ネンザの鍼治療(円皮鍼の使い方)


 この間、寝ていたら同居人に足を踏まれ、大変なことになりました。
 そのときは10分ぐらい痛くて、そのあと治まったのですが、一見何ともなく終わったのです。
 しかし、翌日ちょっと外出すると、何となく足の裏に痛みを感じました。軽い痛みだったので「なんか痛むな」ぐらいで終わったのです。ところが、その次の日には痛みが増し、少しビッコをひくような感じになってしまいました。それでも外を歩いていたのですが、その次の日には、なかなか階段を下りることもままならなくなり、手すりに捕まって、やっと下りる状態になったのです。ズボンを穿いたり、立ち上がることも大変になってしまいました。
 「ちょっと足の裏が痛くて歩けないから、治してよ」といった。「それではキッカケがありますか?」と聞く。
 「いやわからん。でも足の裏だけだから、たんなるネンザだと思うので、そこだけやって」という。
 私は「なんでもいいから、早く治して」と言い捨てると、ベッドに乗る。
 先生は「だいたい足の裏で、親指側が痛くなった例は見たことありますが、小指側が痛むなんて聞いたことがないです。腱鞘炎の可能性があるから腓骨の周囲へ刺鍼しましょう」という。
 あれから何本、鍼を刺されたろうか? 本を読みながら失神していると、「それじゃあ終わりましたから、鍼を抜きます」という。お金を払って、歩いてみるが
 「あの~。やっぱり痛いんだけど」
 と、先生は「そりゃあ腱鞘炎ですから、すぐには治らないですよ。それにネンザといっても思い当たることがないんでしょ? 悪くなるので、もう痛いところを触ったり、自分で鍼をしたりしないでくださいね」という。でも痛みが取れなかったので、自分でも一本だけ鍼を打った。
 足を踏まれたことなど、夜のことだから忘れてしまい、「そやねぇ。思い当たることなどないし、徐々に痛くなってきたから、やっぱり腱鞘炎かなぁ~。この前、たにぐち書店へ行こうとして、道に迷って歩いたから、結局たどり着けんかったから、けっこう歩いたわなぁ~」と返事する。
 先生は「そうでしょう。ネンザじゃなかったら腱鞘炎でしょう。前の検査で痛風でもなかったんだし。腱鞘炎だから治るまでに時間がかかるんですよ」と、巧いこと言いよる。 「でも、この前の腱鞘炎では、鍼抜いたあと、少なくとも痛みが半分にはなったのだが、今はやっぱり歩けないよ」と苦情を言う。
 「まあ、ネンザだったら、冷やしてみてください。腱鞘炎だと思うけど、もしネンザだったら、足の裏へ鍼打ちますから」と先生。
 「足の裏かぁ~。いやだなぁ。やっぱり様子を見てみよう。もしかして足の血管が詰まっていたりして。足だけでなく、手首も痛くなってきた」
 ということで、この日は帰って寝た。治療所の上に住んでいるので、5メートルほど歩けばよい。だが、途中の階段がキツイ。先生は、遠く離れた自宅へ帰る。

 寝てると、やはり痛む。さっそく氷で冷やしてみたが、もともと触っても熱くないので効果がない。それでも寝れた。翌日は私の当番だが、先生に代わって貰った。
 翌日になったが、かえって昨日より痛みが増している。下へ行って、さっそく文句を言った。
 「昨日より悪化してるでぇ~」
 先生は「ああ良かった。鍼して痛みが悪化するなんて、これが本当の患者さんだったら苦情来てますわなぁ」という。
 「いや、鍼して悪化しているというのではなく、効果が無くて自然に悪化している感じや。もう覚悟決めるわ。足の裏へ、剣山の如く鍼を打ってくれ」
 「判りました。テストしたところ骨折もしてないし、腱鞘炎か捻挫だと思います」という。
 「いや、よく考えてみたら、夜中に足踏まれた。だからネンザや。80kgもの巨漢が小指に乗ってきたんだもの。ネンザもするわなぁ~。だから足の裏のネンザっちゅうのも初めてだけど、局所に剣山の如く刺してくれ」と、あくまで男らしい私。
 「じゃあ、いきまっせ!」
 ということになった。
 「ちょっと! 普通に寝てください」
 「でも恐いから、抱きついてないと!」
 と、手と足でベッドにしがみつき、衝撃に耐える。「キャー」
 「ちょっと、ちょっと、もういい。もういい」
 「でも剣山までいきません。まだまだ」 「キャー」
 「やっぱ、足の裏は痛いわ。もう耐えられない。もう限界やわ」

 「じゃあ二本で止めときましょうか?」
 「そうしよ。そうしよ。二本でエエわ。日本人やから」
 こうして無事に鍼が終わった。
 「やっぱり痛いなぁ」
 二階へ上がると、「今日はクリスマスでもあるし、筋肉へ鍼したワケじゃないから酒飲んでエエわな」と、高級ワインのカルロッシュ850円1.5を飲む。
 しかし、やっぱり酒はあきまへん。ズキズキと痛み出してきました。
 どこが痛むか触ってみると、最初に印を付けた足の中央は痛みがなく、少し外側が痛む。やっぱり鍼で痛む部分が消えたため、移動したに違いないと思う。
 そこで加害者Aに鍼を持ってこさせ、自分で足の裏へ打ってみる。「キャー」
 どうやら足の裏は、皮が厚くて切皮しても届かず、そのあと押し込むときに肉へ達してしまうため、痛みが強いようだ。痛いのをガマンして鍼してみたが、やはり全く変化はない。
 加害者Aは「タクシー代を出してやるから整形へ行け」という。「整形へ行っても、骨は折れてないようだから、レントゲン撮られて、痛み止めと湿布薬で終わり。下手すりゃギブスで固定されて動けない。行くわけないだろ」と、治療費でなくタクシー代を申し出る加害者Aの提案を断る。
 月曜日は、見学者が来るので外せない。だから抜鍼や電話の受け答えは、全部見学者にやって貰った。こちらは彼らが打ち込んできた古文を直したり、質問に答えたりしている。だが歩けないので、食事は勝手に行って貰った。
 何とか無事に終わり、先生に任せて二階に上がる。で、二階へ上がって足の裏を押さえてみると、金門と京門が痛み、そこを押さえると足底の痛みが軽くなるようだ。それで加害者Aに、アルコール綿花と円皮鍼を持ってこさせ、足底境目の小指の横へ円皮鍼を貼ったところ、あら不思議、たちまちのうちに足底の痛みが楽になったではありませんか。 ちょうど足底の肉と、小指の骨の境目に皮内鍼を貼ったのです。
 これは良いことだ。あとの人にも、このことを金版に刻んで、みんなに知らしめよう。黄帝のように、そう思ったのだが、あいにく金版がなかったので、ホームページビルダーへ打ち込むことにした。
 けっきょく足底のネンザは、2~3㎜の皮内鍼を貼ることによって、トイレへ行くのが不自由でないぐらいには快復した。そして翌日、それを先生に伝え、足横の痛む場所へ、寸六の鍼を1㎝ぐらい入れると、ビッコをひかなくても歩けるようになった。しかし抜いた途端にビッコになる。
 「皮内鍼は、あんまり沢山すると効かないと言います」と先生が言うものの、
 「これは実験だから」と答えて、三本の円皮鍼、そして一本の鍼を入れ、毫鍼の鍼柄をバンソコウで貼り付けてもらう。だが、絆創膏を鍼と垂直に貼ろうとするので、「あかん!前バリのように貼らんとアカン」
 「判りやすい喩えですなぁ」と言って、決着が付いた。
 その結果は、今日はビッコひかずに歩いている。階段も普通に上り下りできる。
 この浅刺、2~3㎜しか入れない円皮鍼の威力。絶大だった。この前は、足に鍼を5㎝ぐらい入れよったが、ぜんぜん効きよらん。
 この円皮鍼は、膝の痛いところへ貼っても効果があるし、手首とか、背骨の両側に貼っても効果がある。しかし足の裏が痛くて歩けないのに、足の横へ円皮鍼を貼って痛みが消えたのには驚いた。
 一般に、骨にある痛みには深く刺し、皮膚にある痛みは浅く刺すと言うが、どうみても足の骨が痛むのに、浅く刺して効果があったのにはビックリした。
 これは痛むところに貼って効果があるので、素人にでも消毒さえすれば、簡単に出来る鍼治療です。ただ危険な場所があり、眼球と鼓膜には貼ってはなりません。
 その円皮鍼は、三景で買えます。
   
北京堂鍼灸ホーム