北京堂が得意とする鍼灸の適応症(基本的には弟子と一緒です)
 鍼は「手到病除」と言われ、即効性があります。手到病除とは、手で掴み出すように病気を取り除くという意味です。鍼の効果を示す言葉として使われます。
 『鍼灸大成』にも、最も即効性があるのは鍼、次が灸、そして薬と、鍼が治療の首位に来ます。

  平均して一回で治るもの(確実に適応症)
 ●ぎっくり腰 ●捻挫 ●寝違い ●肩こり ●しゃっくり ●花粉症(その年は、鼻の症状が良くなります。眼の症状は、今一つ) ●頭痛 ●口内炎や舌炎(再発しなくなるには回数が必要) ●歯槽膿漏や歯茎の腫痛 ●風邪をひいて喉が痛む(肺までいったら無理) ●網膜中心動静脈閉塞(突然の失明) ●肋骨の痛み(肋間神経痛) ●原因不明の腹痛 ●イボ ●くも膜下出血による血腫を消すこと(長年の血腫は、脳が死んでいるので、血腫を消しても脳が快復しません) 


 平均して三回ぐらいかかるもの(適応症)
 ●背中の痛み ●胃下垂 ●突発性難聴(初期) ●顎関節症 ●難聴(急性期なら治ります。五年以上では治らないことも) ●めまい(すべての眩暈が治るとは限りません) ●耳鳴(なかには6回ぐらいかかることもあります) ●不眠 ●喘息 ●更年期障害 ●糖尿病の初期(食事療法が主となります。中期や末期では、あまり効果がありません) ●顔面神経痛(三叉神経痛) ●発汗異常 
●ホクロやアザ
 
なお虫歯や顎関節症がある場合、肩こりや耳鳴り治療の効果がなかったりします。虫歯は、それを先に治療してください。耳鳴は、急に大きな音を聞いて神経が興奮したものや、カタツムリのリンパ液圧力が高まって起きる耳鳴を対象として治療しています。それ以外の耳鳴には、効果がないかも。耳鳴りは、三回治療して効果がなかった場合、回数を治療したからといって治癒は望めません。

 平均して六回ぐらいかかるもの(まあ適応症)
 ●坐骨神経痛 ●五十肩  ●変形性膝関節炎(膝の痛み。正座できないなど) ●脳卒中による言語障害(構音障害など。おもに頭鍼)  ●球麻痺による嚥下障害(項鍼と頭鍼を併用します。項鍼は頚鍼とも呼びます) ●弾発指(六回でバネ指は治り、あとは腱鞘炎治療となります)  ●股関節の痛み


 六回以上から十回以内ぐらいかかるもの(やや適応症)
 ●ムチウチ症(初期なら一回で完治) ●腱鞘炎 ●テニス肘 ●腰痛 ●3か月以内の脳内出血による半身不随(詰まったものは適応症でないと思います。それとクモ膜下出血には効果がありますが、深部が出血したときは、刺鍼しても、あまり効果を期待できません) ●筋肉が萎縮し、石のように固まって動かないもの ●廃用性萎縮  ●自律神経失調症  ●筋線維痛症 ●クローン病

 
ここまでを北京堂の得意とする鍼灸適応症とします。ここから先は、手到病除の効果が無く、鍼の本領発揮とは言えません。


 
番外編
 ●めまい(だいたい一年ぐらいかかります) ●大腿骨頭壊死(中国では40~70代では3年ぐらいで治癒しています)

  適応症ともいえないが適応症
  ●パーキンソン(中国では仮性と真性に分けます。それがパーキンソン病と類パーキンソンです。脳の血管閉塞により発生する類パーキンソンは完治します。真性のパーキンソンは、症状を改善する程度。日本では分けないので不明だが、やってみると結構完治する。してみると類パーキンソンが多いのでは?)  ●閉塞性動脈硬化症(歩けるようになるけれど回数がかかる。だいたい半年から一年で完治。一人だけ静脈を移植した患者さんで、再発したときに治療し、三回で治ったことがあった。何年かのちに再発し、再治療したら一回で治った。これは例外) ●サルコイドーシス(効果があるが、一ヶ月に一度ぐらいの治療が必要) ●これを書くと嫌だが側索硬化症(症状は改善する。しかし完治するとは限らない。治療したくない疾患の一つ) ●アトピー性皮膚炎(症状は改善するが、完治するまで回数がかかる) とりあえずアトピーの治った患者さんのブログ●おねしょ(治療すると止まるが、温灸を止めると再開する) ●生理痛(痛みをとりあえず抑えることはできるが、鎮痛剤で止まれば、それでいいのでは?) ●盲腸(鍼で治るけど、手術した方が早いのでは?) ●軽い、うつ症状(原因不明のうつ症状は、背中や後頚部の凝りを除くと、結構良くなります。重症の精神病では、治療中や終わった後に泣かれたりして、精神的に参るので勘弁) ●統合失調症(精神分裂症と呼ばれているものです。背骨の両側へ刺鍼して通電する方法が多く行われていました。現在は頭鍼の通電、門を使った延髄刺激などがあります) ●ヒステリー(言葉による暗示も必要なので、私はやったことがない) ●筋ジストロフィーや重症筋無力症(酵素の値が半分ぐらいに下がります) ●視神経萎縮(中国でも治療ツアーが多かった。治りはしないが、進行を遅らせることができるらしい。眼窩内刺鍼。治らないことが多く、あまり治療したくない疾患の一つ) ●鍼麻酔(しいていえば癌の痛みを鎮痛する。あまりやりたくない疾患の一つ) ●子宮筋腫(適応症で治せるが、婦人科疾患は個人的に好きではない) ●ウイルス性肝炎

  あと夜泣きや生理痛なども適応症です。しかし夜泣きは、私が親を指導して、親が治療して治ったもので、私が治したものではありません。生理痛は、止まるけれど、何ヶ月かすると再発したりします。

 鍼の効かない痛み(鍼の不適応症)
 ①ガガーン、痛風。これは一見捻挫や腱鞘炎のようなんですけれど、捻挫したような痛みが足首から下に突然発生します。捻挫した覚えもないのに、捻挫だと思って鍼してみるが、一向に治らない。これは痛風です。痛みは捻挫や腱鞘炎と非常に似ています。すぐに内科へ行って薬を貰います。血液検査で尿酸値を調べればわかります。
 ②尿管結石。突然の腹痛や腰の痛み。じっとしていれば痛みが少ないが、動けば激しく痛む。ぎっくり腰と似通った痛み。ぎっくり腰は前屈姿勢になるが、尿管結石は背筋を伸ばしているのが特徴。レントゲンでわかります。大腰筋痙攣では、少しは足の怠さを伴うが、尿管結石は坐骨神経と関係ないので、足には全く異常がない。鍼の効かない腰痛は、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や脊柱管狭窄症、重度すべり症など、レントゲンなどで骨を見れば判断できる疾患が多い。
 ③血糖値が高くなって起きた腰痛。患者さんでありました。ギックリ腰のような痛みだが、刺鍼しても変化なし。血液検査をしたところ、血糖値が異常に高かった。血糖を下げる薬にて治った。
 ④頚の脊柱管狭窄症による腕の痛み。頚椎ヘルニアならば治るが、狭窄症はダメ。生活を改善しなきゃ。
 ⑤噛み合わせが悪くて起きる肩こりや寝違い。これは不適応症ではないが、肩こりや寝違いの治療をしても、原因が違うのだから、効果が三日ともたない。顎関節症の治療をすれば完治する。
 あとは珍しい疾患なので、ここには挙げないが、例えば神経の出口の骨増殖による痛みなどがある。
 
いずれにせよ、適応症で述べた疾患は、六回やらなければ効果がないとか、三回やらなければ効果がないというものではなく、一回の治療でも三割以上の効果があり、完治するまでの目安なので、一回やって効果がなければ、鍼の不適応症ではないかと検査してみることが必要です。治療というのは適応症ならば、一般に一回の治療だけでも効果があります。効果がなければ、その治療が間違っているか、不適応症かですので、手遅れにならないうちに検査したほうがいいです。
 つまり鍼の適応症とは、整形で「気のせいだ」とか「なにもない」とか、「異常がない」、「神経症だ」と言われ、神経内科を訪れるような症状です。整形ではレントゲンによって、神経を骨が圧迫していないか調べます。また内科では血液検査によって、痛風やリウマチなどの異常を調べます。さらにCTやMRIなどの画像により、神経が圧迫されていないか調べます。こうした検査で何も出なければ、それは「気のせい」とされます。ところが肩こりのように、筋肉が神経を圧迫して痛む場合もあるのです。そうした痛みは徐々に進行して痛みが激しくなります。だが痙攣して神経を圧迫していても、画像を見れば正常な筋肉です。触ってみるわけではないので、凝りのような硬さはわかりません。だから鍼の適応症とは、昔から「何も異常が見つからないから、鍼でもしてみたら?」と言われるような症状にこそ有効で、昔からそうした症状に鍼が使われてきたのは、筋肉の引きつりが神経を圧迫して起こった痛みに他なりません。
 だから鍼が有効な疾患とは、筋肉の拘縮や血流の悪さが原因となって起きた症状で、CTやMRIで原因の分からない「神経症」の病気なのです。


  ちなみに、これを書くに当たって、よその鍼灸院が、どんな適応症を挙げているか、ちょっと開いてみると、白内障が適応症となっていたのです。たしかに白内障は適応症ですが、この適応症の治療は、日本では禁止されています。本当に治療しているのかな? ◎それは撥鍼療法と呼びます。中国でも一般の鍼灸師は治療できず、最初は羊の目玉を使って練習するそうです。ビデオで見たことがありますが、眼球の茶色い部分を少し切って、そこから虫取り網のような鍼か、あるいはアイスクリームを載せるようなスプーン鍼を差し込み、角膜の下にある、白く濁った白内障の塊をクルンと包んで引っぱり出すのです。まあ眼内レンズを使わない白内障手術といったところでしよう。また眼球は、目を閉じないよう、現在では麻酔するのが普通です。一発で見えるようになります。中国の詩人である李白も、白内障になったときに、この撥鍼療法を受けて、再び見えるようになったということです。一発で治る特殊鍼療法ですが、一般の毫鍼では効果がありません。◎また胃下垂の鍼も、胃に絡みつけて引っ張り上げるという治療なので、一般の毫鍼ではありません。四寸以上の長鍼と呼ばれる鍼です。ですから鍼の適応症と言っても、WHOの適応症とは、撥鍼や小針刀などの特殊療法を含んでいるもので、日本の毫鍼を使った適応症とは限らないことを知っておいてください。◎また脳性麻痺や癲癇も治りますが、七歳以下の小児であることが条件で、しかも頭皮へ薬物注入する方法なので、一般の鍼灸院では治療できません。これは水鍼と呼ばれる鍼です。しかし通えば、一般の頭鍼でも効果があるでしょう。◎それから顔のアザやシミなども適応症です。これには三頭火鍼や平頭火鍼を使います。一般には、顔は火鍼の不適応症とされていますが、北京中医の教師だった于書荘などは、顔のアザに火鍼を使って効果を上げているようです。試してみたいけど火鍼で火事になると嫌なので、電気火鍼を買ってきてから実験します。もしかして日本でやっている人がいるかも。
 このなかで刺鍼治療として、日本で可能なものといえば、長鍼療法と火鍼療法だけで、撥鍼と水鍼は禁止と思います。私が学生時代は、撥鍼で白内障を治療する人があったようですが、現在ではできなくなったと書いている本を読んだことがあります。だからやっている人があるかも知れません。
 
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