北京堂式経筋治療


◎ 定義
(1)筋肉の収縮により知覚神経が圧迫されて痛みが発生するとする病理観
(2)筋肉が血管を圧迫し、酸素不足やATPふそくのために筋肉の収縮がひどくなり、神経が絞扼されて痛むとして把握
(3)中心的診断は、望診(歩き方や姿勢による視診)
(4)拘縮した筋肉へ置鍼するという手技で、血管を圧迫している筋肉を弛め、血液循環を快復させる

 治療の流れ

(1)診断
★問診 ・主訴やその他の症状、既往歴、食欲、睡眠、便通等を質問します。
★患者さんを観察 ・顔や肌の色、話し方、におい、姿勢、動作など、五官を使って観察します。
★テスト ・整形外科テスト法などを使って動きに抵抗を加え、損傷した部分を特定します。
★切経 ・症状に基づいて、原因を起こしていると思われる部分を触診していきます。
(2)拘縮した筋肉の決定
  以上の内容を総合的に判断して「絞扼している筋肉」を決めます。
(3)治療
  筋肉(経筋)に置鍼して、筋肉の拘縮を解します。


 具体例(ギックリの場合)

  普段しない御辞儀を繰り返したことによって、なまった大腰筋が頻繁に伸びたり縮んだりした。
  翌朝、腰が痛くて起きあがれない。咳やクシャミをすると腰が痛み、足まで重怠くなる。何かで支えないと立てない。腰が伸びない
  腰が伸ばせないので、大腰筋痙攣と判る。クシャミや咳など、横隔膜が激しく動くことによって痛むので、横隔膜付近の痙攣と判断する
  仰向けにして足を曲げ、脇腹から手を入れて大腰筋を押さえると痛みがある。こうして触診によっても確認できる。大腰筋痙攣
  腎兪、気海兪、大腸兪、関元兪、およびその外方から刺鍼し、大腰筋へ刺入したら置鍼して、筋肉が緩むまで待つ
症状の消失、軽減

 語句の説明
 【経絡】
  気血の運行する通路。陰経においては動脈部分であり、血、血管を意味する。陽経においては神経幹部分であり、気、神経パルスを意味する。

  @臓腑や皮肉筋骨などに気血を巡らせ、栄養するもの。こうした血液による栄養補給により、筋肉が栄養され、肌がスベスベすると考える。
  A気血の途絶える部分などが生じ、疾病の生じるところでもある。
  B経絡(血管や神経)は、内臓と体表を連絡しているので、体内の状態が皮膚などに現れるため診断でき、体内に影響を与えて治療する部分でもある。 
 【切経】
   『難経六十一難』に「望而知之謂之神、聞而知之謂之聖、問而知之謂之工、切脈而知之謂之巧」とあります。外見を観察して患者の状態が把握できる人を神、声を聞いたり匂いで患者の状態が判る人を聖、質問して患者の状態が判る人を工、これは工事人夫ではなくて医者のことです。経脈を切って患者の状態が把握できる人を巧みと呼ぶとあります。「経脈を切る?」切るとは指で圧することです。
 つまり『難経』では、まず視覚で判断、次に聴覚と嗅覚で判断、それから質問して頭で判断、最後に触覚で判断せよと書いています。神は最高、聖は次と、だんだんに落ちて行きます。そして最後に脈に触れて状態が判断できれば、まあ上手な部類かなとなっています。切脈とは切経の一つで、もともとは三部九候の脈を触っていたものが、橈骨動脈の拍動で判断することに限定されたものです。
 そりゃあ足背動脈も触りたいけど、皇后の足など無闇に触れば、治療のためとはいえ王様の嫉妬を買います。それで手だけならとなっていったわけです。一般庶民を診察するだけならば体を触りまくっても問題ありませんが、王侯貴族を治療するともなれば仕方のないことですね。
 【証】
  証候は、最終的に判断した結論です。この患者は、体がどういう状態にあるかという最終結論が証候です。だから証が出れば治療方針が決まります。
  具体例でいえば、大腰筋痙攣が証になるわけです。そこで「大腰筋へ刺鍼して痙攣を解く」という治療方針が出ますが、もし証が間違っていれば、治療も間違うことになりますから、治療しても全く効果がなければ、「この患者は、どこが悪い」と判断した証が間違っていることになります。間違った治療をしても効果がありませんから、また考え直さねばなりません。


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