家庭でできる顔のイボ取り

 イボには灸と言われ、昔からイボを取るのに灸が使われてきました。
 『鍼灸大成』にもイボを灸で取り除く方法が書かれています。
 私も何回かイボを灸で取り除きました。しかし、どうやら方法が間違っていたようなのです。本に書かれてあったように治療したのですが、本には治療方法しか書かれていなかったので、本当のイボ取り治療が判らなかったのです。
 今回は、自分の経験から本当の意味で、誰でも簡単にできる「イボ取り」の灸が判ったので、本に書いてない部分を公開します。
 今までは間違ったイボ取り治療で、患者さんの背中などのイボを取っていました。まず本に書かれているとおり、イボの根元を絹糸でグルグル巻きに縛り、イボを乳首のように立ち上がらせて、その頭に施灸していました。そしてイボが消えるまで、何度も施灸を繰り返していたのです。
 今回の患者さんはムチウチ症、バイクに乗っていて車と衝突し、何メートルも飛ばされて失神したらしいのです。腕が動かなくて服も着られない。
 まあ、それはよいのですが、その患者さんに色々と鍼を見せて自慢していました。円や三角になっている皮内針の握りのような針を見せて、「これはイボ取り用の火針」などと自慢していました。すると自分の顔にあるイボを取ってくれという。
 オロオロうろたえて「イヤ。これは使ったことないので。灸でならば取りますが」というと、なら灸で取ってくれという。口元から1cmぐらいの所に直径5mmぐらい、高さ5mmぐらいの黒いイボがあるのです。本人は、その黒いイボが徐々に大きくなっているという。
 さすがに顔ですから、さすがの私も尻込みしますが、そんなことでは許してもらえそうにありません。そこで恐る恐る施灸を。
 絹糸がないというと本人が持ってきました。そこで覚悟を決めてピンセットでイボを掴み、引っ張り挙げたあと絹糸で二重に巻いて結びます。それでイボが少し高くなりました。そして厚紙、ここでは灸点紙を使いましたが、それにイボの大きさほどの穴を開けてイボに被せます。つまり紙の中からイボが頭を出している感じ。これはイボ以外の皮膚が熱くならないためです。
 こうしてイボの頭に5つぐらい、やいとをすえました。顔だから熱いだろうと本人に聞いたら、全く熱くないとのこと。これで終わり。
 なにせ5mぐらい飛ばされたムチウチですから、最初の電話では3回ぐらいで治るでしょうといっていましたが、結果的には十回ぐらいかかりました。
 ムチウチはさておいて、イボのほうは? 少し色が薄くなって、高さも減った気がします。患者さんはイボの灸も要求しますが、こちらも顔に傷付けたとなると恐しいので「色も薄くなったし、傷付けても何だから。それに前より目立たなくなったし。だいたいムチウチ症の治療で、イボ取りではないでしょ!」と、ごまかして、できるだけ顔のイボのことには触れないように気をつけました。
 次の週に、ムチウチの治療できたのですが、すでに糸は外れていました。聞くと、施灸した翌日には外れたとのこと。背中のイボなら結びなおすのですが、触らぬ神に祟りなし、聞かないように、聞かないようにしていました。背中のイボは、刺鍼に邪魔なときに、よく絹糸と灸で取っていました。イボが炭化するまでシツコクお灸し、何度も絹糸を結びなおします。炭化させてイボを取ったのか、結んで血液循環を止めて取ったのか判らないぐらいの方法でしたので、小さな白い輪切りにした生米粒のような痕が残ります。
 でも顔ですから、白い痕でも残ると困るので、一回だけ施灸して、効果があるのかないのか判らないぐらいにして現状維持を目指しました。
 それから約二ケ月。患者さんが「イボが取れちゃった」と言います。見ると顔のイボは跡方もない。きれいな皮膚。イボが取れたなら傷痕ぐらいは残るハズだがと思って捜したが何もない。
 本人は「今朝、顔を洗ってタオルで顔を拭いたら、ポロッと取れちゃった!」というのです。
 ここでアーッと溜め息が出ました。今までは本に書いてあるとおり治療して、そのときにイボが取れるものだと勘違いし、イボが完全に消えるまで施灸していた。だから少しだけど痕が残った。そうか、施灸するのは一回だけで良いのだ。そんなにひつこく施灸しなくとも、一度だけ施灸して、後は糸が取れても放ったらかしにしていれば、二ケ月後には自然に跡方もなく取れるのだ。
 今まで、我々の先生が「イボを灸で取る方法」を実践して、講演していた。私は偶然にも、それとよく似た方法を昔からやっていたのだが、今回は顔に傷がつくことを恐れ、一回だけの形だけの治療しかしなかった。結果は、そのときは取れなかったが、二ケ月後には完全にきれいになった。
 イボの灸は、外科のように完全に炭化するまで施灸しなくてはならないと思い込んでいたのだが、実は一度の軽い灸をするだけで、二ケ月後には完全に取れてしまうことが判った。
 今までの患者さんは老人で、背中の刺鍼部位にイボがあるから取り除くことが多かったが、完全に消えるまで施灸しなければならないと思っていた。
 今回の患者さんは顔にあり、もし傷が残ったら責任を取って結婚しなければならないかもと思い、軽い灸を一度だけして、治らなくてもいいと思っていました。それが、こんな結果になるとは……。

 というわけで、この経験によって「正しいイボ取り灸」の方法が判ったので、顔に大きなイボがあって悩んでいる女子中学生や高校生のために公開することにしました。
 根元を結ぶ絹糸は、単にイボを高くするだけのためなので、糸が後で取れても構いません。そしてイボの頭にメンソレとかリップクリームを塗り、モグサを乗っけて、線香で火をつけるのです。ほとんど熱さを感じないそうです。
 灸をしたあとも、イボの外観は全く変わりません。私の患者さんは、黒いイボだったので、少し色が灰色っぽくなったかなと思う程度でした。これで二ケ月ほど待つだけ。
 何の変化もないようだけど、その間にイボの下では新しい皮膚が再生され、二ケ月後にポロリと取れて、きれいな顔。

 まま、何が今までと変わったかというと、今までの方法ではイボが消えるまでシツコク施灸を繰り返していましたが、きれいに取る方法は一回だけの施灸。イボも傷付かず、安心して去ってゆきます。
 喘息の灸とか、夜泣きの鍼とか、今までの家庭でできるシリーズは、ちょっと難しかったかもしれません。とくに喘息の灸は、普通の灸点とは違ったり、モグサが違うので、効果がマチマチだったかもしれません。
 このイボ取り灸は、北京堂が絶対の自信を持って推薦します。
 だからイボが取れた暁には、鍼灸を迷信だと思わず、ちょっとは信じてくださいね。

 最近、イボ取りについて直接質問されました。

 @少しだけ焼くことのイボ取り原理は?
 Aイボを結んだ糸は、そのままにしておくのか? それとも取り去るのか?
 B何壮ぐらいすえるのか?
 以上の事柄について、書かれた本が全くないので、具体的な方法が判らない。

 ごもっとも。まずBですが、ここでは直接灸を五壮ぐらいすえると書いています。
 Aですが、イボを結んだ糸は、そのままにしておきます。というのは糸を取り去ると、ハサミでイボを傷つけてしまうかも知れないからです。イボは小さくなるので、自然に糸が取れます。だから目立たない色(例えば肌色とか)の絹糸を使います。
 @少しだけイボを焼きますと、イボの尖端に自分とは違う異種蛋白が出来ます。これを生体は異物と認識して排除しようとしますが、そのときに免疫が目覚め、尖端の異種蛋白だけではなく、イボ全体を異物と認識し、身体から切り離そうとします。それで尖端を少し焼いて異種蛋白を作るだけで、イボ全体が落ちてしまいます。書物によると、一番大きなイボに施灸すると、他のイボまで落ちてしまうと書いてあります。
 質問への回答は、以上です。

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