神経細胞群の異常な放電を改善させることが判った。ある人は研究の結果、頂顳前斜線には脳波を調節する作用があり、癲癇放電を制止させる働きがあって、114例のうち72.6%の患者は、刺鍼後に癲癇放電が停止するか減少し、不正常な脳波を改善させると結論付けた。

三、血液レオロジー
頭部の経穴は、血液レオロジーに対して一定の影響を与える。ある人は、百会と曲鬢などの経穴に刺鍼して、片麻痺患者の血液レオロジー変化を観察した。20例の患者で、刺鍼前と刺鍼して30日後のヘマトクリット、血清粘度、全血還元粘度、血沈、血沈方程Kの値などの5項目を指標として測定した。その結果、刺鍼後は血沈を除いた他の数値は全てはっきりと下降し、刺鍼前と比べるとP<0.01あるいはP<0.05となった。これは刺鍼によって細胞の凝集や血液粘度が明らかに改善されることを示している。単氏などは、風府や?門に刺鍼して脳出血患者の治療を治療すると同時に、血漿凝固繊溶動態測定儀を使って、血漿を凝固させる凝血系とフィブリンを溶解させる繊維素溶解系を測定した。その結果、風府や?門に刺鍼したTグループでは血漿凝固が極めてはっきりと低下し(P<0.01)、一般の治療をおこなったCグループ(P<0.05)より勝っていた。繊維素溶解に要する時間は著しく短縮されたが(P<0.05)、これも一般の治療をおこなったCグループよりも優れていた。つまり風府と 門は血清繊維素溶解系の活性を増強し、フィブリノーゲンの含有量を減少させるが、これは脳出血による血塊の溶解と吸収に有利に作用することを示している。またCT検査の結果も臨床と一致している。薫氏は、妊娠可能年齢女性の百会穴に刺鍼して、卵胞早期血清中の血小板計数と凝血時間の変化を観察した。その結果、辨証せずに百会穴に刺鍼すると血液中の血小板が急激に増加したが、とりわけ補法グループははっきりしていて対照グループの1.34倍にも達し(P<0.01)、対照グループの1.24倍となった瀉法グループ(P<0.05)より明らかに勝り、凝固時間も正常の範囲内で、ややマイナスに変動した(P<0.05)。

四、トロンボキサンとプロスタサイクリン
ある人は、百会穴の刺鍼に対する影響を放射免疫分析技術を使って調べた。92例の妊娠可能年齢女性で、卵胞早期血清中のトロンボキサンとプロスタサイクリン含有量に対する影響を調べた。百会穴に刺鍼するとすぐに反応があった。辨証せずに刺鍼補瀉した2つのグループでは、トロンボキサンが比較対照グループの2.1倍(補:P<0.01)と1.8倍(瀉:P<0.05)となり、プロスタサイクリンは、比較対照グループの1.39倍(補:P<0.05)と1.41倍(瀉:P<0.05)となり、両者の比率はそれぞれ対照グループの1.5倍(補:P<0.01)と1.4倍(瀉:P<0.01)に達した。辨証して刺鍼補瀉したグループでは、トロンボキサンは対照グループの1.50倍(補:P<0.01)と1.51倍(瀉:P<0.01)で、プロスタサイクリンへの影響ははっきり現れなかった(P>0.05)。両者の比率は、それぞれ比較対照グループの1.6倍(補:P<0.01)と1.4倍(瀉:P<0.05)であった。いい加減に補瀉したグループではトロンボキサンの上昇がとてもはっきりしており、補法は瀉法よりも勝っていることが判る。プロスタサイクリンも上昇する傾向にあって、両者の比率も相応に高くなっており、二つの数値を表にすると、はっきりとした正の相関関係となる。辨証して刺鍼したグループを観察すると、トロンボキサンではだいたい同じ結果となったが、変動幅と二つの項目の指標は、やや低かった。この結果、百会穴の刺鍼はトロンボキサンとプロスタサイクリンの代謝調節に効果があるだけでなく、避妊リングによって起こる子宮出血を防止する効果もある。

五、血清環状ヌクレオシド
(cAMPとcGMP)
百会穴の刺鍼で試験場症候群の予防と治療ができるが、これは頭部の?穴が、血中の環状ヌクレオシド(サイクリックヌクレオシドホスフェート)代謝に影響を与え、記憶指数を高めることを証明している。康氏は、放射免疫分析技術と記憶量表の方法を使った。117例の被験者の百会穴に刺鍼し、高校生の短期の記憶に対する影響と血中環状ヌクレオシド量の相互関係を観察した。その結果、刺鍼して補法したグループでは記憶指数が平均8.0高くなり、対照グループとはっきり差があった(P<0.01)。瀉法したグループの記憶指数は平均3.6高くなり、対照グループとそれほどはっきりした差がなかった(P>0.05)。百会穴に補法で刺鍼すると、血中のcAMP含有量は記憶指数に正の影響を及ぼし(P≒0.05)、cGMPは記憶指数と明らかに負の相関関係があり(r=−0.5238、P<0.05)、cAMP/cGMPと記憶指数は明らかに正の相関関係があった (r=−5716、P<0.01)。以上のことから、百会穴に刺鍼すると血中環状ヌクレオシドホスフェートが調整されて、記憶商を高めるのに有益に働き、短時間の記憶力を高め、試験場でパニック状態になるのを防止する。

六、ロイシンエンケファリン
神経ペプチドに対する刺鍼の鎮痛プロセス研究の中では、鎮痛と深い関係のあるエンケファリンの研究が最も進んでいる。多くの資料によれば、エンケファリンはすぐに分泌される一過性の内因性モルヒネ様物質で、鎮痛作用があり、他の内分泌ホルモンの作用を調節する。徐氏は、現代形態学の中で比較的進歩している免疫組織化学−PAP法を使った。ラットの百会穴に刺鍼して、その前後で細胞核内のエンケファリン変化を光学顕微鏡を使って観察し、信頼性のある形態の定位、定性、定量に基づいて、できるかぎり鎮痛メカニズムを明らかにしようとした。手による刺鍼操作をしたグループ10例の動物で、60枚の切片を作り、10倍、40倍、100倍の光学顕微鏡で、刺鍼後の細胞核内にあるロイシンエンケファリンの変化を観察した。その結果、ロイシンエンケファリンは神経の末梢で茶褐色の顆粒となっていたが、何もしなかったグループを染色したものに比べると色が濃くて分布する範囲も広く、核の上半分に多く付着しており、L−ENK顆粒は網状に分布してチェーン状のものもあるが、核の下半分ではエンケファリン繊維顆粒の分布が少ない。顕微鏡下で核のL−ENK顆粒を数えると、 M毎に1002粒あった。電気鍼グループの10例の動物の切片60枚も顕微鏡下で観察したところ、L−ENK繊維顆粒は茶褐色となり、色はもっと濃くなって、さらに広く分布し、網状、チェーン状となって、核の両側のL−ENK分布がほぼ同じである。40倍の顕微鏡下で数えると、1/5M毎に130263粒ある。以上の結果により、刺鍼で鎮痛効果が起こるときは核内L−ENKの神経末梢顆粒が増加することが判った。それぞれのグループの M内のL−ENK顆粒の数を半定量的方法で測定し、統計分析するとP<0.05となり、はっきり差があった。さらに刺鍼前後のL−ENK顆粒量の変化を、免疫組織切片による顕微鏡分光光度法で測定するとP<0.01となって、グループ間に明確な違いがあった。

七、爪ヒダ微小循環
呉氏は、両側運動区の上肢、下肢に電気鍼刺激をおこない、50例の脳血栓患者を治療すると同時に爪ヒダ微小循環を調べたところ、治療前に赤かったものは14人(28%)だったが、治療後には40人(80%)となり、治療前に暗紅色だったものは36人(72%)いたが、治療後には10人(20%)となった。血流が線状に流れていたものは治療前では5人だったが、治療後には14人になった。線粒状に流れていたものは治療前は21人いたが、刺鍼後には28人になった。線状で緩慢に流れていたものは4人いたが、治療していなくなり、P<0.05だった。血流速度は治療前に比べて48.62M/s(P<0.001)速くなった。姜氏は百会穴に棒灸して脳血管障害の患者19例を治療し、同時に爪ヒダ微小循環を観察したところ、百会穴に施灸した前後で爪ヒダ微小循環の血流速度が健側患側とも著しく変化した(P<0.01)。これは百会穴が微小循環を改善し、血液の粘度と血小板の凝集性を低下させ、脳血管の代謝障害を改善し、血液循環を促進させて調整したことを示している。于氏は、 会から上星へ透刺し、脳卒中患者22例の微小循環を観察したところ、粒状に流れていたものが線状に流れ始め、流速も速くなった(P<0.001)。それにより大脳の乏血部分の血液供給が改善され、組織細胞の代謝機能が増強される。

八、血中脂肪の代謝
血中脂肪の代謝の乱れによって脳動脈のアテローム硬化が起こり、血管の内径が狭くなって脳血管障害が起こったする。脂質代謝の乱れは、主にLDL−CとHDL−Cと深い関係がある。程氏は、百会穴に刺鍼して脳血管障害患者20例を治療し、それと同時に高脂血症の対照グループと比較した結果、刺鍼前にコレステロールの高かった患者では、刺鍼後に全員はっきりと下降し、本人自身と比較するとP<0.05であった。また高脂血症グループと較べてもP<0.05で、明らかに差があった。そしてβ−リポ蛋白、トリグリセリドが刺鍼後には両方とも下降し(P<0.05)、とりわけ高分子のコレステロール(HDL)は高くなり、低分子のコレステロールが降下して、刺鍼前後を比較すると明らかに改善されていて(P<0.05)、高脂血症グループとはっきり差があった(P<0.01)。同時に百会穴に刺鍼すると、動脈のアテローム硬化指数AIが明らかに改善することを発見した。これは百会穴に対する刺激が、血中脂肪の代謝に影響し、脳の動脈硬化と脳血管障害の発生を予防することを示している。

九、筋電図
ある人は、デンマーク製のDISA14A20型二波道筋電計を使い、正常人に頭鍼したときの筋電図の振幅に対する影響を測定した。正常人26例で、対側の運動区に刺鍼する。延べ38例で、頭鍼前、頭鍼中、頭鍼後の筋電図を観察し、併せて頭鍼をしていない10例の正常人の筋電図を記録して比較する。刺鍼グループと対照グループで筋電図の振幅を統計処理した。その結果、頭鍼は正常人の筋電図の振幅を明らかに大きくした。こうした振幅の増加は、捻転して15分ぐらいから始まり、刺鍼したのちも35分間ずーっと続く。蒋氏は、片麻痺患者の対側にある運動区の中2/5と手運区に刺鍼すると、頭鍼中と頭鍼後の筋電図の振幅がいくらか増加することを発見した。この増加は刺鍼して15分から始まり、刺鍼後35分間までずーっと続いて、平均して0.09mV増加した。刺鍼してから5分と、刺鍼後45分たった筋電図の振幅は、刺鍼前と比べるといくらか下降しており、一般に0.065mV小さかった。こうした数字を統計処理したが、頭鍼中と頭鍼後の筋電図の振幅変化は、刺鍼前と比べてもはっきりとした差がなかった(P>0.05)。電気鍼グループの10名の患者では、電気鍼して5分後の筋電図の振幅増加に、刺鍼前と比べてはっきり差があった(P<0.05)。陳氏は、複合補瀉手法を使って27例の麻痺患者を観察した。頂旁1線(左)、頂顳前斜線(左)、頂顳後斜線(左)に刺鍼し、刺鍼前と刺鍼後で、四肢の筋電図の振幅に対する影響を調べた。その結果27例の麻痺患者(左の片麻痺9人、右の片麻痺18人)は、刺鍼前では患肢の筋電図の振幅が健側より明らかに低かったが、刺鍼後には四肢の筋電図の振幅が増加した(P<0.001)。そして右側肢体の筋電図の振幅は、明らかに左側の肢体よりも増大していた。頭皮鍼の頂旁1線、頂顳前斜線、頂顳後斜線という三本の基準線には、すべて四肢の筋電図の振幅を増大させる作用があったのだが、統計しても三者の間にはっきりした差がなかった。左側の片麻痺患者で、左側の頭皮鍼の基準線に刺鍼したところ、右下肢(健側)の筋電図の振幅の増大がもっとも際だっていた。包氏は、頭穴による片麻痺治療と時間の関係を研究するうちに、刺鍼して筋電図に効果がすぐに現れるのは、ホフマン反射のM振幅とH振幅が14時20分にあるときで、Aグループ(一日2回刺鍼)はグループ内とグループ間ともにはっきりしており、Bグループ(一日1回刺鍼)でははっきりしていなかった(P>0.05)。ホフマン反射の潜伏期でのAグループは、グループ内で極めてはっきりしていたが(P<0.001)、Bグループでははっきりしていなかった。グループ間の比較では、AグループはBグループより優れていた。干渉電位電圧の変化は、Aグループでは極めてはっきりしていたが(P<0.001)、Bグループではほとんど変化がなかった。波形変化は、Aグループでは刺鍼後、干渉型が30%(15人)から40%(20人)に増加したが、Bグループでは刺鍼後32%(16人)から36%(18人)に増加しただけだった。そのほかの混合型と安静電位も相応の変化をした。刺鍼後の筋電図の長期効果は、ホフマン反射のM振幅とH振幅のグループ内での差がはっきりしていた(P<0.05〜0.01)。グループ間ではAグループはBグループより優れていた(P<0.05)。ホフマン反射の潜伏期は、二つのグループのグループ内で、はっきりしていた(P<0.05〜0.01)。グループ間のAグループとBグループでは、はっきりした差があった(P<0.05)。干渉電位の電圧も明らかに改善し、両グループはグループ内ではっきりしていた(P<0.05)。波形変化は両グループともにあり、干渉型の波形の出現率は増加し、安静電流は減少した。前者はAグループでは刺鍼前に30%(15人)だったのが刺鍼後には60%(30人)となり、Bグループでは刺鍼前に33%(16人)だったのが、刺鍼後には62%(26人)になった。混合型の波形にも相応する変化があった。

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