冷え症の灸
 
 女性では、冷症に悩まされることが多いようです。特に閉経期を迎えた更年期障害の女性に多いです。その治療には、頚へ刺鍼して自律神経を調えれば、チョン、チョン、チョーンで治りますが、山奥に住む人は鍼灸院などありません。どうしたらよいでしょうか?

 それには、お尻に温灸をします。冷症でも、特に足が冷える人。足の血の巡りが悪いのです。そこで仙骨へ灸をします。
 なぜ仙骨に灸をすえると効果があるかですが、血液は心臓から腹大動脈を通って骨盤内へ行き、そこから腿の前(鼠径部の動脈拍動部)を通って、大腿前面を通り、途中から裏側へ回って膝窩へ行き、フクラハギの中を通って足先に行きます。ですから途中で血行が邪魔されると、そこで血が滞ります。血は体温を運んでいますから、血が滞れば足に熱が伝わらなくなって冷えます。
 そこで仙骨へ施灸します。仙骨とは、骨盤後ろの中央で、背骨の下、尾骨の上です。そこで足へ行く動脈は、腹大動脈から二つに別れ、通って行くのです。
 何故そこを温めるか?
 尻の両側、そして背骨の両側は肉が盛り上がっており、温めても熱が深部まで浸透しないからです。
 こうした骨盤内は、すぐに血が滞るため、足が冷えたり、子宮筋腫となったり、不妊症の原因になったりします。だから中国医学では、子宮が冷たいと子供が着床しないといいます。冷えには熱で治療する。それを逆治と呼び、鍼灸など中国医学では多く使われる治療法則です。
 つまり仙骨は、婦人病である冷え症、子宮筋腫、不妊症、いぼ痔を治療するための施灸部分なのです。
 では、どうやって温めたらよいのか?
 まずコンニャクを買ってきます。どちらかというとジャスコのコンニャクがよろしいのですが(特に理由はない)、ダイエーのでも西友のでも結構です。糸こんにゃくは使えません。できるだけ大きなコンニャクがよいのです。といっても玉コンニャクは使えません。キチンとした四角くてブ厚いコンニャクを使います。色は、白と黒がありますが、黒のほうがよいでしょう。あとで料理をするときに、家族が「黒いコンニャクのほうが良かったのに」と文句を言うに決まってますから。
 これを鍋に入れて水を加え、沸騰させます。そして沸騰したら火加減を弱めて、沸騰温度を保ちます。十分ほど沸騰させたら、箸を挿して取り出します。
 これをフォークで突き刺して穴を開けると思うでしょうが、違います。タオルに包んで布団にうつ伏せ、さっきの仙骨へ乗せます。熱くて火傷しそうだったら、さらに一枚のタオルで包みます。こうして尻の中央にタオルで包んだコンニャクを載せたまま、うつ伏せになっています。お尻がホカホカして気持ちいいぐらいが調度いいのです。熱くて火傷しそうなのを我慢するのは、よくありません。なぜか中には「温度を高くしたほうが、よく効くと思って」とか言いつつ、「火傷をして座れなくなった」と苦情を述べる人があります。
 薬でも、一錠で効く薬を百錠も飲めば、中毒して身体を壊してしまいます。仙骨の灸は、ホカホカして気持ちよいぐらいが適切なのです。
 こうして20分もすれば、すっかり尻が温まります。そこでズボンを穿いて、冷やさないようにすれば大丈夫。
 この治療によって、鍼灸院が近くにない貴女でも、足の血液循環が改善され、冷症がなくなるに違いありません。

 さて、使い終わったコンニャクですが、どうしたらよいでしょう?
 答えは「今夜食う」!オデンにするもよし、肉じゃがを作るもよし。水分をタオルに吸収されているため、穴を開ければ味が染み込みやすくなっています。
 誰に食べさせるべきか?
 「婚約者」な〜んちゃって。

 こうして一週間ごとに、オデンと肉じゃがを食べ続ければ、あなたの冷え症は、改善されるに違いありません。ここで注意すべきことは、熱湯に入れて温めたコンニャクは、必ずタオルに包んで使うこと。これを包まないで使うと大変なことになります。それというのは、いぼ痔が出てきてコンニャクに接触し、コンニャクがイボ痔で汚染されてしまうからです。そうなってしまっては食べられません。だからタオルで包むのです。

 こうして尻はホカホカになりましたが、足の血管が流れなくては、お尻から先に血液が流れません。そこで中継ぎとして、三陰交というツボにも灸をします。
 そのコンニャクを使ってもいいのですが、千年灸を使っても良いかと思います。内くるぶしの上三寸、だいたい5pぐらいで骨のキワ、押すと痛む部分です。そこは不思議なことに、男は痛みがないのです。

 なかにはコンニャクのようなシロウト臭いことは嫌だ。本格的な温灸をしたいと思う方もあるでしょう。そうした人は、まず近所の鍼灸院にて「棒灸用フード柄付」と棒灸を購入します。棒灸を使っている人のホームページを捜しましたので参考例←クリック。
 温灸器は、この写真のものが一番使いやすいです。他の機種は、ゴムが付いていないため、温灸器自体が熱くなり、接触部分が火傷しそうになりますが、この機種は接触面にゴムがあり、遮断されて火傷しません。
 ただしホームページの棒灸の使い方は、専門家の立場から言えば間違っています。棒灸に、棒灸純艾條と書かれた緑色の紙を剥がさなければなりません。
 緑色の紙は、湿気を防ぐために巻かれたもので、使うときには外して、白い紙に巻かれた棒灸にしなければなりません。そうしないと一つは、うまく棒灸が燃えてくれないのです。もう一つの理由は、緑色の紙から中身がスッポ抜けることがあります。一遍ほどスッポ抜けて、患者さんの皮膚に直接くっついたことがあります。ホームページの人は、犬のように毛深いようなので、毛が邪魔して火傷しないでしょうが、一般の人は火傷してしまいます。
 あと注意点は、ゴムの摩擦力で棒灸が止まっていますから、火の着いた方からゴムに突っ込むと、ゴムが焼けて使えなくなります。それから火を消すときは、一度棒灸を押し出し、筒になった棒灸消しに差し込むことです。押し出さなければ、棒灸が宙に浮いてしまい、火消しツボの底に達しないため燃え続けます。


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